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パンを焼いていて思い出した、お隣のおじさんのこと、これからの暮らしのこと。

4月の料理リレーがきっかけで、家でパンを焼くようになりました。
考えてみたら、ここ2ヶ月ほどパン屋さんに行ってない!
まあ、巣ごもり中で外出しなかったというのもありますが、パンを買おう、という気持ちにならなかったのが、自分でも驚き。

ヘッドの写真は3日前のドライオレンジとカカオニブ入りのねじねじパン。
昨日はディルのパン。
2月に行った栃木県のグリーンファーム水口さんの地粉が大活躍です。

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パンを焼くようになって、ふと思い出したのが、子供の頃のこと。

4歳から20代まで、大阪市内に住んでいました。
お隣さんは、お父さん、お母さんに子供5人の大家族。3人のお姉さんと妹に挟まれた長男くんが私の同級生でした。
妹さんは私の妹と同級生。
そういうこともあり、よく一緒に遊んでいました。

外で遊ぶこともあれば、家の中で遊ぶことありましたが、私は彼の家に行くのが楽しみでした。
というのも、お家が忍者屋敷みたいだったから(笑)
増築したせいだと思うのですが、道路に面した前の部分と後ろの部分が半階ずつずれていて、家の中に階段がたくさん!
ここ2階だよね?と思っていたら3階だったりとか。結局、どういう構造になっているのかわからずじまい。
家中使ってかくれんぼしたり……押入れの中に入って布団かぶったりして。
いやー、今、考えると、なんて子供たちでしょうね。
おおらかな時代でした。

そのお隣さん、不思議だったのは、たいてい、おじさんが家にいたこと。
自営業だったから当然なのですが、子供って、自分ちがスタンダードだと思いがちなんですよね。
うちはサラリーマンの父と専業主婦の母という家庭だったので、学校終わって遊びに行くと、おじさんがいる、ということにびっくりし、しかも台所で料理してる、ということに更にびっくりし。

料理がお得意で、なんでも手作り、大量に手作り。
コロッケや餃子も、お店みたいに、大きなバットにたくさん作ってたなあ。
遊びに行くと、おやつに出してくれたのが、手作りのパン。
こぶしぐらいの大きさのバターロールを100個ぐらいいっぺんに作って、どんどん次から次へと焼いて、食べきれなかったものは冷凍して。
凍ったら、大きなビニール袋に入れてストックし、食べる時にオーブンで焼く、という感じ。

「ゆきちゃんは何がいい?」と聞かれて、「チョコレート!」と答えると、おじさんはごそごそと大きなビニール袋から幾つかのカチンコチンのパンを取り出して、焼いてくれます。

オーブンからパンが焼ける香りがしてきて、わくわくするのです。
近所のパン屋さんのふわふわのバターロールとも、大手メーカーの袋入りのテーブルロールとも違って、もっとしっかりした感じで、独特の味だったなあ。
今、考えると、もしかしたら、自家培養の天然酵母だったのかもしれない。

焼きたての熱々を手渡されて、あちちち、と割ったら、何も入ってなかった、なんてこともありましたが(笑)
板チョコがとろーんと出てきた時はうれしくて。

魚は市場に行ってトロ箱で買ってきて、家でさばいて。
お肉も大量に買ってきて、家で料理して。
おじさんは体が大きくて、腕も太くて、それはそれは豪快にお料理を作っていました。

当時は「買ってきたものが上等」みたいな空気があったように思います。
私にも覚えがあります。
ヤマハの音楽教室に通っていたのだけれど、みんなはヤマハの「純正」ビニールバッグなのに、私は母が刺繍した手作りバッグ。
デニム地に、ドレスを着たシンデレラとガラスの靴のビーズ刺繍が施されていました。裏側には12時を指した時計の刺繍が。
他のお母さんたちに「ゆきこちゃん、いいわねえ」と言われても、ちっともうれしくない。
うちはバッグを買うお金もないのか、としょんぼりしていました。
時間と手間がかかった愛情たっぷりの手作りバッグの価値がわからない、「あかん」子供でした。

だから、お隣さんのことも、家族が多いから手作りしないと大変なのかな、なんて子供心に感じていたのですが、実際はどうであれ、今思うと、なんて豊かな暮らしだったんだろうと思います。
家族が食べるものを家長自らが手作りする。
素敵なことだなって、大人になった今の私は感じます。

今回の自粛・巣ごもり期間中に、これまで外食ばかりだったけれど自炊を始めたとか、食べる専門だったご主人が料理を始めた、とかいう話をよく見聞きします。
我が家も、パン焼きが日常になったり、夫がカレーを作ったり、とちょっとした変化がありました。

新型コロナウイルスに罹患した方や、飲食店やお店の皆さんのことを思うと、どうしてもマイナスの部分が大きくクローズアップされてしまうのだけれど、一生活人としては「本当に必要なもの」「真の豊かさ」ってなんだろう、と立ち止まって考える、大きなきっかけになったと感じています。




















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