『手作りのアジール』読書感想

案の定、内田樹臭とべてる臭がすごい。

いや、けなしてはいない。ただどっちもすごくなじみ深いからだ。

新自由主義って言葉をこのnoteで100回は言った。この言葉はジェンダーとか家父長制とかに似ている。社会学をかじった人間ならばどっちもよく知ってて学術用語だし、自分と似たようなタイプの周囲のひとたちはみんな使ってるから「知らないひとなんかいるの??」みたいな勢いなんだが、社会学かじったことがないひとはだいたい知らない。新自由主義は政治哲学の学術用語だから、政治哲学をかじったことがあるひとしかわからなかった。岸田首相が自民党総裁選マニフェストで【新自由主義からの転換】と言ったので、最近ようやく知っているひとがすこし増えてきたかんじだ。

この書籍は、新自由主義社会でなんとか日々を暮らすために、アジールを作って、そこへ逃避するための本。

アジールっていうのは、社会システムから隔絶された聖域のこと。完全に逃避しちゃうと全然お金稼げないので、逃避はするけどなんとか試行錯誤はして新自由主義社会とはコミットしとくよ、というかんじの本です。

では、新自由主義とはなんぞや、という話なんですが、これも私がnoteで30回くらいはした気がする。ただの金儲け主義、というのは浅い。世界中を焼き尽くし、もう終わり、と多くの政治哲学者が書籍を出したのちに周回遅れで日本にどわっと入って来た経済政策だ。日本はその前から細々とやってたんだけど、家父長制が強固であんまり酷くならなかった。エマニュエル・トッドもそのことを指摘している。

この【グローバル化】というのが、グローバリズムで新自由主義と同じ意味ね。新自由主義のことをちょっと前はグローバリズムと呼んだので、グローバリズムという呼び方でも書籍が膨大に出版されている。

新自由主義は、経済侵略と言われるくらいに貧富の格差を広げて国境を溶かし、安い商品と安い労働移民をたくさん入れて社会が混乱するんだ。他にも、下層になったひとたちが「資本主義ゆえに」全然生きられない。グローバルスタンダードで文化も伝統も盛大に壊す。

ここまで聞いただけで、東インド会社を思い出すひともいるはずだ。アレです。インドの植民地主義とだいたい同じかんじです。だから経済侵略とか経済植民地主義とか言われるのね。

私たちの先祖はお金なんか無くとも山や里で生きる知恵を持ってた。現代人は資本主義ゆえにその知恵を失って、かつ、山も川も誰かの所有物だからそこでものをとったら窃盗だし犯罪だ。その時代に戻ろうと思っても戻れない。

かつて、ネイティブアメリカンは、「土地は先祖から子孫に受け継がれていくもの」だから、所有という概念が無かった。それを白人が契約ですべて奪ってしまった。それがアメリカ大陸だし、それが植民地主義だし、それが資本主義のおおもとの考え方だ。新自由主義は先鋭化した資本主義のことで、だから植民地主義に戻ってしまうの。水も水道事業民営化で外資に売り払い、種も種苗法廃止で外資に売り払い、自由貿易という名で大量に移民が入ってきて、その民族が代々、その土地で生きるための社会的共通資本をお金に換算して売り払って、生きることができなくする。

それが新自由主義だ。だから経済侵略とまでキツイ言葉で揶揄されるんですよ。

それだけではなく、新自由主義はひとの考え方も変え、ジェンダーも変えていく。数字を出し、競争に勝ち抜いてランキングで上位に入らないとその人は生きる資格が無い。それが新自由主義の洗脳だ。家父長制という社会システムによる文化的洗脳がジェンダーというものなので、それが新自由主義に置き換わったら、また新たな洗脳があるだけだ。

この書籍は、「山に還ろう」がコンセプトだ。その山は借りるか買わないとあかんだろう。なんとか山に還って、新自由主義から逃げて、民族としての生き方と、ジェンダーと、精神と、豊穣な伝統文化と、まっとうな学問と、生きる力を取り戻さねば。そしてなんとか新自由主義社会をサバイバルせねば。

白人にすべてを奪われたネイティブアメリカンが、かつての生き方を取り戻すみたいに。

という本だ。

日本人は第二次世界大戦でアメリカに負けた後、実質的に植民地主義でありとあらゆるプロパガンダで収奪されてるんだけど、その多くの被害を被ってたのがおおむね沖縄などといった国内植民地だったから、すごいぼうっとして生きてたのよねー。だから新自由主義の侵略っぽさにも全然気が付かなかったの。沖縄県民に失礼だよ。自分が全然新自由主義社会で生きられず、モノ扱いされて過当競争にさらされてストレスで鬱とかになってようやく、おかしい、と気が付きはじめたひとが増えてきた、ということだ。遅すぎて腹が立つんですけど。。。植民地主義で痛い思いをしたひとってのは昔からマイノリティでいて、大衆にも叩かれまくってるし、ほんといいことないです。私もだ。私もそのマイノリティだ。

というわけで新自由主義で日本は今から収奪されまくりです。昨日からRCEPだしね。私はすでに里に還ってますが、なんとなく、「なるようになれ」的な気分です。日本のかすかな希望は、あくまでも新自由主義は周回遅れすぎて他国はとっくに酷い目に遭ってデモしまくって新自由主義政権転覆させて右派政権立たせてて、だから、あっちの都合でわりとなしくずしに終わってくれるかも、というところ。

無理かそんなの。あー井戸が欲しい。


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