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冬の到来をつげるオレンジカーテン

昔は柿の木がいたるところで見られた。実家にも道路沿いに1本、裏の畑に1本、堤防の畑に1本と、3本も柿の木があり、11月上旬になると渋で爪の中が真っ黒になるほど、渋柿の皮をむきまくった記憶がある。

その結果、柿以外にもリンゴなど上手にくるくる回しながら1本で皮むきができるようになった。なんの役にも立っていないが。

祖父祖母がなくなるたびに1本ずつ柿の木が消え、今では裏の畑の1本になった。樹齢50年は超える柿の木は10年に一度くらい、20個ほどしか実がつかないなんて年もあるが、ほぼ毎年、たわわに実る。オレンジ色の柿は、食べる楽しみもあるが、晩秋の少し寂しい気分になる風景に一筋の灯りをもたらしてくれる。

「柿が赤くなると医者いらず」なんてことわざにもあるようにビタミンCが効率的に摂取でき、健康にもよいとされる柿。個人的には食べすぎると、トイレに頻繁にいくようになるので、1日1個、特に夜は食べないと決めている。

いろいろ楽しませてくれる柿だが、今年はそんな悠長に眺めている暇がなかった。

クマにロックオンされる前に

秋田魁新報に毎日のようにクマ情報が掲載され、クマ被害件数NO1の秋田県。

「クマのうんこちゃんを見ちゃった!」
なんてのんきに会話しているおばちゃんたちがいるかと思えば、
「襲われるのは怖いども、一気に死ねるなら、クマにあうのもわるぐね~な」
なんて、本気なんだか冗談なんだか、笑いながらしゃべっているばあちゃん、じいちゃんたちもいる。

ということで、実家から1kmくらいの場所でクマ目撃情報もあり、いつ家の裏に出没してもおかしくない。しかも、あんな目立つオレンジ色の柿の木を放置しているとは危険きわまりない。

クマに狙われる前にさっさと収穫せねば!と、まずははしごをかけ、上の部分の木をぶった切っていったら、こんな惨状に。

「おめ、ただ切ればいってもんじゃね~ぞ」

と父ちゃんに指摘された。切りすぎたから来年は実がならないかもしれぬ。


今更遅いが、木をぶった切るのをやめ、かごを木にひっかけて一個ずつ丁寧に収穫。
バッチバッチと切るだけならまだいいのだが、干し柿用に枝をつけないといけないのがポイント。


こんな感じに枝を残す。

クマにロックオンされる前に、すべて柿を取っ払うのが目的のため、1日で収穫。


日が暮れるころようやっと終わった。あ~腰も腕も痛いな~とぐるぐる腕を回していたら父ちゃんから

「おんめ、全部、取ったのか。カラスのエサに1個残すのがじいちゃんの代からの習わしなんだぞ!」

カラスより怖いのがクマ。クマにロックオンされないために収穫しているのに、なにがカラスのエサだ。

さわす、干し柿、柿酢

渋柿は読んで字のごとく、そのまま食べたら渋くて食べられない。クマは渋くないんだろうかなんて思ってしまうのだが、渋柿を食べると、しばらく口の中に渋が残って気持ち悪い。

収穫後に待っているのが、選定。枝も葉っぱもついているし、枝同士がくっついている柿もあるし、鳥さんにつっつかれて傷物もあるし、自分が落としてしまったものもある。

これを3種類にわけていく。


1.さわす


さわすって標準語だと思いきや、秋田弁?もしくは東北地方の言葉らしい。
柿の渋抜きをすることを「さわす」という。

傷がなく、実も大きく、いわゆる一級品がさわす柿になる。さわす柿は枝をばっさり落とし、ちょこっと乗っかっている葉っぱもむしり取り、キレイに磨く。上の写真は軍手で磨いている様子。

さわすのはいたって簡単。
・柿の汚れをふき取る
・ホワイトリカーを容器にいれ、柿のヘタの部分を10秒ほどひたす
・スーパーの袋にヘタを上にしていれ、密封
・温かい部屋に1週間ほどおく
すると、あ~ら不思議、渋がぬけて、甘柿に変身。

ちなみに、渋柿シーズンになるとスーパーに「渋抜き職人」という瓶も売り出される。

部屋の温度が20℃以上ある場合は、5日くらいで渋がぬけ、寒い場合は1週間以上かかる場合も。べちゃべちゃにならないよう、適度にチェックが必要。

2.干し柿

冬の保存食にぴったりの干し柿。これがまた大変。

枝をキレイにきり、皮をむいて、紐に通す。


手首がおかしくなるし、手はべたべた、爪は渋がついて真っ黒。ほんとに疲れる作業。

そのまま、干してもOK。キレイな干し柿が作れるとお湯につけてから干すのは友人宅。実家はそのまま干すバージョンとカビがはえないようにとスプレーでホワイトリカーを振り分けるバージョンと2種類作る。

干して2週間ほど経過すると、水分がぬけて、小さく茶色になる。


牛の乳を搾るようにもみもみすると柔らかい干し柿になるぞ~と、気が向いたときにじいちゃんがよくもみもみしていた。

3.柿酢

最後は、もう食べるには熟しすぎてしまった柿や、鳥にちょんちょんされてしまった傷物を柿酢にする。



キズや黒くなった部分、そしてヘタの部分を取り除き、4等分にカットしておけに入れるだけ。

ビニールをかぶせ、紐でびっちりしばり、毛布をかけて冬の間寝かせると柿酢のできあがり。

肉料理に使うと、肉が柔らかくなり、魚の場合は、魚の臭み取りになる。

実家では、根菜類を作る畑にまくことで、根はりをよくし、さらに野菜の旨味もアップさせている。

これもじいちゃん、ばあちゃんの知恵。

昔の人たちは何も無駄にせず、すべて使い尽くす。まさにSDGsを普通にやっていたのだ。もっと、じいちゃんからいろいろ教わりたかったなと思うときは、もうこの世にいない。


オレンジのカーテンがお目見えするともう冬はすぐそこ。小学校時代は、オレンジカーテンをみると、もうすぐ雪が降るな~と思ったものだ。

年末年始の帰省時はおいしい干し柿にありつけるに違いない。今年は自分で作ったからおいしさも倍増!

今日も読んでくれてスパシビ(ウクライナ語)
イスラエルの件で、ニュースにあまりお目見えしなくなったが、まだまだ収束してないんだよな。今日みたいな寒い日は大丈夫だろうかと心配になる。

応援ありがとうございます!いただいたサポートは次回のブータン旅行時、キッズ僧侶たちへ日本のあめちゃんを大量に購入する費用にいたします。