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推し活ツイートの原点を彷彿とさせる大充実の浮世絵展

この原稿はあるホテルのWebサイト&メールマガジンにて2021年8月24日に公開予定でしたが、東京オリンピック・パラリンピック時期に新型コロナウイルス感染者が増加したことにより、残念ながら「ご時世」で配信見送りとなりました。依頼元の関係者の方々より公開の許可を得て、noteに掲載しました。


日本を代表する芸術の1つとして、世界中から愛される浮世絵。この浮世絵を余すところなく堪能できる展覧会が、日比谷公園内の日比谷図書文化館で9月19日(日)まで開催中だ。タイトルは「紀伊国屋三谷家コレクション 浮世絵をうる・つくる・みる」。

三谷家は、紀伊国屋という屋号で金物問屋を営んだ神田の商家だ。八代目当主の長三郎が蒐集したコレクションは、企画から販売まで浮世絵制作の流れがつぶさにわかる。当時の出版社にあたる版元が絵師に依頼をし、OKが出たら彫師にオーダー。そして摺師へと作業が移って、やがて店頭に並べられる。店の展示は天井からの吊り下げアリ、平積みアリの「激安の殿堂 ドン・キホーテ」と同じ方式だ。

例えば美人画。当時のトレンドファッションに身を包んだ美人画の浮世絵は、構図からしても現代のファッション雑誌の内容とほとんど変わらない。明治18年に豊原国周が描いた「婦人束髪会」は、まさにヘアカタログ。西洋風の髪の結び方、髪の手入れ方法まで細かい説明文が記されている。

「浮世絵をみる」のコーナーは、K-POPやドラマなどの推し活に勤しむ人にはたまらない内容だろう。曲亭馬琴の大ヒット小説『南総里見八犬伝』を題材にした歌川国芳のシリーズは、登場する各犬士に当時の人気歌舞伎役者を当てて描いている。これは小説と歌舞伎、双方のファンを当て込んだ作品で、歌舞伎ファンの「あったらいいな」と思える贔屓の役者の姿を具現化したもの。推し活にハマる現代の人たちが、Twitterで推しの名場面集的な画像や動画を流すのと、とても似ている。

その他、劇画のほぼ原型と思われる浮世絵もあれば、ねぶた祭りの山車灯籠にそのままできるのではと思われる浮世絵もある。もちろん歌川広重の「五十三次名所図会」もあり、日本橋、品川と東海道各地の名所も楽しめる。

どうやったら人の目を惹くことができるのか。版元や絵師が売れる企画を練り、パトロンを納得させ、ヒットしたら増刷を繰り返す。安価で売れる浮世絵は当初絵師のクレジットのみだったが、やがて彫師、版元の名前も入れられるようになる。時代を経て、クリエイターのクレジットが増えていく様もぜひお楽しみに。

すっごくいい展覧会だったんですよ。展示される浮世絵は時代が進むと、関係者のクレジットがやたら増えていく。「この印は絵師なのか、彫師なのか、摺師なのか?」と不思議に思って係員の方に質問をしたら、学芸員の方を連れてきてくださって。私の周りにいる方々も「それ、気になってた!」とおっしゃって、学芸員さんを囲んでの即席解説会を開いてもらいました。贅沢な時間でした。
たくさんの人に観ていただきたくて、会期が始まってすぐに観に伺って、現場で原稿を書いていたのですが、コロナ感染者が増えて、敢えなく原稿はお蔵入り。でも動画・写真をふんだんに掲載した日比谷図書文化館の学芸員さんのTwitterのおかげで、noteがリッチなコンテンツになりました。まだ紹介していない学芸員さんの解説動画も紹介しておきましょう。
休室日のお知らせも素敵ですね!
他の会場風景も。
摺り体験もできました!
最後にこちらが公式サイトです。


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