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172. 量と質、どちらが大事?

今回のテーマはズバリ「量と質、どちらが重要か?」についてです。これは、さまざまな場面でよく議論されているトピックではありますが、結論から言うと、僕は「どう考えても圧倒的に、量の方が大事」だと思っています。

僕はこれまでアイスホッケーを25年近くやってきたわけですが、今の舞台まで来れた理由は、間違いなく「練習してきた量」にあると思います。(それと同時に、今の舞台で僕が留まっている理由も、量は多いに関係していると思っています。)

そもそも僕は、決して身体能力が高かったり、アイスホッケーの才能があったわけではないと思います。陸上でも氷上でも足が速かったわけでもないし、運動神経は決して良いとは言えません。(むしろスポーツセンスはない方に当てはまると思います、まじです)

アイスホッケー選手はなぜかサッカーが上手い人が多いのですが、僕はリフティングが全然できません。

何より僕は、最初から何かを完璧にできた経験がありません。アイスホッケーは特にそうでした。初めて氷に立った時からスイスイ滑れたとか、初めて握ったスティックで突然強いシュートを打てたとか、そんなヒキのある話ができれば良いのですが、本当にそんな天才的なエピソードとは無縁、むしろ真逆の選手だったと思います。

唯一あった才能は「たくさん練習することを当たり前に思えたこと」ではないかと思います。

これは、僕の周りのホッケーが上手な選手たちの話を聞いたりしてもよく共通していることですが、例えば代表に入っているような選手、国内や海外に限らず皆さんが名前を知っているプロ選手たちは、「当たり前に練習する時間」が他の人よりも圧倒的に長いと思います。そもそも、「頑張れる量が多い」と感じています。

これは、一回の練習をだらだら長く続けるという意味ではなく、仮にその練習時間が15分でも、30分でも、1時間だったとしても、それを何度も何度も繰り返してきた人が、最終的には上手くなっていると思います。

僕は、小学生の頃は、あまり友達と遊んだ記憶がありません。本当に、毎日ホッケーばっかりやってたと思います。(それができる環境にいれたことは、今思えば幸運でした)

学校が終わったらダッシュで家に帰って、一般滑走時間でスケーティングのレッスンを受けて、また家に一度帰ってご飯食べて、その後夜の練習に2-3枠続けて乗る、なんてことが当たり前に続いていました。(そのオーバーワークが原因で中学生で腰椎分離症になってしまったわけですが、それはまた別の機会に)

僕としては、これが普通の日常だったし、自分がたくさん練習をしているという自覚はあまりなかったと思います。

良いか悪いかは別にして、普段の練習に「アイスホッケーの練習時間」がなんの違和感もなくたくさん組み込まれていました。

さてここで話を戻しますが、「量と質では量の方が圧倒的に大事」と僕が言う理由はとても単純で「量をこなさないと質が上がらないから」です。

「いろんな練習をやっているけどなかなか上手くならない」と感じることは誰にでもあるかと思います。そして、「この練習は本当に役に立っているのか」と疑ってしまいたくなります。

しかし、往々にして、そのような場合は、そもそもの練習時間が全然足りていないことがほとんどです。

アイスホッケーに関しては、近道はできないと思います。まずはやっぱり、誰よりも練習しないとハンドリングもスケートもシュートも上手くなれません。

正しい方法とか、効率の良い方法とか、すぐに上手くなれるコツとかは気にせず、まずはとにかく氷に乗る回数やスティックを握る時間を誰よりも増やすことを考えるべきだと思います。

ホッケーに限らず、どの分野であれ、エキスパートと呼ばれる人たちは「あんなことができてすごい」と周りから思われる方がほとんどだと思います。

ホッケーであれば「あんなに早くスケートできてすごい、あんなに強いシュート打ててすごい」、ピアニストであれば「あんなに難しい指遣いをスムーズにできてすごい」というような見られ方を多くされているのではと思います。

ただ、本当に尊敬するべきは、現在その人が見せてくれている素晴らしい技術自体ではなく、「その人がその技術を習得するまでにかけた労力や時間に対する忍耐力」だと僕は思っています。

先程ちょうどピアノの話を出しましたが、「ピアノのレベルが1から10まであったとすると(10がマックスでなんでも弾けるレベル)、9から10にいくよりも、1から2にステップアップすることのほうが難しい」という話を聞いたことがあります。

ホッケーなんて特にわかりやすいですね。滑れるようにならないと自由にプレイできないスポーツである以上、全く滑らない状態から滑れるようになるまでが一番大変な時間です。

だからこそ、できるようになるまでは効率なんか考えずに、とにかく量をこなして、自分がその作業(練習)をしている時間を、生活の当たり前の一部分にしていく必要があると思っています。

また、これはもう少し先のフェーズの話になりますが、スキルとテクニックの違いについても似たようなことが言えます。

テクニックは基本的に、プレッシャーのかからない状況での動きです。例えば、相手がいない状態でシュートを打つ、ハンドリングを行う、スケーティングをする、後ろ向きに滑る、パックを持ちながら移動するなどです。

一方スキルは、プレッシャー下、かつ判断を求められるプレイです。アイスホッケーは対人スポーツなので、基本的に試合ではスキルを発揮する力が求められます。

つまり、プレッシャー下で良いパフォーマンス(スキル)を発揮するには、まずはプレッシャーがない状態(テクニック)の動きを何の問題もなく行えるようになる必要があります。それを実現するためにも、結局圧倒的な練習が不可欠です。

「いやいや、間違った方法で量をこなしても意味はない。結局は質が大事だろう」と考える人もいるかと思います。その意見も、僕は間違いではないと思います。

ただ、質が必要になるのは、いずれにしてもある程度競技経験歴が長くなってからだと思っています。もちろん中には、ひたすら質を追求して、少ない練習時間で素晴らしい成長を遂げる選手の方々もいますが、それはほんの一部です。

実力を向上させるためには練習が必要であることは理解していても、「果たしてこの練習で効果はあるのか?」と疑心暗鬼になることがあります。

私も実際に、ハンドリング練習や特定のトレーニングメニューなどで、「この練習で良いのかな」と思う瞬間があります。

しかし、その時点で「まてまて、そもそも自分は、このメニューに効果があるかどうかを疑えるほどの量をこなしたのか?」と問いかけると、実はまだまだスタートラインに立ったばかりだと感じることが多いです。

自分が「もう充分だろう」と感じる瞬間から、どれだけ継続して取り組めるかが、本当に量を積んでいるかどうかの指標だと考えています。

そのため、「量を積んでいるのに質が上がらない」という人は、
・質を向上させるために必要な試行回数をまだこなせていない
・その量を実力に変える技術がまだ不足している
・その点について指導してくれる人が周りにいない
という可能性があると思います。

したがって、上達のためには質を向上させることは非常に重要ですが、それはおそらく最終段階であると私は考えています。どんな状況においても、先延ばしにしていいと僕は考えています。初心者の方は特にそうです。

個人的には、最初の段階として、質を向上させることを考える前に、自分が何を改善すべきかを把握できるまで、量を積むことが重要だと思います。

この件に関しては、人それぞれさまざまなご意見があるかと思います。皆さんはどう思われるでしょうか?もし良ければ、皆さんの考えも共有していただければ幸いです。

今日のお話は以上です。今回の内容が面白いと感じた方は、ぜひSNS等でもシェアしていただけると幸いです。(内容にもよりますが、全力リツイートさせていただきます!)

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

三浦優希

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