今まで観てきた舞台を振り返る~東宝編~

こんにちは、雪乃です。
過去に観劇した舞台の振り返り感想、今回は東宝編です。例によってバリバリ主観の正直感想です。ネタバレありでお送りします。

レ・ミゼラブル

映画化もされたグランドミュージカルの金字塔。
今まで観てきた中で、予習をしてから行った方が良い舞台ナンバーワンです。非常に長い原作をうまく一本の舞台にまとめてあります。ダイジェストというほどではないですがそれなりにカットされたりもしていて展開が速いので、文庫本2冊の凝縮版を読んでから観ることをおすすめします。
映画版だと舞台にないシーンもあってか、テンポはそのままにかなり分かりやすくなっていました。
一番大事なことですが、泣きます。2幕のバリケードのシーンは、涙でほぼ見えてません。
昨年は私のご贔屓のお役がジャベールに変わったのですが、なんかもう感慨深すぎて1曲目で号泣しました。

ミス・サイゴン

レミゼと作詞作曲者が同じで、キャストも共通して出ている方がいるので、ほぼレミゼの兄弟作品だと思っています。近年はレミゼと交互に上演されているイメージ。
私が初めて観た東宝ミュージカルは、このミスサイゴンです。人生で一番のご贔屓が生まれた作品でもあり、色々と思い入れがあります。
ベトナム戦争末期、陥落直前のサイゴンを舞台に、ベトナム人女性キムとアメリカ兵クリスの悲恋を描いたミュージカル。
ストーリーのベースが「蝶々夫人」の時点でラストは推して知るべしという感じ。戦争を題材としており、クリスに対して「そりゃねーよ」みたいなイメージを抱いてしまうので、レミゼよりも好き嫌いが分かれると思います。
近年のミュージカルブームにより、ミスサイゴンのナンバーがテレビで歌われる機会も増えたので、「命をあげよう」や「アメリカンドリーム」は聞いたことがある方も多いかも。ちなみに私が一番好きな曲は、クリスの友人ジョンがベトナム人とアメリカ兵の間に生まれた子どもへの支援を呼びかける「ブイ・ドイ」です。
劇中に、キムの親が決めた婚約者・トゥイが登場するんですけど、私はトゥイが好きなんですよ。
戦中にベトコンだったトゥイは終戦後人民委員長になり、キムを探して迎えに行きます(この時点でクリスよりよっぽど責任感あるわ)。でも、そのときキムにはクリスとの間に生まれた子どもを育てていて。キムは息子を守るため、クリスが残していった銃でトゥイを射殺してしまいます。私が好きなのはここからで、息絶えたトゥイを発見した副人民委員長が泣き崩れるシーン。非常に短いシーンなのですが、トゥイがちゃんと慕われていたことが分かるのでとても好きです。

ヴェローナの二紳士

完全にご贔屓目当てで行きました。内容は1㎜も知らんかったけど原作はシェイクスピアだしまあいいか~みたいなノリで。好きな人には申し訳ないんだけど、ごめん虚無だったわ。演出がね、ちょっと私には合わなかった……。楽曲はすごく良かったけど、「それいる?」みたいな現代テイストのアレンジが……ちょっと……うん。
この作品には、エグラモーという登場人物がいるんですけど、なんか彼だけすごく損な役回りだったような気が……。

1789 バスティーユの恋人たち

政府に父親を殺された農民の青年ロナンが革命に身を投じ、やがて彼は王妃マリー・アントワネットの侍女オランプと恋に落ちる――という、フランス革命を題材にしたフレンチロックミュージカル。初演は逃したので、再演が初見です。
フランスで生まれた舞台とだけあって、楽曲が全体的にポップで現代的でオシャレ。そしてダンスも充実。「誰の為に踊らされているのか?」は、このシーンを観るためだけに通ってもいいと思ったくらいです。アクロバットもあり、衣装も超が付くほど豪華で見ごたえ十分。キャラクターごとにきちんと見せ場が用意されているので、ご贔屓を追いかけやすいです。
革命家同士の友情やロナンとオランプの許されない恋、アントワネットとフェルゼンのロマンスなど様々な要素が盛り込まれています。が、その分ちょとシーンごとにぶつ切り感があり、一本の芝居としてはあまり滑らかではなかったかな、というのが正直な感想。あと、シャルロットという女の子の立ち位置も、最後までよく分からなかった。
好きな作品の部類には入るので再演したら絶対行くって決めてるんですが、ちょっとモヤるところもあり、難しい作品です。

レディ・ベス

ヘンリー8世の娘として生まれながら、母アン・ブーリンが処刑されたために不遇の身にあった「レディ・エリザベス」が、「クイーン・エリザベス」となるまでを描いたミュージカル。
ストーリーは王道で、私は「これ、ライオンキング風味ね」ってちょっと思いました。
作詞作曲がエリザベートと同じコンビなだけあって、楽曲は壮大かつ繊細さもあります。特にベスの家庭教師であるキャット・アシュリーが歌う「大人になるまでに」は名曲です。キャストも豪華で、音に厚みがありました。壮麗な衣装と舞台装置で、視覚的にも楽しい。目の保養。

オン・ユア・フィート!

歌手のグロリア・エステファンの半生を、彼女自身の楽曲とともに描くジュークボックスミュージカル(ある特定のアーティストの楽曲を使ったミュージカル。マンマミーアとか)。日本版のCDが出ていないのが悔やまれます。
芝居・歌・ダンスのバランスがとれた良作です。1幕のグロリアの幼少期でもうすでに泣いた(ちょろい)。
この作品の主題は、「何かを得るためには何かを失わなくてはならない」「何かを失ったからこそ得るものがある」ということだと思います。スターになってゆくごとに余裕を無くしていくグロリア。「亡命」という安全を得るために夢を捨てざるを得なかったグロリアの母。そして、2人を見守りながらも劇中で亡くなるグロリアの祖母。親子三代に連なる物語を描き出す脚本と楽曲の配分というか、匙加減が見事です。
ライブシーンは観客総立ちでペンライト振りました。劇中のライブシーンとしても、普通にライブとしても楽しかったです。
ジュークボックスミュージカル自体初めて観たのですが、驚くほど芝居に溶け込んでいました。個人的には、事故にあったグロリアが手術中に見た夢の中で亡き父と歌う「Wrapped」です。ブロードウェイ版CD買ってないので買おうかな。
ペアのラテンダンサーによる高速ステップも見どころです。DVD出してほしかった……。

ジキル&ハイド

「ジキル博士とハイド氏」のミュージカル版ですが、原作からかなり改変されています。一番大きな違いは、ジキルの婚約者エマと、ジキルに思いを寄せる娼婦ルーシーが登場することかな。
ラストはかなりあっけないです。結婚式の日にハイドとなってしまったジキルに対して、「ヘンリー、私を見て!」と呼びかけるエマが切ない。
ルーシーはもうちょっと掘り下げて欲しかったかな。よく分からないままハイドに殺されるし。ルーシーが死ぬシーンにルーシーの衣装が白なのは、さすがにちょっとあからさますぎやしませんかね。
ちょいちょい突っ込みどころもあるけれど、今まで観た中では一番オーケストラが良かったミュージカルです。とにもかくにも曲が良い。「時が来た」「その目に」など、一度聴いたら忘れられない名曲がたくさん。

シャボン玉とんだ宇宙までとんだ

音楽座版ではなく東宝版。宇宙は「ソラ」と読みます。これ以上ないくらいの豪華キャストで上演された、日本オリジナルミュージカルを代表する作品。スリをして生きてきた女性折口佳代と、作曲家を志す青年三浦悠介の恋に、佳代の秘密を知る宇宙人が絡む壮大なストーリーが名曲と共に展開していきます。音楽座の初演は1988年と、歴史ある国産ミュージカルです。
ちなみに私は音楽座を2回観た上で東宝版を観劇しました。
一言で言うと、「なんか違う」。これに尽きる。登場人物の設定や価値観は昭和のまま、演出だけ令和に寄ってしまっているので、微妙に齟齬が生じている印象を抱きました。
一つだけどうしても変えて欲しくなかったのが、佳代の秘密を知り、佳代を見守る宇宙人3人が歌う「守ってブレンド」。おそらく音楽座のシャボン玉を観た人なら一度は歌いながらやるであろう動きがあるんですよ。曲の最後に、音楽座版は両手を交差させるのですが、東宝版はなぜか両手を大きく開いた形になっていました。
……すしざんまいかな?
本当にすしざんまいにしか見えなかった。なんでそこ変えちゃったの……と、小一時間問い詰めたい。
キャストは超豪華で、楽曲の面では文句なしに素晴らしかったです。元音楽座メンバーが多く出演していて、音楽座の空気感が残るようになっていました。
お佳代を演じた咲妃みゆさんがとにかく凄くて。お佳代は私の中では高野菜々さんのイメージが強く、咲妃みゆさんの佳代は想像がつかなかったのですが、台詞も歌も、悲しみも喜びも、すべてがお佳代でした。地に足ついた強さと脆さを持ち合わせたお佳代でした。
初演でお佳代を演じ、今回は東宝版で宇宙人ピアを演じられた土居裕子さんが歌う主題歌「ドリーム」、カーテンコールで聞けて嬉しかったです。

まとめ的なもの

東宝はご贔屓のファンクラブでチケットを取るのが一番取りやすいので、ちょっと作品に偏りがありますね……。
次回は梅田芸術劇場の主催公演や宝塚について書こうと思います。
お付き合いいただきありがとうございました。