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確率思考の戦略論_【市場構造理解】NBDモデル解説(NBDモデルができるExcel付き)


本記事では、「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」で書かれた
NBDモデルについて解説していきます。


本記事で得られること
確率思考の戦略論で一番初めに出てくる数式であるNBDモデルについて、概要と使い方を理解できるようになります。


対象にしている読者
・確率思考の戦略論はすでに読んだけど、NBDモデルの活用方法がいまいちわからないと感じている人
・NBDモデルを実際に使ってみたいと考えている人


数式の理解ではなく、
「どのように使うか」にフォーカスした内容となりますので、難しい内容は飛ばしてなるべく簡潔に書いております。
数式を深く理解されたい場合は、同書籍の巻末解説をお読みください。



はじめに


同書籍では、ビジネスで売上を伸ばしていくには
「認知」、「配荷」、「プレファレンス」の3つを高めていくしかないと言っています。


そのうち、「認知」と「配荷」については制限をかけるもので、
最大ポテンシャルを増やすには「プレファレンス」を高める必要があるといいます。


・認知:(制限) 商品のことを知らないと買えない。
・配荷:(制限) 手の届く範囲に商品がないと買えない。
・プレファレンス:(ポテンシャル) 商品を購入したいと思う意志。


したがって、ビジネスでは自社商品に関する制限を減らし
最大ポテンシャルを増やすことを、限られた予算の中で効率的に行なっていくことになります。


そして、"効率的”に伸ばそうと思うと、自社の状況を正確に知った上で、
優先順位をつけながら意思決定をする必要があります。


この”正確”に知ることこそが、マーケターにとっては最も重要でスタートラインに立つことでもあります。

本記事でご紹介するNBDモデルも、まさに自社の状況を”正確"に知る一つのツールとなります。


NBDモデルとは


洗剤、インスタントコーヒー、自動車、シャンプー、紙おむつなど異なるカテゴリーであっても消費者の購買行動の原理は同じである。
ということを数字で表しているものがNBDモデルです。


そしてその消費者の購買行動の原理とは
「プレファレンス」であるといいます。


プレファレンスとは相対的な好感度という意味ですが、
「あるカテゴリーからAという商品をどれくらいの確率で選ばれるか」といった解釈です。


例えば私は、ビールを買いに行くと、いろんな商品がある中から
一番搾りを買う時もあればスーパードライを買う時もあります。
この一番搾りやスーパードライを選択して購入する行動こそが
プレファレンスの結果であると言えます。


NBDモデルは以下の数式で表されます。

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簡単に意味だけご紹介します。

P:自社ブランドが選ばれる確率(プレファレンス)
r:r回出る確率
M:自社ブランドを全ての消費者が選択した述べ回数を、消費者の頭数で割ったもの
K:消費者の購入確率の分布形状
Γ:ガンマ関数(分布ではありません)


上記を見ると数式の中で出てくる、変数「M」と「K」によってプレファレンスが決まっていることがわかります。


しかし「K」は購入の分布形状を表しているもので、プレファレンスによって結果的に決まります。


従ってNBDモデルの中で、「M」のみが我々がコントロールできるもので、
これこそが「プレファレンス」の正体であると言えます。



NBDモデルの活用方法


NBDモデルは、調査会社などが保有しているパネルデータを補正するのに使用します。


パネルデータは、消費者の購買行動を知るのに有用ですが、記録の漏れがあるため、漏れを埋めるのにモデルが使えます。


パネルデータを補正することで、現実に近いデータを知ることができるので、冒頭述べた自社の状況を”正確"に知ることができている状態と言えます。


このデータを使って、例えば新商品を作る際の、消費者の購買行動のベンチマークにしたり、
同様の分析を他社の商品も見て、どこに課題があるか、どこに伸び代があるかなどを確認するのに使うことができます。


(パネルデータなどの購買行動についての信頼できるデータがない場合には、ガンマ・ポアソン・リーセンシーモデルという、NBDモデルを応用した数式を使うことで、簡単なアンケートデータから「M」を算出することができます。それについては別の機会に解説しようと思います。)



実際にNBDモデルを動かしてみる


今回は実際にNBDモデルを動かすにあたり、
わかりやすいように、同書籍に記載のあるパネルデータを参照します。

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同書籍p281のサンプルデータを引用し作成

数字が少し異なる箇所がありますが、見えない桁が少しずれているものと考えられます。


簡単にデータの解説をします。

補正前
A:オープンデータで簡単に調べることができます。
B,C,D,E:パネルデータから算出します。
G:パネルデータから算出された売上です。
H:正確な売上高に対する、Gの比率(記録の漏れを意味します)

補正後
A:総世帯数は固定です。
B,C:NBDモデルによって算出します。
D,E:パネルデータと現実が同じと仮定しています。
G,H:売上の正確な数字はわかっていると仮定しています。


上記の補正前データを、補正する方法ですが、
実は補正前と補正後の共通の変数となる「K」を算出し、NBDモデルに当てはめるだけです。
(変数「M」は、30%の記入漏れを埋めるために、0.4125 / 0.7をするだけなので、補正後の値が0.5893であることがパネルデータと売上実績からわかります)


実際に補正を行ってみます。


ここに、購入回数別(P0~P10,P11以上)にNBDモデルの関数式を入れたエクセルを作りました。

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既にわかっているのは「M」の値と、浸透率15%というパネルデータの情報から、浸透していない率(=1度も購入していない人)が85%であることです。
人数は総世帯数 * 85%をした数字になっています。


この情報を元に「K」を算出してみます。

情報①
M:0.4125
P0:85%

「K」はNBDモデルの式に情報①をいれても直接解くことはできません。
Excelのソルバーを使って「K」を算出します。


まずは適当な数字を「K」にインプットします。
ソルバーの可変変数にKを入れる際に、適当な数字が入っていないとうまく実行できないためです。


各回数ごとにNBDモデルの関数を入れているため、「K」=1をいれてみると下記図のようになります。

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次にソルバーでNBDモデルの式が、情報①に満たすように「K」を算出してみます。
目的はP0(G9セル)が85%になるように「K」の最適解を見つけることです。したがって、下記図のようにソルバーの設定を行います。

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そうすると「K」の解が見つかります。

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あとは、算出した「K」と補正後の「M」を使って、各回数別のNBDモデルに当てはめます。

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以上の手順でパネルデータの補正が完了です。



NBDモデルの面白さは、これを使って色々みてみることにあります。
使うことで多くの手がかりになることが見えてくるはずです。

例えば、モデルから「業界平均に比べ自社ブランドはリピート率がかなり低い」ということがわかれば、リピート率を高める戦略を打ち立てればいいですし、

売上目標を設定し、モデルを使うことで、目標達成時になっているであろう消費者行動の構造を可視化することもできます。

それらの情報をみながら効率的な打ち手を探すのは非常に楽しい作業です。


今回分析に使用したExcelダウンロードできるグループurlを下記に貼り付けますので、是非ご自身の手で試してみてください。

スクリーンショット 2020-05-08 1.13.31

https://www.facebook.com/groups/datadriven.college/
こちらの無料グループからダウンロードいただけます。ご申請後、添付のexcelをダウンロードしてください。

<追記2022/02/10>事業のコミットを理由にdatadriven-collegeについては閉じることになりましたので、今後は下記よりダウンロードいただけます。

※本記事で提供している情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。万一この情報に基づいて被ったいかなる損害についても、株式会社Logpose Technologies及び筆者は一切責任を負いません。


本記事は同書籍を読んだことがある人を対象としているため、
詳細な説明を省いております。
あくまで書籍理解の補助として、ご参考になりましたら幸いです。


【(DDカレッジ)The Data-Driven College】
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そこからディスカッションを通して、解決を一緒に目指していく場にしたいと思っています。

<追記2022/02/10>
現在、Logpose Technologiesでは「AI」「最適化」「物流マーケットプレイス」をキーワードに物流DXに挑戦しています!
難易度の高い挑戦ですが、社会的意義があるとてもやりがいのある楽しい仕事です。今回ご紹介したNBDmodel含めて、新しいことはどんどん挑戦できる環境を用意していますので、興味を持っていただけた方は、まずは一度お話ししましょう!


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