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【エッセイ】日常の中で

愛してることさえ忘れてしまうほど
日常の中でいつも君が好きさ

これは佐山雅弘作曲、忌野清志郎作詞の「Hymn for nobody」という曲の一節。

この曲は、結婚前に妻が聴かせてくれた。
その時と今では、感じ方が大きく変わっている気がする。

結婚して27年目。愛しているかと聞かれて、改めて考えると、自分の中の「愛」をしっかり捕まえるのは難しい。
しかし「好き」という気持ちは簡単に感じることができる。
それは、別に暮らすようになって強くなった。
今、この曲の歌詞が、初めて聴いた頃より理解できている気がする。

佐山雅弘は素晴らしいジャズピアニストで、初期のRCサクセションのレコーディングやライブをサポートしていた。
その後はジャズだけではなく、様々なアーティストと共演した。
何度か妻とライブを観に行った。
特にサンポーニャ奏者の瀬木貴将とのノンPAライブが印象に残っている。
PA(音響機器)を使わない、つまり全て生音のライブ。
演奏者の息遣いや、リズムを取る足音まで聞こえてきて、あんなに音楽を全身で感じるライブは、後にも先にもない。
残念ながら、5年前に64歳の若さで亡くなった。
その前に、ご存知のように忌野清志郎も亡くなっている。
そう考えると、後半の歌詞が胸に詰まる。

限りある命がやがて幕を閉じても
永遠の夢のように君に夢中さ

そんな気持ちを残して死ねたら良い。
その気持ちをしっかり感じてくれたら嬉しい。
そう思う気持ちが、日常の中で忘れている愛なのかもしれない。

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