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綾子と達也のはなし

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綾子と達也という二人の男女の物語をベースに毎回ひとつの食べ物をめぐって展開する連作短編小説を書いていきます。
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綾子と達也のはなし④|泣き顔にケンタッキー

綾子と達也のはなし④|泣き顔にケンタッキー

「ただいまー」

達也のほっとした声が消え入ってしまいそうに、玄関の扉を開けると部屋は真っ暗だった。この日二時間近く残業をした達也だったが、先の連絡によれば、綾子はすでに帰宅しているはずだった。廊下の明かりをつける。視線を下にやると綾子が今朝履いていたローヒールがそこにあった。突き当たりに目を凝せば、キッチンとリビングを隔てるドアの磨りガラスから色をもった光がちらちら動いているのが見てとれた。

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綾子と達也のはなし①|恋は焼きいもから

綾子と達也のはなし①|恋は焼きいもから

「綾子(あやこ)さんって、いつもおいしそうな食べ方しますよね」

向かいに座っている達也(たつや)が、今まさに焼きいものひと口目を頬張ろうとする綾子をじっと見つめ、そう言った。すでに勢いがついた綾子の口元はブレーキが効かず、返答するよりも先に、今にも蜜が溢れ出しそうな焼きいもにかぶりついた。とろけるような果肉を口いっぱいに味わいながら「そうかなあ?」と、もごもご答える。一方頭の中は「甘い、濃ゆい、

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