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雪の下で寝かせると甘味が増す「越冬野菜」

野菜作りの醍醐味は、採れたての新鮮な野菜が食べられること。
実家は専業農家ではないもの、じいちゃんが定年退職後、手広く畑を作ったおかげで家の裏にある畑でトマトをもぎ取り、雨水で洗ってもぐもぐ食べるという贅沢な幼少期を過ごした。

大好物はきゅうり。
もぎたてのみずみずしさといったら。
ちょっとした棘なんかものともせずに、バリバリぼりぼりむしゃぶりついていた。

台所に立つお母さんから
「オクラとトマト取ってきて!」
なんてお手伝いを頼まれることも多く、それなりに楽しかった。

畑に色とりどりの花々や野菜、果物がまみれる夏とはうってかわり、冬は一面の銀世界。

雪が積もってしまうとハウスでも建てない限り、作物は全く育たない。
単なる雪捨て場と化す。

寒い~寒い~とストーブの前にかじりついていたある日。

「お~い、寒い寒いいってね~で、今日は天気もいいし、にんじん掘るぞ!」

とじいちゃん。

にんじん掘るんじゃなくて小屋の箱に寝かせてあるのを取りに行くんでしょ?と思いながらも、じいちゃん子の私はアノラックを着てついていく。

アノラックとは単なるスキーウェアや防寒具のことで、なぜかアノラックと呼んでいた。東北ならではだろか?

じいちゃんもアノラックを着て、スコップ片手に準備万端。

やっぱり掘るのか?

私もミニスコップを手にじいちゃんの後をついていくと一面銀世界の畑に行き

「このあたりだな」

とスコップで優しく雪をよせていく。

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ちなみに写真は、じいちゃんではなく今年の冬の父。
アノラックをきて、彫っている姿がままでじいちゃんだった。

雪をかきわけていくと、にんじんの緑の葉っぱがこんにちはと顔を出した。

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収穫を迎えたニンジンを掘らずにそのまま土の中で越冬させておく、北国ならではの野菜の貯蔵方法「越冬野菜」だ。

冷蔵庫の野菜室は3~8度くらいの設定だが、越冬野菜の適正温度は0度。
寒すぎて、野菜から水分が抜け、パサパサになっちゃうんじゃ?という心配はご無用。
雪の下に埋めることで、雪解け水が適度に土中に流れ野菜の水分を保ってくれるのだそうだ。

しかも、雪の下に長く置くほどみずみずしさアップっていうんだから、なんともすごい保存方法を思いついたなと感心する。

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土はかっちんこっちんになってはいないものの、一気に抜くと、御覧のようにぼっきり折れてしまうのでレディーを扱うようにやさしく抜くのがポイント。

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見るからにみずみずしい。ずっしりと重く、食べ応えがありそう。

じいちゃんの大好物だった温野菜で食べてみると、何もつけずとも甘い。

母がじいちゃんからきいたところによると、雪の下に長く置いておくとみずみずしさのほか、甘さもアップするんだとか。そんな先人の知恵を今も忠実に再現して越冬野菜を作る両親。

ニンジンだけでなく、キャベツも越冬野菜として食べられる。

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ニンジンは植えたまま放置するが、キャベツはいったん収穫し、土の上に並べるだけ。雪をかきわけ、かわいく並んだキャベツを取り出すと身がパンパン!

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千切りにして生で食べるとシャキシャキ食感が小気味よく、みずみずしく甘い。芯の部分まで甘いのに驚く。

生で食べてももちろんおいしいが、キャベツも温野菜で食べると甘みがぐぐっとアップ!
冗談ぬきで1玉食べきっちゃいそうなほどのおいしさ。

どんな野菜でも越冬できるわけでなく、向き不向きがある。
他には大根やネギが越冬できるそうだ。

実家の大根は干して、すべて漬物にしてしまうため越冬はしていない。秋になると家の前に木組みを作って、大根を干し、さながら大根カーテンのような風景が広がっていたなと思い出す。今では後継者がいなく、大根カーテンをしている家は一軒もない。実家も小屋の奥でひっそりと大根を干しているだけだ。さみしい限り。

越冬野菜の保存方法にへぇ~となるも、そういえば、マンゴーやキウイフルーツ、柿、バナナなど追熟して甘くなるフルーツもあるんだから野菜だって放置しておくことで甘味が増すものもあるのはうなずける。

宮古島で購入した島バナナ追熟日記でどうぞ

越冬野菜は今に始まったことでなく、北海道や青森、山形では地元のウリとしてすでに全国に売り出している。

秋田の越冬野菜も負けてねんだどもな。

秋田なんとかさねば隊出動!

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