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【ショートショート】鬼の災難

(626文字)

あいつら、たっぷりと貯め込みやがって。
みんなのためにと金を集めて、みんなのために使うのはわずがなものだ。あとは自分たちの腹を肥やしてやがった。
裏金ってやつだ。
こういう時のためにオレたち鬼がいる。
ああいう奴らは、少し痛い目に遭わないと分からない。裏金を奪ってやろうと乗り込んだ。
乗り込んでみると現金が見当たらない。おかしいと思ったら、奴ら金を金銀財宝に換えてやがった。だからごっそり持ってきてやったぜ。
明日にでも金に換えてやろう。
いやいや、オレたちが使うんじゃない。
これでもオレたち鬼は閻魔様に派遣されてるんだ。目に余る悪を懲らしめてやるのがオレたちの仕事さ。
財宝を金に換えたら、貧しい村人に配ってやるつもりだ。

「親分!表で金銀財宝を返せという人間が騒いでいます!」
子分が慌てて駆け込んできて言った。
「なんだと?まぁ、話せばわかるだろう。通してやれ」
そこへまた別の子分が駆け込んでくる。
「もう門を開けて中に入ってきました!」
「あの門をどうやって開けたんだ?」
「それが、どうやら鳥を使ったようです」
そう言う子分の背後から、刀の鍔迫り合いの音や、斬られた子分たちの叫び声が聞こえてきた。
どうやら敵は強そうだ。猿や犬の声まで聞こえてきたと思ったら、早くも敵の大将が目の前に現れた。
「長老たちの金銀財宝を返せ!」
「いや、お前たちは騙されているんだ。話を聞け!」
「問答無用!」
鬼の親分が最後に見たのは、桃のマークがついた鉢巻きをした男が振り下ろす刃の鈍い光だった。

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