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2021年の100冊 #28 「スプートニクの恋人」(村上春樹)

「グルーチョ・マルクスの台詞に素敵なのがある」と僕は言った。
「『彼女はわたしに激しく恋をしていて、おかげで前後の見境がつかなくなっている。それが彼女がわたしに恋をした理由だ!』」
 すみれは笑った。(p.104)

大好きな本をどうやって「記録」したら良いのか、さっぱりわかりません。身近な人ほど、愛を伝えるのが難しいように。好きな人を好きな理由がないように。

2021年の100冊、ジャンル問わずとにかく本を読んで勉強することを目的に開始。ログはスマホで20分で書き上げることを目標にしています。

2021年3月19日、28冊目はこちら。

「旅の連れ」の「恋人」

スプートニクとは、ロシアの人工衛星の名前。「旅の連れ」という意味だそうです。Travel companion.

「でもどうしてロシア人は、人工衛星にそんな奇妙な名前をつけたのかしら。ひとりぼっちでぐるぐると地球のまわりをまわっている、気の毒な金属のかたまりに過ぎないのにね」(p.151)

そしてこの本は、私にとって数年来の「旅の連れ」であり「恋人」です。何年も大好きな本です。

書き出しを書き写したこともあります。

実際に舞台になるギリシャに行って、「スプートニク」の真似ごとをしたこともあります。海辺でごろんとしたり、アムステルダムビールを飲んだり、白身魚を食べたり、ギリシャ音楽を聴いたりして。サムネの写真はそのときのものです。3年半前のことです。

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あらすじにならないあらすじ

どんな話なのか、国語のテストみたいに文中から抜き出すとしたらここです。

「レズビアンの女性は生まれつき、耳の中にある骨のかたちが普通の女性のそれとは決定的に違っているんだって。なんとかいうややこしい名前の小さな骨。つまりレズビアンというのは後天的な傾向ではなく、遺伝的な資質だということよね。(・・中略・・)いずれにせよそれ以来わたしは、その耳の奥のろくでもない骨のことが気になってしかたないのよ。わたしのその骨はいったいどんな形をしているんだろうかって」(p.81)

「ぼく」は、すみれが好き。すみれは、17歳年上で結婚しているミュウという女性が好き。ミュウは、誰にも性欲を感じることができない。どこにもいけないふたつの恋。三つの愛。

どんなにすみれと一緒にいたいと思ったとしても、それは”引き伸ばされた袋小路”のようなものだと「ぼく」は悟っている。

結論にならない結論

今回読んで、驚いたことがあります。
それは、自分がこの本の結末を覚えていなかったということです。

こんだけ好き好きと言っていて、何年も前から読んでいて、何回も読んでいて、ギリシャまで行って。

結末はどうでも良かったのだと思います。文章が好きなのです。

激しい欲望や、喉の渇きや、戸惑いや、息苦しさや、暑さや暗さ、月明かり、ビールの冷たさ、そんなものだけで私は十分なのです。


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