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経済安全保障と未来! 米中欧とデリスキリングの末路と民主主義の未来とは?


経済安全保障とは?

2024年6月14日、東京大学駒場キャンパスのエネオス2号館にて、
経済安全保障に関するイベントが開催されました。

このイベントでは、各国の経済安全保障戦略とその影響について議論されました。以下に主要なポイントとその解説をまとめます。

経済安全保障の意味

経済安全保障とは、経済への措置を行い、
国の平和や安全、経済を守っていくことです。

例えばコロナ禍におけるマスクの不足でも
政府が重要物資を指定して、マスクの供給を確保できれば
コロナの時でも安心安全にマスクを買うことができたのです。

以下、参考となる毎日新聞の記事を一部抜粋いたします。

当時、同社は上海工場をフル稼働させたが、国家を挙げてマスク確保に動いた中国政府との優先契約があり、日本に出荷できる数には限りがあった。機械を中国から取り寄せるなど設備投資は約5000万円。新たに従業員も雇った。利益はほとんど出ない上、現在、国内のマスク不足は解消している。

出典;毎日新聞 2021/10/27 マスク不足で中国見据え「経済安保」急浮上 抑止力との間で苦慮

この反省などを踏まえ、岸田政権では
経済安全保障担当大臣が新設され、
今日ではセキュリティクリアランス法案も成立されています。

外部の反応

多くの国々が外部からの反応に敏感になっており、
政府主導型の経済安全保障は形を変えつつあります。

特に、最近は民間部門の経済的役割が増大し、
サプライチェーンの複雑さが政治的役割を果たす場面が増えてきました。

アダムスミスの自由貿易論と相反する経済安全保障ですが、
自由貿易が進んだことで同時に他国に依存するリスクも生じたのです。

・自由貿易論で経済成長
・比較生産論の世界に
・しかしサプライチェーンの依存が課題

民間セクターの役割

経済安全保障は政府だけの問題ではなく、
民間セクターも重要な役割を果たします。

国に属する企業はイノベーションや技術発明、財政的な強さを持つことが
求められ、国際的な関心を高めることが重要です。

また課題なのは企業は経済安全保障や国益のために動きません。

株主のための利益追求が企業であって、
売り上げを出すことが求められます。

売り上げを出さなければただの奉仕です。

しかし経済安全保障は売り上げにはなりません。

そのため自主的に動くことは低いのです。

だからこそ政府の介入が必須であるのです。

アメリカの経済安全保障

アメリカはAIやバイオ、半導体などの分野で競争力を高める一方で、
中国、北朝鮮、ロシアなどの脅威に対抗しています。

特に、中国の軍民融合政策はアメリカにとってかつてのソ連より
大きな懸念事項であり、技術進化の遅延を目指しています。

例えば以下の日本経済新聞の報道から一部抜粋させていただきます。

【ワシントン=飛田臨太郎】米政府が中国への半導体輸出規制をめぐって、日本やオランダに対象を広げて監視を強めるよう求めたことが7日、わかった。先端製品に限っていた半導体製造装置の販売制限を一部の中上位機にまで広げるほか、化学材料も含めるようだ。日本政府は現時点で新たな制限は予定していないとするが、日本の関連メーカーの海外戦略に影響を及ぼす可能性がある。

出典:日本経済新聞 2024年3月8日 米国の対中半導体規制、日蘭に強化要請 製造装置や材料

このように重要物資を渡さないことで中国の技術的進歩を少しずつ
遅らせることが望ましいアメリカの戦略であると言えるのです。

なおトランプでもバイデンでも
対中戦略は一切変わりません。

さらにアメリカは近年、保守主義に傾いています。

いわゆるアメリカファーストです。

アメリカファーストになることで、
アメリカ国内にマイクロチップの工場+世界の生産量を20%を保有したい
といった国益につながるものを狙っていくでしょう。

中国の経済安全保障

中国はグランド戦略を形成し、
経済の手段を通じて国際的な利益を追求しています。

かつての鄧小平氏が推進してきた改革開放や社会主義市場経済によって、
中国には大量の資本が注入されていき、大幅な経済成長を遂げました。

しかし習近平政権が誕生して以降、これまでの民間活動よりも
政府主導の政策がより強まりました。

いわゆる国益をかけたプロジェクトが大きくなったのです。

一帯一路アジア投資銀行などのプロジェクトを通じて
中国の影響力を拡大してきましたが、
国内の経済成長には向かい風が吹いています。

特に新型コロナ対策のゼロコロナ政策
不動産バブルの崩壊若者の失業率の増加も背景に多くあります。

以下、全人代での首相の発言です。

李氏は全人代の冒頭、中国の経済が「困難」に直面していると認め、その多くは「まだ解決されていない」とした。

そして、「不動産、地方政府の債務、中小金融機関のリスクと潜在的な危険性は、いくつかの分野で深刻だった」、「こうした状況で、政策決定や業務においてかなりのジレンマに直面した」と述べた。

李氏はまた、新型コロナウイルスのパンデミックからの回復が遅れていることへの対応策も発表。危機に見舞われている不動産分野で新たな取り組みを進め、都市部で1200万人の雇用を創出するとした。

出典:BBC 2024年3月5日 中国、今年の経済成長目標を「5%前後」に設定 全人代が開幕

また一帯一路でもイタリアの首相が正式に離脱をされたことは
少なくとも影響もあるでしょう。

そのためこれまでは輸出やインフラ支援を行ってきた中国ですが、
今後は自国の需給シフトで経済を維持していくかもしれませんね。

ヨーロッパの経済安全保障

ヨーロッパは第二次世界大戦後、経済安全保障の概念を進化させ、
現在ではサプライチェーンの脆弱性や
サイバーセキュリティの脅威に対応しています。

しかし、欧州委員会の権限が限定されているため、
ポリシー作りには限界があります。

EUはあくまで小国の連合であり、
行政権の多くはEUでなく小国に委ねられています。

そしてEUは加盟国の一致が原則のため、
なかなか重い腰をあげることになりそうです。

以下、ブルームバーグのニュースを見るとわかりやすいと思います。

欧州連合(EU)加盟国首脳はウクライナに500億ユーロ(約8兆円)の金融支援パッケージを実施することで合意に達した。ハンガリーのオルバン首相はこれまでの反対を取り下げた。当初の計画から2カ月程度遅れたものの、戦争で荒廃したウクライナに重要な支援が提供されることになる。

出典:ブルームバーグ 2024年2月1日 EU、ウクライナに8兆円支援実施で合意-ハンガリーが反対撤回

このようにEUが仮に政策や指針を進めようとしても、
親米か親中かで立場が変わることで、
EU全体が対中国でも一枚岩になれるかが課題でしょう。

経済安保での悩みはこのようなものです。

オーストラリアの経済安全保障

オーストラリアはアダムスミスの自由貿易を重視しつつ、
中国の市場介入に反発しています。

しかしこれまでは欧米のような経済安保の整備はされていませんでした。

そのためかつては、オーストラリア政府は企業に
物申すことはできなかったのです。

オーストラリアの畜産農家については、
これまで牛1頭を6ブロックに切り分けて梱包して、
6カ国に配送していたのを、中国ならば牛1頭まるまる買ってくれる
太客のような存在でした。

それほど有難い存在です。

結局はオーストラリアでも保守党や労働党で関係は変わりませんでしたが、
しかしオーストラリアでは保守党よりも対中は和らいでいる部分も見えます。

オーストラリアのファレル貿易・観光相は13日、地元メディアの取材に対し、「中国政府はオーストラリアのワインにかけていた関税についてすべて撤廃するとしている。2週間以内に最終的な決定が出る」と述べ、オーストラリア産のワインに課していた関税を今月中にも撤廃すると中国側から連絡があったことを明らかにしました。

出典:NHK 2024年3月14日 オーストラリア産ワイン関税撤廃と中国から連絡 関係改善進む

現在は経済安保政策も補助金や通知等のシステムを整備し、
政府と民間企業が連携することで、国内生産や社会保障を強化しています。

ブラジルの経済安保

ブラジルは自由貿易を主流とし、中国との貿易関係が強固です。

そのため経済安保の概念はありませんでした。

・農業やEVの製造工場をブラジル国内に建設。
・ブラジルは広大な土地とエネルギーがある。
・国内エネルギーの25%が中国の国有企業の2会社が占める。

南米は中国と地理的に距離があることから、
南米は中国の経済的威圧は経験していない。

そしてまた中国はブラジルに対し大豆の輸入を
依存していることも特徴的です。

現在大統領も代わり、ルラ大統領となりブラジルと中国の距離は近づいています。

一方で日本とブラジルの距離も近づいていており、
日本とブラジルが友好的な関係をより
進められるかが課題でしょう。

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