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111. 「ホッケーIQ」や「センス」と呼ばれるものについて思う事

先日、ある選手からツイッターのDMにてこのような相談を受けました。

私はよくホッケーIQが低いプレーをしていると言われます。ホッケーIQの向上にはどのようなことをすれば良いのでしょうか?自信を無くし、消極的な気持ち、プレーになっています。何かアドバイスをいただけないでしょうか?

この「ホッケーIQ」や「センス」についての質問、実はこれまでにもいくつかされたことがあります。今回のnoteでは、僕がこの言葉たちについて思うことを記していきたいと思います。

(読み進めていただく上での前提として、こちらの内容は僕の経験が基になっているので、学術的な根拠を示すものがありません!Evidence-basedなお話はできないかもしれませんが、ご了承ください)

そもそもホッケーIQって?

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実はこのホッケーIQという言葉、そもそも僕はあまり好きではありません。というより、正直本当の意味合いというものをあまりよく分かっていません。なぜなら、この言葉はかなり抽象的かつ漠然としたものだからです。

皆さんはいったいどういう時にスポーツIQやセンスといった言葉を使うでしょうか?うまい選手を見たとき?クリエイティブなゴールを決めたとき?鮮やかなパスを出したとき?きっと、人それぞれ様々な意見があると思います。

「ホッケーIQ」という言葉の一般的な意味合いとしては、読んで字の如く「ホッケーに関する知能指数」ということだと思いますが、僕なりにこの言葉を言い換えるとするのであれば、

「試合中における状況判断の成功率の高さ」だと思っています。

アイスホッケーは、その競技の特性上、常に選手には判断が求められます。味方選手や敵選手による不確定かつ不規則な動きが常にあり、その上で攻守の切り替えも何度もおこなわれます。

他のコンタクトスポーツにも共通して言えることだと思いますが、試合中は

・パック
・味方
・敵
・審判
・ベンチ
・時間帯
・ポジション
・交代 etc

などなど、複数の事象に同時に対応しなければいけません。

そういった状況の中で、
①常に適切な判断を素早く行うこと
②その行為の成功率が高い人

がホッケーIQが高いと言われる選手なのかな、と僕は思っています。

ホッケーIQは生まれ得るもの?それとも身につくもの?

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これはおそらくスポーツに関わる人たちにとっては永遠の議題になると思いますが、はたして「生まれ持つセンス」なるものは存在するのでしょうか。実際、「運動能力と遺伝子にはポジティブな相関関係がある」と宣言する研究者も多くいるはずです。

確かにいわゆる運動神経には遺伝子というものは関係するかもしれませんが、「状況判断力」や「察知力」というものに関しては、経験を積むことでいくらでも身に着けられるものだと僕は思っています。

一つの例が、僕自身です。僕はよくいろんな方から「スマートな選手だね」と言ってもらえることが多いです。自分自身、なにか飛びぬけたスキルがあるわけではありませんが、状況判断力にはある程度の自信があります。そしてこれは確実に生まれ持ったものではなく、これまでの膨大な試行回数の結果、身についたものだと思っています。

じゃあ、どうやったらホッケーIQはあがるの?(ここから本題)

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いつも通り前置きが長くなったわけですが、ここからようやく本題です。「ホッケーIQを向上させるには何をしたらよいか」という質問について僕なりの回答をさせていただきます。

僕としては、


①常にそのときの自分が考えられうる最善の選択を意識的にする
②その選択が「適切」だったかを振り返る
③このループを何度も繰り返す

というのが良いかと思っています。先ほど言ったように、常に適切な判断を行い、その成功率を高めていくにはある程度の試行回数は必要だと思っています。

ここで大事なのが、プレイ中、なんとなくの感情に任せて動くのではなく、各状況に応じて何が一番の選択なのかということを常に意識的に考え続けることです。

「なんとなくパックがあっちに行ったから」とか、「味方に言われたから」というものではなく、「自分がこう思ったから実行した」という能動的選択を心がけることです。ちなみに僕は、直感的な感覚というものを否定しているわけではありません。意識的に選択をしていくうちに、だんだんと感覚というものが研ぎ澄まされていき、それがいつしか「なんとなく」や「直感的に」という形で答えを教えてくれるものになると思っています。ワンピースで言う見聞色の覇気のようなものですね。(違うか?)

テキトーに導き出す答えと、何回も何回も似たような経験をしたうえでの直感というものでは、後者の方が圧倒的に信頼できると思います。

つまり、瞬時に「この状況ではこのように動くべきだ」という仮説がピーンと頭に浮かんだり、「あれ…これってまずいんじゃないか!」という違和感だったり一種の気持ち悪さのようなものを自然に感じ取れるようになってきたときが、ホッケーIQが向上したときなのではと思います。

②において、「適切」という言葉を使用したのには理由があります。なぜなら、どんなシーンにおいても、これをやれば絶対に正しいということはないからです。「正解だったか、間違っていたか」という二極の考え方ではなく、「自分の決断はその状況にフィットしていたか」という柔軟な考え方を持つと良いと思います。僕はそうしてます。

誰もが不規則に動く対人スポーツの中で、絶対に正しいプレイというものがないからこそ、たくさんの経験を積むことで、「このシーンではこういったことが起こりうる」という仮説を頭の中で瞬時に立てられるようになると強いです。

僕自身も実践していることですが、1プレイ終えてベンチに帰ってきたときでも、ピリオドの合間でも、試合を終えて家に帰るまでの道でもいいので、「さっきの自分は最高の判断をできていたか」と考えるのは良いことだと思います。「あのときああすればよかった!」という感覚は確実に次につながります。というより、その感覚を持てるようになっている時点で、状況判断力は高まっているのではと思います。あとは、それを実現するためのスキルと、似たような状況になった時に瞬時に適切な判断ができるかどうかです。

もうひとつ僕がよくやっていることをお伝えすると(初めて公に言います)、ベンチにいる時も、「俺があの選手だったらどうするかなあ」ということを考えてます。結構な頻度でこれをやってます。

そして!その時に大切なのが、ベンチから見ている自分の目線で考えるのではなく、その選手の目線を可能な限りイメージして頭の中で再現することです。変な言い方をすれば、その選手に憑依するような感じです。幽体離脱して、その人の目線になりきるような感じ。ちなみにこれは、例えばテレビで試合を見ている時やリンクで他の人の練習を見ているときでもできたりすることなのでもし興味のある方はやってみてください。「一人VRタイム」です!笑

これに似たような話で言えば、コーチが次の練習メニューをボードに書いて説明している時も、僕はそのボードに書かれている選手になり切って頭の中でメニューを実践しています。だから僕は日頃から、あまり練習メニューを間違うことがないです。はっきりと頭の中で自分が動いているところを自分自身の目線で鮮明に考えるというのはとてもおすすめです。

シュートスキルなどとは違って、こういった判断系の成果というのは数字に出しづらいためわかりづらいですが、何度も何度も繰り返し自分が思うベストの判断を常に徹底的にすることで、その質は確実に高まると思います!

おまけ:多分これは日常でも鍛えられる

僕は、この状況判断力というのは間接的に日常でも鍛えられると思っています。多分ですが。

というのは、先ほど少し触れた通り、多くの人が「正しいか間違っているか」という二極だけで物事を考えすぎていると思うんです。そして、すぐに答えのみを知ろうとしてそれまでの過程をおろそかにする人も多い気がします。僕自身も、油断したらすぐそうなってしまうので日頃から気を付けています。

つまり何が言いたいかというと、日頃から選択肢を多く保つことや、答えを一つに絞りすぎないこと、そして他人からの答えだけを抜き取ろうとしないことは大切なのではないかと思っています。もちろん何か決断をする上では最終的に一つの道に絞る必要は出てくるのですが、それまでの過程において、様々な選択肢から自分自身で物事を突き詰めて考えるという行動は非常に大切なのではないかと思っています。

これが果たしてスポーツに直結するかどうかは分かりませんが、「状況判断」においては通ずる部分はあると僕は思っています。

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最後になりますが・・質問者さん、周りからこういったことを言われてとしても、そんな他人からの言葉で落ち込んでちゃダメですよ!ありがたい言葉だと思って受け取りつつ、半分無視しましょう!笑

なんにも気にすることないです!常に自分の判断に自信を持ちましょう!
応援しています。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

三浦優希


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