見出し画像

仮想レジアカ対談ー北嶋愛季(チェロ)×橋本晋哉(チューバ)

※この記事は「投げ銭」スタイルの有料ノートです。実質無料で全文お読みいただけます。投げ銭は、プロジェクト資金の一部とさせて頂きます。

仮想レジアカは、作曲家向けオンラインアカデミーです。2020年6月・7月の二か月間を仮想のレジデンスと仮定して、一分の作品をプロフェッショナルな演奏家と交流しながら作り上げていきます。参加希望者は、以下の記事より詳細をご覧ください。

――――――――
仮想レジアカに参加する演奏家による対談をシリーズでお届けします。第二弾は、チェロ奏者・北嶋愛季とチューバ奏者・橋本晋哉
――――――――

現代音楽との出会い

(北嶋愛季、以下北嶋)橋本さんは、最初に師事された先生が現代音楽のスペシャリストだったんですね(限定公開動画参照)。実際やってみて、抵抗はありましたか?

(橋本、以下橋本)実は留学前に日本で通っていた大学で、作曲家の近藤譲先生のクラスがあって。そこで、「いろんな曲をやってみよう!」と、挑戦させてくれたんですね。それが凄く面白かった。あとその頃、秋吉台国際20世紀音楽セミナーが行われていて、時々聴きに行ったりもしていたんですが、そんなこんなで「現代音楽やってみたいな」という気持ちが、芽生えたんだと思います。

(北嶋)そうなんですね!

(橋本)北嶋さんのきっかけは何だったんですか?

(北嶋)日本の大学で勉強している時に、作曲科のための試演会で同世代の友人から「弾いてほしい」と依頼を受けたのがきっかけですね。わからないことがあれば、作曲家本人に聞けるというのがすごく、、「なんて便利なんだ!」と思ったのを覚えています(笑)

(橋本)ご本人に直接訊けちゃうの、感動しますよね(笑)

(北嶋)そうなんです。あとリハーサルの時に、「やっぱりここは変えるね」など楽譜が一旦出来上がった後で、作品が変容していく過程を味わったのが衝撃でした。それまでは楽譜というのは “絶対的なもの” で、変化しないものだったんです。その場に作曲家がいなくても、例えばレッスンで先生が「あとで彼(作曲家)に電話して確認してみるわ〜」と先生が言ってくれたりして、、すごく新鮮でした。バッハは電話できませんからね・・・。

(橋本)留学先では、どうでしたか?

(北嶋) 桐朋学園大学を出た後、ドイツに留学したんですね。その時は、所謂普通の「チェロ科」に入学したんですが、現代音楽に触れ合う機会が多く、その後はインターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー(ドイツの現代音楽アンサンブル、アンサンブル・モデルンが行っている現代音楽を一年集中して学べるコース)へと進みました。 

印象に残っている作品は?

(北嶋)これまで印象に残ってる曲はありますか?

(橋本)そうですね。色々思い出深い作品はあるんですけれど、やはりラッヘンマン(Helmut Lachenmann)のチューバと大オーケストラのための「ハルモニカ」でしょうか。昔から聴いていた作品で、まさか自分が演奏できると夢にも思っていなかったので、依頼来た時には嬉しいよりも、まず先に怖かったです。

(北嶋)実際演奏されてみて、どんな気分でした?その曲に限らず、現代音楽を演奏するときと、そうでない時と気負いというか、気分の差はありますか?

(橋本)まずオーケストラが東京交響楽団さんだったんですが、もう無茶苦茶上手くって、練習中から感動しっぱなしでした。現代音楽とそうでない時。あまり意識してないけれど、最近はクラシック演奏する時、凄く緊張したりします。北嶋さんはどうですか?

(北嶋)クラシックの演奏で緊張。分かります。しばらく、バロック以外の「普通の」レパートリーの曲を人前で弾いてないので、余計に緊張しそうです(笑)なんででしょうね?聴衆もその曲を何度となく聴いていて、よく知っている、と自身も分かっているからでしょうか。

(橋本)やはり演奏する歴史も、聴く歴史にも凄い蓄積があるからなんでしょうね。現代音楽はそう言った意味ではフレッシュで、それはそれで良いことだと思うんです。

(北嶋)本当におっしゃる通りだと思います。「聴く方にも歴史がある」、というのは大きいですよね。 逆に言えば現代音楽の場合、聴衆に対して「こう聴こえなければならない」というのがないですよね。自由に聴いて頂けたらたら嬉しいな、といつも思っています。 

これだけは知っておきたい(チェロ編・チューバ編)

(橋本)現代音楽のチェロを理解する上で参考になる文献やサイトってあるんですか?

(北嶋)私はその都度「実践」のみで学んできたので、音楽の専門書より別ジャンルの本を読む方が多いです。 チューバやセルパンは、いかがですか?

(橋本)チューバというか、金管全般の奏法についてになりますが、この本には、トロンボーンについて書かれていて、とてもよくまとまっています。

ただ、いつも思うのはこれらは楽器を演奏した経験があると、「その通り!よくまとまっているなぁ」と思うんですが、作曲を学ぶ側から見ると「なかなか捉え所がないじゃないか」ということなんです。例えば、作曲についての教本のようなもの(メシアンのそれのような)って、楽器奏者が読んでわかることと、作曲を専門に勉強する人の理解は自ずと違うと思うんですよね。その辺りをよく踏まえて、資料を読むというのが大事なことなんじゃないかと思います。

(北嶋)なるほど。奏者が知りたいことと、作曲家が知りたいたいこと。その糸口はやっぱり違ってきますよね。 作曲家からすれば、「『こういう音響』 『こういう音』 が欲しいときには、例えば『この奏法の、この音』があるよ」みたいなことが書かれていると、きっと便利なのでしょうね。

(橋本)そう言った意味では、「生きている作曲家に直接尋ねられる」の逆で、生の演奏家がいる機会を利用して、オンラインでバンバン質問して欲しいですね!

(北嶋)そうですね。気負わずに、「こんなこと出来ますか?」って、じゃんじゃん訊いて頂き、一緒に実験させて頂けたら嬉しいですね。


――――――――
橋本晋哉/チューバ

1971年生まれ。チューバ奏者、セルパン奏者。エリザベト音大博士課程を経てパリ国立高等音楽院、同第3課程修了。2002年アヴァン・セーヌ(フランス)第1位、日本現代音楽協会演奏コンクール第2位、2003年ガウデアムス国際現代音楽演奏コンクール・即興特別賞、「東京現音計画」のメンバーとして第13回佐治敬三賞受賞。アンサンブル・イクトゥス、ミュージック・ファブリック、アンサンブル・アンテルコンタンポラン等での演奏、アゴラ音楽祭、レゾナンス音楽祭(IRCAM)、東京オペラシティリサイタルシリーズ「B→C」、NHK-FM「名曲リサイタル」への出演等。

北嶋愛季/チェロ

千葉県出身。7歳よりチェロを始める。桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)および桐朋学園大学音楽学部チェロ科卒業。松波恵子氏、また東京音楽大学大学院研究科(科目等履修生)において堀了介氏に師事。2003年第10回べストプレイヤーズコンクールにおいてグランプリ受賞。2008年より渡独し、ドイツ国立トロッシンゲン音楽大学においてチェロをフランシス・グトン氏、現代音楽をエリック・ボルギア氏(アンサンブル・アスコルタ)、スヴェン・トーマス・キーブラー氏、即興演奏をハラルド・キミング氏、トーマス・ヴェンク氏に師事。2013年ディプロム課程修了。2013/14年度のインターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー(IEMA)奨学生として、アンサンブル・モデルンの元で研修。メンデルスゾーン・ドイツ国立音楽大学コンクール現代音楽アンサンブル部門3位受賞。2014年修士号取得。2017年12月から完全帰国し、日本とヨーロッパを中心にソリスト、室内楽奏者、オーケストラ等フリーランスのチェリストとして活動中。

――――――――
仮想レジアカ対談集


黒田鈴尊(尺八) ✖ 今井貴子(フルート)
北嶋愛季(チェロ)×橋本晋哉(チューバ)
③薬師寺典子(ソプラノ)×木村麻耶(箏)
大瀧拓哉(ピアノ)×山田岳(ギター)

ここから先は

0字

¥ 390

若手作曲家のプラットフォームになるような場の提供を目指しています。一緒にシーンを盛り上げていきましょう。活動を応援したい方、ぜひサポートお願いします!