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カフェ4分33秒

憧れのロンドン旅行が実現した。ビッグベンの見えるホテルを予約、到着するとさっそく9階のカフェに上がり、ミルクティを飲みながらその堂々たる姿をため息交じりに眺めた。

時差ボケでついうとうとしたらしい。はっと目を開けてビッグベンを眺めると、なにかが違う。持参した双眼鏡でのぞいてみると、なんと長針に男がしがみついている。
いつから?
その時2秒ごとに動く針は、ピン!と垂直の位置になり、男は耐えきれなくなったのか、あっという間に落下した。
僕は、ホテルの外に飛び出し、叫びながらウエストミンスター橋を全力疾走した。

「アンビュランス‼」 (救急車)

時計塔の下まで来たがそこには男の姿はおろか血一滴もない。
僕は夢を見ていたのだろうか?

しかし、翌日のロンドンタイムスを見て驚愕した。
「ビッグベン、4分33秒遅れ、修正済みだが、原因不明」

きっと男の体重で長針の動きが遅れたのだ。でも彼はどこに?
落下寸前の男の悲痛な表情がまた僕の脳裏に浮かんだ。

       おわり(418文字)

ビッグベンの音よければお聞きください。👇 かなり大きな音です。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c5/Westminster-and-one-o-clock.ogg

たらはかにさんの企画に参加させていただきます。
たらはかにさんお世話をおかけしますがよろしくお願いいたします。


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