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【週末ショートショートnote】顔自動販売機

出張での商談を無事に終えた。
ホテルに戻る前に一杯飲みたい。
スマホで店を検索していると、不思議な箱に気がついた。
「顔自動販売機」
顔?詳細を知ろうにもボタンがひとつ付いているだけ。
お金を入れる場所もない。
とりあえず押してみる。ポチッ。
「おお!久しぶり!」
え?誰?
「腹減ってんだろ?」
突然現れた男は僕の肩に手を回し、強引に背中を押しながら、小料理屋の引き戸を開けた。
「あらジロちゃん、久しぶり」
女将に促され僕達はカウンターに並んで座った。
あのう、どこかでお会いしました?
「なんだよ達彦、オレだよ」
確かに僕は達彦だけど…。
「まぁ良いから、食おう」
僕達はビールで乾杯した。
その後、誘われるままにスナックをハシゴ。
ジロはどの店でも人気者で、僕は細かいことは忘れて知らない街での夜を楽しんだ。

翌朝、ホテルの領収書を見て驚いた。
0がひとつ多い。
「お客様、顔自動販売機をご利用になりましたよね。この街の顔に楽しませてもらった代金が入っておりますので」

(416文字)

だいぶ削ったけど410文字に収まらなかったなぁ。

たはらにかさんの企画に参加させて頂きました。

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