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【ドラマ】The One

DNAマッチング事業が全世界を席巻し、CEOのレベッカ・ウェブはまさに時代の寵児。だが、テムズ川で発見された遺体が、その前途に影を落とす、

Netflix

(1725文字)
2021年のNetflixのドラマ。イギリス制作で全8話。
序盤で犯人が分かり、刑事が追い詰めていくパターンのサスペンス。
その本筋に大きな意外性はないけど、詰将棋のように犯人が追い詰められていく面白さがある。
ただ、嘘で塗り固めていくレベッカに感情移入はできないし、かといって刑事のケイトにも感情移入しづらい。
なので、入り込むわけではなく、眺めている感覚だった。

それよりもドラマの舞台の方が興味深い。
主人公のレベッカ・ウェブは、DNAマッチング事業「The One」のCEO。
このサービスは、誰でもDNAで運命の人とマッチングできるというもの。
マッチングした相手は、DNAレベルで求め合うという。
相手の匂いやキスの味はもちろん、初めて会ったのに会ったことがあるような感覚があり、すべてにおいてしっくりとくる。そして、抗えない強い魅力を感じてしまう。
マッチングした相手同士ですんなりと結婚できれば良いけど、このサービスにより結婚生活が破綻した夫婦も多数出ていて、序盤では政府に問題視もされる。

ハンナとマークは夫婦仲は良いのだけど、妻のハンナが内緒でマークの髪の毛を送って検査をする。
そしてマッチングした相手と同じヨガ教室に通い友達になる。
ハンナはマークのマッチング相手を知り、どういう女がマークの好みなのかを知って、自分もそれに近づきたいと思ったという。
しかし、マークとマッチング相手のメーガンが知り合ってしまい、さらにお互いがマッチング相手だということも知ってしまう。
マークはハンナを愛していながらも、メーガンに強い魅力を感じて苦しむ。
このマークに感情移入しちゃうよね。これは相当辛いと思う。
「愛する妻を捨てるわけにはいかない」と毅然とした態度が取れるのが理想かもしれないけど、本能的に惹かれ合うわけだもんなぁ。

実際にこういうサービスがあったらどうなんだろう。そういうことを考えながら観るのが面白かった。
遺伝子が遠い人の匂いは臭くないという実験は有名な話。
遺伝子が近いカップルからは、弱い子供が産まれやすいので、本能的にそれを回避しているとも言われる。
遺伝子がバリエーションを求めることによって生物は進化してきた。
そう考えると、この遺伝情報やDNAそのものが求める相手というのは、動物的に求め合う相手であって、理性的な部分でも相性が良いかは別の話。
このドラマではそこまで一致して、必ず幸せになれるとのことだけど、実際は違うと思うなぁ。
動物的な部分では相性バッチリだけど、理性的、言い換えれば人間的な部分で合わないというカップルが、何度も別れたり復縁したりするのかもね。

そもそも「理想の相手を探す」という考え方は、一夫一妻だからですよね。
乱婚であれば、若いうちに「この人」と決める必要もない。たくさんの相手と関係を持っていくうちに、自然と性格的にも合う相手と過ごす時間が長くなるでしょう。
改めて考えると、一夫一妻制での結婚ってかなりの決断を迫られるってことだな。しかも未熟な若いうちに。
そこから長ければ50年以上を一緒に過ごし、家族を作り上げていくとなれば、やっぱりお互いに理解し合い、助け合っていくことが大事になる。
ということは、実際にこういうサービスがあったとしても、幸せには繋がらないよな。

ただ、婚活には良いツールになるかもしれないですね。
例えば、婚活パーティやマッチングアプリなどで知り合って、実際にデートしてみたら臭いとか、動物的な面で受け容れられないとなると、それはもう時間の無駄。
このドラマでは、運命の人はひとりと謳われている(複数いる可能性もあるというシーンも出てくる)けど、実際にはたくさんいると思う。
このサービスで、100人を10人、5人に絞れるなら効率的。
今でも既に「遺伝的に遠い方が惹かれる」という研究結果があるわけだから、遺伝情報を登録して、その中からマッチングするサービスって可能なんじゃないかな。
どこかの大学の研究室が中心になって、ベンチャーとして始めたらヒットしたりして。

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