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90. 「恩返し」の本当の意味

今回は、日本に帰国する際にカナダ側でお世話になったご家族のお父さんの話。

その人との出会いは、僕の試合を見に来てくれたことから始まる。その方の家族構成は、イタリア系カナダ人のお父さん、日本人のお母さん、そして現在幼稚園に通う娘さん。

試合の後に僕に話しかけてくれて、そこから親交が深まった。

私が住んでいる町は、カナダと隣接しており、橋を渡れば国境を車で超えることが出来る。今回の帰国は、アメリカではなくカナダ側からトロントを経由して日本へと向かうものだった。そしてその際にお世話になったのが、カナダ側に住んでいる、そのご家族だった。

今回日本に帰国するにあたり、そのご家族の自宅にフライト前に一泊させていただく、というのが当初の予定だった。しかし、カナダ政府からの国境封鎖というアナウンスにより、カナダ側へと渡る日程が大幅に早まり、急遽4日間も家に泊めさせていただいた。その期間、自宅の部屋を一つ用意していただき、ご飯も食べさせていただいた。本当に、言葉では表せないほど、良くしていただいた。

滞在期間が終わり、いよいよフライトのために空港へと向かうことになった。その時は、その家のお父さんが僕を空港まで送ってくれた。

その車内でこんな話をした。

「この度は大変お世話になりました。本当に本当にありがとうございました。どう恩返しをしたらよいか・・」と僕が言ったとき、こんな言葉が返ってきた。

「優希、よく聞いてくれ。何かを僕に返す必要はない。困っている人がいたら助ける、これは特別なことじゃない。当たり前のことだよ。世界的に厳しい時間を迎えている今は特にそうだ。人々は互いに協力しあって、この危機を乗り越えないといけないんだ。だから、お返しなんて気にしなくていい。今後僕のところにまた来るとしても、なにかお礼の品を持ってくる必要もない。その代わり、この先優希の人生の中で誰か助けを必要とする人が現れたときに、必ず力を貸してあげるんだ。もし僕が何かに困って優希を頼った時に、助けてくれたら嬉しいよ。世界はそうやって回っていくものなんだ。」

と言われた。この言葉を聞いた時、どれだけ自分がちっぽけな考えにとらわれていたのかを思い知ると同時に、「恩返しの本当の意味」を知った気がした。

過去にも似たような経験をしたことがある。

同じミシガン州に住んでいる日本人ご家族の方がいる。僕が現在の大学に進学することが決まった際に連絡をしてくれた方で、これまで何度も家に泊めさせていただいたり、家具を譲っていただいたり、車で5時間近くかけて自宅から僕の大学まで送っていただいたことがある。その方にも、お礼をしようとしたら「そういうのは気にしないで。そういうことじゃないからさ。」と言われた。

チェコでお世話になっていたホームステイ先のご家族にも、滞在前、滞在中、滞在後を含め、数えきれないほどに助けていただいた。助けが無かったら、チェコに残ることが出来ず日本に帰国しなければいけないということもあっただろう。

助けてくれる人は、決まってこのように言う。

「特別なことではない。」

勘違いしてはいけないのは、こういった方々が周りにいてくれることは、決して当たり前のことではないということだ。僕は本当に本当に、出会いに恵まれているのだと思う。

「お礼はいらない。」と言われても、その人への感謝の気持ちは絶対に忘れてはいけない。助けてもらうことは当たり前ではないし、実際にお礼をするべきタイミングだって必ずある。

それを踏まえたうえで、このような方々に出会えたことで気づいたことがある。

それは、目先の小さな利益を追求することが、いかにちっぽけなことなのか、ということだ。

ここから先は批判や賛否があると分かったうえで書く。

周りの人たちは、僕を「信頼」してくれているからこそ、様々なものを提供してくれてきた。それは時に、衣食住に必要なものであったり、トレーニング方法だったり、はたまた「人としての考え方」であったり。内容は様々だが、彼らは僕に「信頼」を通して多くのものを見せてくれた。そのおかげで僕が獲得できたことはきっとたくさんある。

そんなかけがえのないものを、僕だけの利益につながるようなもののために、使うなんてことは到底できない。

周りの人のおかげで積み上げることが出来た知識や財産を、自分のためだけに利用しお金に変換しようと考える。僕はこの考え方が好きではない。

僕は決して、お金を稼ぐことが悪いことだとは言っていない。スポーツでもなんでも、お金を生み出すことはとっても重要なことだ。僕だって、自ら稼がなければいけないときは来る。それに、価値があるものにはそれ相応のお金というものは支払われるべきだ。

僕が言いたいのは、そういった行動を起こす前に、理解していなければいけないことがある、ということ。

今、ネットの普及により、このnoteを含め様々な場所で有料コンテンツを個人レベルで作り出せるようになった。すべての人にとって有料コンテンツが身近なものになったからこそ、人からお金を受け取るということがどれほど特別なことなのかを、こういった方々との出会いから深く考えさせられた。

だからこそ僕は、軽い気持ちで有料コンテンツを出そうとは思わない。現状ではこのように考えている。この先もしかしたら僕がそういったものを出すときが来るかもしれないが、その時はきっと、はっきりと自分が納得できる目的を見つけることが出来たときだと思う。

話が少し脱線してしまった。ここで軌道修正する。

様々な人から数えきれないほど受けてきたこの「恩」を、ぼくはいったいどのように受け継ぎ、どのように他者に伝えていくことが出来るのか。

僕にとって、感謝を表現できる場所、人を助けられる場所はどこなのか。

いま、一番それを実現しやすいのは「情報発信」だと考えている。

質問に真摯に答えること。

上達するための方法をシェアすること。

海外の様子を含め、自らの稀有な経験を伝えること。

そして、アイスホッケーが上手くなりたい、心から楽しみたいと願う人々を少しでも多く助けること。

それこそが今僕にできることであり、すべきことだ。

今までは、「成長過程を届ける」を目的に情報発信をしてきたが、ここに「恩返し」という新たなテーマも追加しようと思う。

オンライン上だけではない。もちろんそれは、現実世界でも一緒だ。僕は、海外にいるときに周りの人に助けられまくっている。先ほど話をした方々、ルームメイトやチームメイト、学校の先生や友達など、こちらも数えだしたらきりがない。だからこそ僕はオフシーズンに日本にいる間、少しでも多くの人を助けるべきだと思っている。アメリカにいるときに周りの人が”当たり前”に僕にやってくれたように。リンクで出会った人、駅であった人、街ですれちがった人、友達、家族。そこに助けを必要としている人がいるのなら、僕は必ず手を差し伸べる。

なぜなら、それだけの恩を今までたくさん受けてきたから。

なぜなら、それは特別なことではなく当たり前のことだから。

この感謝の思いを僕だけにとどめるのではなく、みんなで共有する。

頼りっぱなし、助けられっぱなしになってしまう環境があってもよい。
大切なのは、人を助ける環境、人に頼られる環境を自分も持つことだ。

そうして世界が回っていく。

僕はこのように考えている。

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長々と書いてきましたが、僕は元気にやっております!皆様もどうかお元気でいてください。全員で力を合わせて、この危機を乗り越えましょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

三浦優希

*帰国までの流れをまとめた前回のnoteはこちら。


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