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AI × 物流 × SaaS | 物流スタートアップのこれまでとこれからの挑戦

皆さん、こんにちは。「世界中の荷物情報を整理し、流通を最適化する」を実現したいLogpose Technologies(ログポーステクノロジーズ)の羽室です。

2021年から物流業界で事業をはじめ、もうすぐ3年が経とうとしています。この期間で得た経験、良かった点、失敗した点、そして今後の10年間をどのように見据えているのか、これからnoteに少しずつまとめていきたいと思います。このブログを通して、ログポースという会社を知ってもらい、少しでも読んでいただく方の学びになるよう心がけたいと考えています。

第1回は、下記について書いていきます。



起業の発端:スタートアップでN=1の課題解決は正しいのか?


ログポースは1社の悩み「N=1」を"とりあえず”取り組んだことから物流業界での事業が始まりました。

起業の意思自体はあったのですが、何をしようか迷っていた時に、さまざまな業界の方とお話をする中で、ピンときたもので周りの人を巻き込んで手弁当でプロダクト開発を始めてみたところまでを"とりあえず"でやってみました。

振り返ると、もう少し多くの意見を聞き、調査してから着手をしてもよかったかと思うこともありますが、話を聞いてとりあえずプロダクトを作り始めたあの時の判断がなければ、この分野での起業はなかったかもしれないので、良い実行力だなと思うことが度々あります。

プロダクト開発してみようと思った時の当時の情報をまとめると、下記のような感じです。

■前提条件:
-自分(事業開発担当)と事業パートナー(データサイエンティスト)で何かはじめようかと思っている
-しかし、それぞれが本業をもっており、何かをはじめるなら社会的なインパクトが大きく、意義があることが見つかった時
-事業はテクノロジーを中心としたものでやりたい

■対象にしたN=1顧客の情報:
-地方中堅起業
-運送から倉庫運営までの物流トータルソリューションを提供
-運送領域では、静岡発着の幹線輸送と地場に根ざした共同配送を強みにしている
-勉強好きの経営者がいて、参考にしたい企業は多そう。また知名度もある

■課題把握の時に聞いた情報:
・何が課題?と聞いた時に一番初めにできたのが「配車の自動化」
・配車にはすごく時間がかかっている
・特に時間がかかっているのが共同配送事業の配車である
・自動化するシステムはないのか? > いくつもあるが、複数見たものの導入に至らず
・なぜ導入できないのか?
 -コスト
 -日々の現場では使えない > なぜ? > データが揃いきらない。日々変わる状況の中で自動化システムは相性がよくない
・どれくらい強い課題なのか?
 -毎日2~3時間、多い時は1日中配車業務に費やしている
 -できる人が限られるため、属人化が進んでいる
 -効率的な計画は利益をもたらす

■話を聞いて感じたこと:
・直感的にやってみたいと思った
・データサイエンスとの相性が良さそう
・最適化問題で割とすぐに作れるのではないか?
・プロダクトで解決する課題としては十分な費用対効果を出せそう


本来事業化を考えると、ここからさらに色んな調査を行い、検証を経てプロダクト開発にいくのが順当ですが、そんなに難しい課題に思えなかった(これは大きな誤り)のと、直感的にこの仕事面白くなるかもと思って、とりあえずやってみるかーと、特に費用もいただかずに安請負をしてみました。

結果的には着手してみたものの、知れば知るほど難易度がでてきて、これはすんなりいかないなぁ、、という感じのプロダクト開発になりました。(課題があってもできていないことには大抵理由がある)

とはいえ、とりあえずやってみると言った手前なんとかアウトプットは出そうと、この分野で一番技術と知識を持ってそうな自分の父(当時データサイエンス領域の大学教授)を頼ることにしました。

その結果顧客に見せれる程度のプロダクトが割と早くできあがったので、早速見せたところ反応が非常によく感動していたことをよく覚えています。(しかし実務で使えるレベルでは全くない)


この時2回目の意思決定のタイミングが訪れます。


とりあえずできあがったプロダクトですが、実務で使えるレベルには至っていない。ただ気軽に受けた話としてはここまでのアウトプットで「一旦僕らが作れるのはこれくらいでした」と伝えるのでも十分なはずです。

しかし、少し携わったことでこの領域の魅力と、このプロダクトを仕上げたいと思う気持ちが芽生え、もう少し時間をかけてやってみるかどうかの判断に迫られます。

もう少し時間をかけるからには、中途半端にやり続けることはしたくなかったので、この先に何があるのか?本当にこのプロダクトを仕上げたら自分達がやりたいような事業になるのか?

この時初めて、業界のレポートを読み漁り、課題をたくさん聞いて回りました。


■当時を振り返ってN=1のヒアリングから事業を始めることは良かったか?
結論としては、良かったと思っています。ただし下記ポイントが大事であったと思います。
 -大きな市場が見込まれた領域のN=1か?
 -その会社は業界で先進的な取り組みをしているか?
 -その会社の課題に再現性があるか?

ログポースの場合、前職のつながりで、ヒアリング先が元々業界の中でも素晴らしい会社であることを知っていました。だからこそ、この企業が持つ課題を解決できれば業界でそれなりにインパクトが出せるのではないかと仮説を持っていました。
また、N=1で進めるメリットとして、初期プロダクトに迷いが少なくなるということもあると思います。ただし、その会社特有の課題である場合も当然出てくるため、注意を払いながら聞いていました。



成長戦略:課題の解像度を高め、未来の理想像を想像し、差分を埋める


本格的に事業化を進める上で、現状の正しい把握とどういう理想を描くか、そしてそのために何を作るかを考えることがスタート地点です。ログポースは、業界を深く調べる前に、キッカケのところで記載したように入口となる簡単なプロダクトを作ってしまっていたので、どうしてもそこに引っ張られる形で考えを固めていきました。

ただ、こればかりは運が良かったのですが、N=1で話した運送会社さんの取り組みは先進的で業界の課題と解決に直結しているように思いました。

その時の考えをまとめると下記のような流れです。

前提:運送会社が日々の配車を効率的に作るための最適化アルゴリズムがある。強みは圧倒的な速度とあらゆる条件を考慮した配車ができること。

今の物流(運送)業界の一番大きな課題は何か?

ドライバー不足、ドライバー賃金が低い、価格競争になっており赤字企業も多い、多重下請け構造、運行効率の低さ、積載効率の低さ、規格化が進んでおらず非効率、2024年で労働規制が入り益々人手不足、・・・

物流は構造的な課題があり、1つの課題を解決したら業界が良くなるというシンプルなものではなさそう。

センターピンを1つ捉えて、そこから領域を広げて全体の解決に持っていこう。どこがセンターピンになりそうか?

ドライバー不足で今後も人手が足りないと言われる中で、トラックの平均積載率は39%(トラックの6割は空気を運んでいる)。なぜ?

多頻度配送(ジャストインタイム物流) + 小ロット(1つあたりの荷物が小さくなっている)。細かくものを届ける日本の物流において、指定時間などの制約が多い中で、非効率な状態はわかっていても運ばざるを得ない状況になっている。改善する方法は?

1社の荷物では効率化に限界がある。ただし、90年台の規制緩和で物流事業者が1.5倍になり、価格競争と荷主優位の商慣習が出来あがっており、中々改善提案も通りづらい。

共同配送という仕組みがある。複数の荷主の荷物をまとめて運ぶ手法。配送するエリアの荷物量を高めてそれぞれの条件にマッチすればより効率的に運べる。ただし条件作り、相手探し、オペレーションに難しさがある。

共同配送事業者もいる。彼らの課題は?条件作りや相手探しで営業力・調整力が必要。オペレーションでも配車などの複雑な部分が残っている。(この辺りがN=1対象企業の課題とマッチ)

共同配送事業者のオペレーション業務を自動化するシステムを作り、日々の業務をシステムを通して行っていただくことで、業務効率化の価値提供と運送事業者のデータの可視化を両方実現可能になる。さらに多くの運送事業者の配送情報を把握しているので、そこと荷物を結びつけることで、より効率的な物流を実現し、多頻度・小ロット・制約条件を考慮しても効率的に運べるのではないか。

共同配送の考え方をベースにして、効率的な物流を実現するプラットフォーマーを目指すと業界に良い影響を与えられそう。

より現場レベルでの細かな調査なども色々行いましたが、上記のように考え、これは面白そうで、かつ大きな事業になりそうだ。と思いこの領域で起業を決心しました。

この時に準備した絵は下記の3つです。

課題
事業ゴールまでの山の登り方
ビジネスモデル


想定していたよりも様々な難易度があり、身を持って既存産業のDXを基盤とした事業作りの難しさを感じていますが、今のところ当初描いた通りの計画を歩めています。

良かった点:大きな絵を描く事。そして社会的意義が強い事。これにより創業初期では中々巻き込めないような人材を巻き込めた事。やはり仕事をする上で自分達の事業の「やる意義」はとても重要だと感じました。また、最初のタイミングで業界のあらゆる情報に触れ解像度を高めたことでぶれない指針ができたこともとても良かったと感じています。(圧倒的に精通した領域で事業を行う場合は必要ないことですが、自分の場合新卒で入ったコンサル会社で少し業界を経験したものの、まだまだ知らないことだらけでした)

改善点:強いビジネスパートナーを探してから開始した方が良かった。当初テックファーストで考えていたこともあり、開発チームの組成ばかりを考えていました。ただし、既存産業のDXとここまで大きな事業を構想する場合、立ち上げりのスピードに大きく影響を与えるため必ず強いビジネスパートナーを最初に見つけておくべきでした。これは事業を始めた後、単純に忙しさが全て自分に乗っかってくるのと、モチベーションにも関わりました。ただし、その影響で自分の守備範囲が広くなりすぎたことで全ての事象を把握しながら進められたため圧倒的な知識がつき、それは今の仕事にすごく活きています。


10年先の物流とその時のログポースのポジション

いよいよ、物流業界で強い変化が起こる2024年です。
これまでの3年弱で得られた実績と足下の市場変化にどのような挑戦を行っていくのか。そして、10年先、どこを目指しているかについて書いて終えようと思います。

これまでの3年弱で、会社の基盤ができたと考えています。
-当社の最も強みと言えるAI最適化エンジンLOGの開発
-心強い創業チーム
-LOGを使った卸・運送会社向けSaaSの提供
-SaaSの普及により、運送ネットワークの確立
(顧客に毎日の業務で欠かさず使われ、「本当に業務が効率化されて今までで最高のシステム」と言っていただけた時は本当に嬉しかった。)


これらの基盤を活かし、2024年は最適な共同配送ネットワークの構築とLOGの更なる普及を目指します。「共同配送ならLOG」と市場に認知されることを目標に、2024年の変化を捉え、さらなる飛躍を遂げる年としたいと考えています。

10年後を見据えると、ログポースが目指すのは、ミッションである「世界中の荷物情報を整理し、流通を最適化する」を実現するために、社会インフラとしての役割を持つ物流業界で効率化を支える基盤になることです。

自動化・効率化が進む中で、物流においてはドローン配送や自動トラックなどハードウェアの自動化が進むことになると思います。

その場合でも、自動ハードウェアに対して、荷物をどこからどこへ運ぶかの指示を出す必要はあるはずで、その指示はAIが出していると想像します。

そして、そのAIはログポースが開発したものでありたい。そう思っています。

そのためには、下記の2つが必要になると考えています。
①あらゆる荷物情報が集約されるデータプラットフォームを作る必要がある
②そのデータから、最適な配送手段を決定し、物が届くまでリアルタイムで管理できるAIを作る必要がある

このワクワクする将来を想像しながら、圧倒的な技術力ですごいモノを作る開発チームと、既存産業を泥臭く変えていくビジネスチームを融合させ理想と現状のギャップを埋めていくことをしていきたいと思っています。

将来、荷物を注文したとき、瞬時にこのAIがモノの流れを決めます。





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