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ケンタと祖母

まだ私が高校生だった頃、祖母が家に泊まりに来た事があった。祖母は難病にかかっていて、うまく話せないし脚も不自由だった。でも、ボケていなかったし孫の私とは会話も出来ていた。母は「孫の中でもあんたの事を一番可愛がっていたね」と、今でも言う。そうそう話を元に戻そう。

祖母が家に泊まりに来た時だった。近所にケンタがオープンした。母におねだりしても無駄だと思った私は祖母におねだりした。もちろん「買ってきなさい」とお金をくれて、お昼ごはんとした。祖母にはナゲット(入れ歯だったので)とポテトとコーラ。私はオリジナルチキンとポテトとコーラ。

そうして食べているうちに突然祖母が泣き出した。どうしたんだろう?やっちまったか?とビクついていたら「こんなに美味しい物を食べた事がない」と。「ありがとうね」と。私は「ケンタ様ありがとう」と心の中でお礼を言った。何だか嬉しくて涙がでた。それから、家に泊まりに来ると「鶏とお芋を揚げたやつとコーラ」とおねだりされるようになった。でも、長くは続かず2回くらいの出来事だった。祖母はその後来られなくなってしまったから。私はふと、思った。あの時、祖母は私が喜ぶから来る度に「食べたい」と言ったのではないかと。「美味しそうに食べるね」といってニコニコしながら私を見ていたから。

きっとケンタ天国支店はあるよね。是非、祖父にも食べてもらいたい。祖母は「鶏とお芋を揚げたやつ」をきちんとオーダー出来ているのか心配。カーネルサンダースさんよろしくねー!

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