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【仮想レジアカ】チューバ・セルパンを知ろう(歴史編)no.2

この記事は「投げ銭」スタイルの有料ノートです。実質無料で全文お読みいただけます。仮想レジアカは、2020年6月に開始したオンライン上の創作実践アカデミーです。詳細はこちらの記事(文字をクリック)よりご覧ください。この記事では、仮想レジアカでセルパン・チューバを担当している橋本晋哉さんに楽器について教えてもらいました。牛丼一杯分で、シーンをサポートしてみませんか(あなたのサポートが、シーンを豊かにします)。チューバ・セルパンを知ろう(歴史編)no.1はこちらから。

ワーグナーによるチューバの改革

橋本:前回お話したように、1830年から1860年辺りっていうのは、楽器が段階的に変化していったというよりかは、色んなものが雑多に共存していた時期なんですね。ただ楽器は色々あったけれど、バスの音域というのは、ほぼ同じだったんです。下は、低くてもヘ音記号五線下のシの♭くらいまで。それを変えたのが、ワーグナーだったんです。

わたなべ:ワーグナーチューバというやつですか?


橋本:そうですね、ワーグナーチューバは元のチューバより高い音域を担当するために考案されました。それに加えて、従来のチューバを「バス・チューバ」と呼んで、その4度下のC、あるいは5度下のB♭が基音となる、より低い音域のチューバ、「コントラバス・チューバ」と組み合わせることで、一つの大きな「チューバ属」を考案して運用したんですね。チューバだけでなく、トランペットやトロンボーンなど、オーケストラの管楽器はワーグナーによって音域の拡張、グループ化が試みられました(余談ですが、コントラバス・チューバの更に下の音域を担当する、スブ・コントラバス・チューバも考案された様ですが、大きすぎて実用化には至りませんでした)。

この後通常のチューバパートは、このコントラバス・チューバに相当することが、世紀を跨いで標準化されていきます。

わたなべ:オフィクレイドやセルパンは、徐々に押しやられていったと。

橋本:チューバのほうが音量が大きいですしね。完全にチューバに移ってくるのは、20世紀の頭くらいです。そのくらいになると、多くの作曲家が指定はしないにせよ、コントラバス・チューバを想定して書いています。つまり、この19世紀の楽器の変化の中で低音の金管楽器の担当音域は一オクターブ下がって、バスからコントラバスへと移行していくんですね。

フレンチチューバ

橋本:作曲家の方に注意して頂きたいのは、フランスでのチューバの扱いなんです。ここだけは少し流れが違います。

ワーグナーの章でお話したように、彼は楽器を体系化したわけなんですね。バス音域の楽器の下に、更にコントラバス音域の楽器を別に用いた。でもフランスはちょっと違っていて、バス音域の楽器にバルブを付けることで、音域を拡張させようとしたんです。今で言う「ユーフォニアムみたいなもので、かつ音域を拡張したものを作ろう」と言って、フランスだけは「フレンチチューバ」を使ってたんです。

わたなべ:フレンチチューバって聞いたことあるんですが、どういうものでしたっけ?

橋本:フレンチチューバは、現代で吹かれているF管チューバの5度上のC管の楽器です。音域で言うと、トロンボーン、テナートロンボーンの長二度上になります。

わたなべ:チューバという名前がついている割に高い音域なんですね。

橋本:そうなんです。音域だけじゃなくて、響きがね、全然違うんです。ユーフォニウムみたいな感じで、そのまま音が低いだけなので、だいぶ軽めな音色ですよね。それで、フランスでは「フレンチチューバ」を1950年くらいまで使っていました。

わたなべ:結構最近まで。

橋本:つまりドビュッシーやラベル、プーランクやメシアンあたりまで、フランスの作曲家たちが想定していたチューバパートっていうのは、今我々が聴くものとは音色、ボリュームなど、だいぶ異なるものだったのではないか、ということなんです。

わたなべ:なるほど!

橋本:フランス近代のオーケストラって少し変わっているでしょ?ファゴット(正確にはバッソンという楽器ですが、長くなるので別の機会に)が四本あったり。要は、低音のサウンドの作り方って言うのが、他の文化圏と随分と違う、ということなんです。そして、それが今のフランス界隈の現代音楽にもどこか影響しているんじゃないかって思ったりもするんですね。

おまけ:チューバ・セルパンに作品を書く上で、聞いておきたいこと

Q. 楽器本来の良さを生かすためにはどうしたらいい?
Q. エクステンデッド・テクニック(特殊奏法)を使う意味?
Q. どうして歴史を知ることが創作に繋がる? など等。



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音楽動画作りの基礎の「き」。
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仮想レジアカ対談ー黒田鈴尊(尺八) ✖ 今井貴子(フルート)
仮想音楽家レジデンス・アカデミー(公募記事)
前回の仮想音楽家レジデンスの報告・作品紹介
ギターを知ろう(エレキ編)
チューバ・セルパンを知ろう(歴史編)no.1

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