おでん口でなくフレンチ口で行くべし
「何食べたい?」
と聞かれたら、頭に浮かんだものをすぐいうようにしている。
何食べたい→なんでもいい→どうしようか?
の不毛なやりとりをさけるためと、聞いている時点で相手もノーアイデアなわけだからなにかアイデアをいうのが得策。
この日は夕方から雪が混じった雨が降り出していた。寒い、手がしびれるほど寒い。
こういう日は鍋、もしくはおでんだ。
「お!おでんならいい店あるぞ」
とおいしい店にアンテナを張り巡らせている友人はすぐさまお店に電話をし、カウンターならOKとの返事をいただく。
「焼き鳥とおでん、あとワインもいいの揃ってるの」
そりゃ、期待値爆上がり。
お店の名前も「焼き鳥とワイン+ビストロおでん3B]
ビストロおでん?ビストロと名付けるくらいだからフレンチ風にアレンジしたものかと想像がつく。
冷えた体を温めるのはもちろんおでん。
ということで、かけつけ一杯のビールを頼んだときにメニューもみずに
「ひとまず、おでん盛り合わせで!」
と若いお姉さんにオーダーすると友人が
「あ、あとで説明しておくので、ひとまず炭焼き串おまかせ5本で」
おでんが食べたいんだけど・・・とふてくされているとメニューを広げながら
「想像がつくと思うけど、ビストロおでんっていうくらいだからいわゆる創作おでんなのよ。だから1つずつ個別オーダーなの」
なんと。メニューはこんな感じ。
白滝 冷製アラビアータソース
餅巾着 オニオングラタン風
焼きはんぺん アメリケーヌソース
インカの目覚め 冷製ヴィシソワーズ
などなど、おでんと言われなければフレンチだ。
いろいろシャレてはいるが、おでんといえば、卵と大根。まずはこの二つを注文。
やってきたのはおでん?やはりおでん感がナッシング。
まずは、大根(ポルチーニソース)。大根を口に入れた瞬間、おでん特有の出汁がじゅわ~っと口の中に広がるが、そのあとから濃厚ボルチーニの味わい。
卵(スモークサーモンのアイオリ)も、もはやおでんの具材の卵ではない。
どちらも食べたことがない味わいですこぶるおいしい。でもでも、やはりおでん感がない。やはりおでんといえば、餅巾着やちくわも入って、からしをちびりちびりつけて食べ、出汁がきいたスープをずずず~っと飲む。これがおでん。
味はばっちりだったし、ワインも焼き鳥もおいしかったから問題なしではあるものの、おでん口のときにいくと物足りなさが残る。
ビストロおでんを食べるときは、フレンチ口で行かねばならぬと思ったおしゃおでん。
やっぱりおでんは、煮込まれたおでん具材が仕切りの中にごろごろ入っているカウンター越しに湯気をたちのぼらせながら鎮座しているのがおでん。
と書いているうちにおでん口になってしまったので、コンビニのレジ横おでんでも!と思うも、近所のコンビニはコロナ禍からおでん鍋設置を取りやめ、なぜか復活しない。なぜじゃ!と、聞いてみると
「カップおでんならありますよ」
と。知ってるわ!いつ復活するの?と聞いているのに、カップをすすめるとは何事!
わたしは、自分で厚切りおでんをすくって、スープもタプタプにして持って帰りたいのだ。とはいえ、ないものはない。だからといって家で出汁をとって大根シミシミになるまで煮込むなんてことはできない。
結局、店員にすすめられるままカップおでん購入。
ぶつくさ文句言いながら、温めて食べたら・・・おいしい!出汁もたっぷり。
けどけど、やっぱり自分で好きな具材をすくって、カップにいれて汁がこぼれないように持って帰りたい。冬の風物詩だったのに・・・
近所のコンビニおでんの復活を願うばかりだ。
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