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旅立ちの唄

2008年。
当時の私は鬱でした。
派遣社員として働いていたのですが、
あるときから不眠症になり全然眠れない。
食欲もなくどんどん痩せていく。
163センチで体重は40キロをきりそうでした。
背骨やあばら骨も浮き出ていました。

鬱の原因は…一番は恋愛だったと思います。
同じ職場の上司。
不倫ではありません。
お互い独身でしたのでいたって普通の恋愛のはずでした。
ただ、私は本心を明かさない彼に振り回され、そして仕事も繁忙期に入り人手不足の中、私はオーバーワークでした。
完全に心のキャパを越えてしまっていた。

私はある日、仕事を早退して心療内科へ駆け込みました。
「躁鬱病」と言われました。
それからは睡眠導入剤を飲んで眠るようになりました。
薬が効かなくなると強めの薬に変えてもらったりしていました。

本当は鬱の原因になっている環境から離れることが一番でしたが、自分で言うのもなんですが、責任感が強く完璧主義の私は、投げ出すことや仕事の一部を人に任せることも出来ず、自分一人でやり遂げれば認めてもらえると思っていました。

仕事を頑張れば彼にも認めてもらえる。
全てが上手くいくと思い、大量の薬を飲みながら毎日必死で生きていました。

その職場では当時、オフィス内に有線で音楽が流れていました。
あの頃、よく流れていたのがミスチルの「旅立ちの唄」でした。
2007年の映画「恋空」の主題歌でしたが、私は映画を見ていませんでした。
ただミスチルは好きだったので、心の奥深くにまで染み込んできました。

仕事中、苦しくなってロッカーに閉じ籠り、この曲を聴きながらうずくまっていました。

「助けて」
そんな気持ちでした。

結局、私はある日職場で取り乱し、みんなの前で彼の胸を「なんでなんで」と叩き、泣き崩れ、別室に連れていかれ、そのままその日限りで契約終了となりました。

正直いうと、あの日の事はうろ覚えです。あまりはっきりとは覚えていません。
自分で自分の頭の中から消したのかもしれません。

躁鬱病は仕事を辞めてから少しずつ良くなっていき、薬がなくても眠れるようになりました。

「旅立ちの唄」はあれ以来、暫くは聴くのは苦しかったですが、今ではとても好きな曲です。やはり、あの時の私に寄り添い支えてくれた曲だと思うから。

それなのに…

三浦春馬さんの事があり、はじめて「恋空」を観たんです。

この曲だったの…

またこの曲を聴いて泣いてしまう日がきてしまった。

この曲の世界観は空へと旅立つヒロから美嘉に向けられたもの。

「またどこかで出会えるね
とりあえず「さようなら」」

「手の届かない場所で背中を押してるから」

「でももし聞こえていたって返事はいらないから」

こんなことってあるの。
10年以上も前からまるで彼のメッセージが残されていたかのような。

「偶然が僕にくれたさりげない贈り物」

これからも私はこの唄に支えられていくのだと思う。

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