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【毎週ショートショートnote】カフェ4分33秒

(417文字)
お題:カフェ4分33秒

時計台の鐘の音がまだ耳の奥に響いている。
気がつくとカフェの前にいた。
「カフェ4分33秒」と書かれたプレートが下がっている。
男は扉を開けて店内に足を踏み入れ、店員に案内された席に腰を下ろす。
店内は静かでBGMは流れていない。
客は全てひとりずつで、目を瞑って涙を流している人、微笑みを浮かべている人と様々だ。カップの音や、スプーンで砂糖を混ぜる音が静かな音楽のように店内に響く。
男にコーヒーを運んできた店員は4'33"と書かれた砂時計をひっくり返した。
こぼれ落ちる砂を見ていると、男の目の前に様々な思い出が映像のように浮かんだ。
優しかった両親の顔、妻の顔、子供たちの顔。そして最後にしがみついていた大きな時計の針。
コーヒーを飲みながら、自然と涙がこぼれた。
やがて砂時計が落ちきると、店員が男の肩を叩いた。
男は全て悟ったように立ち上がり、入口とは反対側にあるドアを開けた。
ドアの向こうは真っ白な空間だったが、男は何も恐れずに足を踏み出した。

たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加させていただきました。
そしてこの話の男はここからやってきました(笑)
チズさん、インスピレーションをありがとう!


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