私が好きなヒロイン10選

 こんにちは、雪乃です。だいぶ前になりますが、ヒロインについて語る記事を書きたい、みたいなことを言ってた気がするので、今日はそのテーマについて。主に漫画ですが、小説も入るかと思います。要は私の性癖暴露大会なのですが、お付き合いいただければ幸いです。
 あ、特に順位とかはないです。マジで全員大好きなので。
 基本的に私は漫画に関しては単行本派なので、既刊分のネタバレは普通にします。ご注意ください。

①アン・ネヴィル(薔薇王の葬列)

 まずは「薔薇王の葬列」から。薔薇王の葬列はシェイクスピアの史劇「ヘンリー6世」及び「リチャード3世」を元にしたダークファンタジーです。リチャード3世を両性具有の人物として描いているのが大きな特徴。アンはそのリチャードの妻として、単行本13巻でイングランドの王妃になります。
 アンは幼少期に出会ったリチャードの淡い恋心を抱きますが、父・ウォリック伯の思惑により、ヘンリー6世の息子であるエドワードと政略結婚することに。しかしランカスターの敗北によってエドワードも殺され、アンは妹のイザベル(史実では姉)からも冷遇されます。そんな中、リチャードから愛のないプロポーズを受け、彼と再婚。波乱に満ちた運命に翻弄される局面の多いアンですが、とても芯の強い女性です。エドワード5世とその弟が仕組んだリチャードの暗殺計画を知ってもなお、自分の意志でリチャードを選ぶアン。そのときのまっすぐな瞳が忘れられません。
 薔薇王の葬列はアニメ化も決定しているので楽しみ。史実と照らし合わせると不穏な予感しかしないのですが、どうかアンが納得できる終わり方を迎えて欲しいな、と願わずにはいられません。

②グズリーズ(ヴィンランド・サガ)

 こちらは11世紀の北欧が舞台。アニメ化もされた人気作品です。父親を殺され、復讐のために生きていた主人公トルフィンが奴隷編を経て更生し、故郷に戻ったときに出会った女性です。
 政略結婚のためにグリーンランドからアイスランドまでやってきたグズリーズ。彼女は結婚式の後に夫となったシグルドを刺してしまうという、なかなかのヒロイン。混乱の中逃げ出したグズリーズは、イッカクの角を売りに行くところだったトルフィンの提案で、彼の船に乗ることになります。
 好きで女に生まれたわけじゃないのに、どうして女は冒険に出てはいけないのか。幼少期からそう思い続けてきたグズリーズ。すんなりと運命に従うのが嫌で、それでも自分を納得させようとしていた彼女が無意識のうちにした「家」への拒絶。そしてそれを受け止めたトルフィン。そりゃトルフィンのことも好きになるよね、と思います。ヨムスボルグで囚われのヒロイン状態だったグズリーズを助けに来たトルフィンに顔を真っ赤のするグズリーズがとにかく可愛い。
 グズリーズの存在自体が、作品全体を貫く「逃げる」というテーマに繋がっています。逃げることを肯定してもらった彼女だからこそ、戦士団の跡取りという地位にとらわれていた少年バルドルに「どうしても嫌なことからは逃げても良い」と言える。この流れが素晴らしいんですよ。
 グズリーズを連れ戻しに来たものの、彼女がトルフィンを好きになったことを知ったシグルドは、グズリーズを置いてアイスランドに戻ります。そして晴れてグズリーズはトルフィンと結婚。戦争で実の母親を失った男の子・カルリを引き取る形で母親にもなります。それに続く24巻の表紙は家族3人で映っていて、表紙を見ただけでこみあげてくるものがありました。

③イロナ・シラージ(ヴラド・ドラクラ)

 こちらは15世紀、現在のルーマニアにあたるワラキア公国が舞台です。後に吸血鬼ドラキュラのモデルとなり、「串刺し公」と言われたヴラド3世を主人公とする歴史ロマン。イロナ・シラージは、ハンガリー王の従妹にしてヴラド3世の妃となった女性です。
 ヴラドとイロナの結婚はハンガリーとワラキアの同盟を強化するためのもの。政略結婚に対して完全に割り切っており、またハンガリー側の密偵として働きます。しかしそれを逆手に取ったヴラドはワラキアの公位を狙っていたダン・ダネスティを嵌めることに成功。そのことを知ったイロナが「恐ろしい方ねヴラド3世」と言って、それにヴラドが、わずかに微笑みながらも無言で応える。ビジネスパートナーとしてのドライな夫婦関係が、この2人らしくて大好きなんです。
 あと、無礼を働いたハンガリー側の代表者に水をぶっかけるあたりも強くて良い。
 史実と照らし合わせると不穏な予感しかしないので、そこが怖いですね。

④アナベル・フォードール(東独にいた)

 今度は1985年の東ドイツです。歴史もの続くね。東ドイツを愛する軍人にして、身体改造を施された特殊部隊MSGの一員でもあるアナベル。1話からチート級の強さを発揮しています。
 一方で、本屋を営む日系人の青年・ユキロウに恋心を寄せる一面もあり、特にユキロウを映画に誘うシーンの表情がとても可愛い。でも戦闘員としては素手で人体を切断できるレベルのチートっぷり。
 アナベルは二面性があるキャラクターかと言われるとそういう風にも見えなくて。ユキロウに思いを寄せる姿も国を想う姿も、また敵対組織であるフライハイトに不思議な共感を覚える姿も、すべてが「アナベル・フォードール」という一人の人間に帰結していきます。特に、「軍人としての自分を肯定するためにこの国を愛そうと決めた」とユキロウに打ち明けるシーンは圧巻。ユキロウに「君は間違っていない」と言われ一人涙を流すシーンもすごく好きです。
 しかしユキロウは実はフライハイトのリーダー「フレンダー」であることが明かされます。イデオロギー的に正反対の位置にいる2人がどんな結末を迎えるのか、今後も目が離せません。

⑤藤原高子(応天の門)

 こっちは平安時代の日本です。菅原道真と在原業平を中心とした歴史もので、ミステリー要素もあります。応天の門は魅力的な女性キャラクターが多いので1人に絞り切れないのですが、とりあえず今回は高子様で。伊勢物語の「芥川」で、業平との駆け落ち未遂が語られる藤原高子。のちに清和天皇の元に入内し、陽成天皇の母となる人物ですが、作中では入内前の姿が描かれます。
 兄・基経の政治的な思惑にさらされ続ける彼女ですが、御簾の中から主人公である道真を強引に事件に巻き込むなど、とても能動的な女性。兄に対して「女の手を借りなければ政もできないなんて」と言うなど、くせ者の基経とも対等に渡り合います。その一方で、業平への思いを心に秘め、ふとした瞬間に脆さを見せるなど、非常に多面的な魅力がある女性です。

⑥鯨井令子(九龍ジェネリックロマンス)

 東洋の魔窟・九龍城砦を舞台にしたSFラブストーリー。ちなみに知らぬ間に3巻が出ていたのですが、ちょっと最近本屋に行けていないので2巻までの情報で書きます。
 鯨井さんは、九龍の不動産で働くメガネ美女。30代で喫煙者、かつショートカットでスタイル抜群と、今まであまり好きにならなかった傾向のキャラクターですが、1話を読んだだけでどハマりしました。
 同僚・工藤に恋する瞳のキラキラ感がたまらない。少女漫画のような表情を見せるシーンもある一方で、ふと見せる色気にドキッとします。その色気も、地に足着いたというか、とても現実感のある色気なんですよね。ファンタジー世界にしか存在しない女性の妖艶さではないところがすごく好きです。私服がチャイナ風トップスにタイトスカートなのも可愛いです。
 何やら秘密を抱えていることが明らかになった鯨井さん。ああ、早く3巻買わなきゃ。

⑦カノン(ライチ☆光クラブ)

 ライチはね~~~マジで高校時代にハマった作品です。普段なら絶対に行かない映画館に1人でわざわざ朝イチで行ったのも良い思い出。黒髪ストレートの美少女で名門女子中学に通っている、まさしく文句なしのヒロイン。
 ストーリーですが、絶対的な少年・ゼラが支配する「光クラブ」に所属する少年たちが、ライチというロボットを生み出したことで引き起こされる運命を描いた残酷な青春譚です。
 「光クラブに相応しい美しい少女」を攫ってくるよう命令されたライチに誘拐される形で、彼女は光クラブと関わることになりました。カノンはライチにピアノの弾き方を教えるなど、驚異の順応性を見せます。さすがヒロイン(?)。2人のダンスシーンは退廃的ながらも美しくて大好きです。「本当に人間になりたいのなら人を殺してはいけない」とライチに訴えかけるシーンや、少年たちが息絶えた後にレクイエムを歌う姿は、もはや1人の少女の枠を飛び越えています。
 利発で意志が強く、女神性すら持ち合わせたカノンは最強だと思います。

⑧みどり(少女椿)

 うん、まあ、ライチときたらやっぱり少女椿の話もしなきゃだよね。ライチにハマってあれよあれよと少女椿に辿り着いた高校時代の私は、原作を探して本屋3軒を渡り歩きました。
 いじらしさやけなげさと言ったものは皆無、強かさと激強メンタルで数奇な運命を生き抜いていくみどり。黄色と赤の水玉模様のワンピースに大きなリボンにパンプス、といういで立ちは永遠のロマンです。
 親を亡くして見世物小屋で働いていたみどりは、奇術師・ワンダー正光と恋人になります。映画の子役にスカウトされるも、その話を正光が一方的に断ってしまったときに、みどりが正光をにらむシーン。あのコマがめちゃくちゃ好き。あのシーンこそみどりの真の強さですよ。
 そんな正光とも和解しようやく幸せになれると思ったのも束の間、正光は暴漢に刺されて死亡。いつまでもやってこない正光を探しに行ったみどりを囲む、見世物小屋の面々の幻影。幻影を必死に振り払ったみどりがただ泣いているシーンで物語は終わります。ヒロイン補正なんてものはない、あっけない終わり方。せめて正光と幸せになってほしかったなあ……。

⑨ジナイーダ(初恋)

 この流れで初恋かよと思われるかもしれませんが、好きなんですよ初恋。もともとは高校時代の読書会で出会ったもので、自発的に読んだ作品ではありませんでした。
 16歳の少年ウラジーミルの視点で語られる、年上の美しい公爵令嬢ジナイーダへの初恋。高校時代、ウラジーミルと同じ年代の頃に読んだ私はジナイーダに対して「何なのこの女⁈」とか言ってたんですが、最近になってようやくジナイーダの魅力が分かってきました。ウラジーミルに恋心を抱かれながらも、ジナイーダが本当に愛したのはウラジーミルの父親。そして時は流れ、ジナイーダは結婚。しかしウラジーミルが会いに行った矢先、彼はジナイーダの急死を知ります。ウラジーミルを翻弄しながらも彼の前から永遠に失われてしまったジナイーダは、まるで夜空に一瞬だけ煌めく流れ星のよう。私がファム・ファタールなヒロインにハマったのは、思えばジナイーダがきっかけでした。
 ジナイーダがウラジーミルの父親に自分の腕を鞭で打たせるシーンは衝撃的でしたね。

⑩木宮朝子(女神)

 締めは女神で行きます。三島由紀夫の小説です。まだ大学生になりたての頃、グループ発表の題材を探していたときに出会った思い出の作品。仮に私が近代文学を専攻していたら、卒論のテーマをこの作品にしていたと思います。
 木宮周伍・依子夫妻の娘として生まれた朝子。周伍は依子の美貌を保つことに情熱を傾けていましたが、戦争で依子が火傷を負うと、周伍は朝子を第二の依子にするべく教育を始めました。そんな朝子が出会ったのは、天才芸術家の青年・斑鳩一。一方、パーティーではエリート青年で銀行の御曹司である永橋俊二を紹介されます。あらすじをまとめる力に乏しいので読んでください。そんなに長くないです。
 ネタバレを言うと、結局斑鳩とも俊二とも結ばれなかった朝子は、父親とひとところに落ち合い、周伍にとっての「女神」となって物語は幕を閉じます。
 美貌も教養も立ち振る舞いも、すべてを身に付けた周伍にとっての理想の女性・朝子。常に運命の渦中にあった彼女が、とうとう女神として昇華されていくまでの過程は、本当に読んで欲しい。私の中で朝子はファム・ファタールの到達点です。
 語彙力が貧困すぎて説明しきれないのがもどかしい。とにかく読んでくださいお願いします。

おわりに

 5000字超えたのは久しぶりでしたね。本当はレミゼラブルのエポニーヌやゴールデンカムイのアシリパさんに塔の上のラプンツェルのラプンツェルも入れたかったのですが、ちょっと今回は断念。パート2をやる機会があったらそのときにまた書きたいと思います。あと銀英伝読破したらそれはそれで書きたい。
 余談ですが、私が初めて好きになったディズニーのヒロインはヘラクレスのメガラでした。
 カオスなラインナップでしたが、本日もお付き合いいただきありがとうございました。