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社会人1年目のビジネスコミュニケーション

牧田 幸裕

大学生と社会人のコミュニケーションは180度違う。全く真逆になる。その結果、ビジネスコミュニケーションで戸惑う社会人1年目はとても多い。そこで、この投稿では、社会人1年目がビジネスコミュニケーションで戸惑う原因を考え、その原因に対する解決策を提示したい。


社会人1年目がビジネスコミュニケーションで失敗する原因

社会人1年目がビジネスコミュニケーションで失敗する原因は簡単で、コミュニケーションのベクトルが大学生と真逆だからである。

大学生:自分⇒⇒⇒⇒⇒相手

社会人:①相手⇒⇒⇒⇒⇒自分、②自分⇒⇒⇒⇒⇒相手

大学時代のコミュニケーションは、自分が中心だ。自分が世界のど真ん中にいて、大学のゼミであれば教授やゼミ生といった相手に、ビジネスコンテストであれば審査員という相手に、自分のオリジナリティ、ユニークさをアピールする。

一方、社会人のビジネスコミュニケーションは、社会人1年目のオリジナリティやユニークさなど、どうでもよい。大切なのは、お客様や上司のニーズ、期待値であり、①相手の期待値を正確に把握することが、ビジネスコミュニケーションの最初の一歩になる。そして、相手の期待値を把握できたのであれば、二歩目は②その期待値に応えること。これができれば社会人1年目としては、ピカピカの1年生になることができる。同期の中でもトップクラスの社会人1年目になることができるだろう。

コミュニケーションの中心、出発地点が、大学時代は自分だったのに対し、社会人になると相手になる。なぜこのような180度真逆のベクトルの違いが生まれるのか。それは、お金を払う、もらう立場が真逆になるからだ。大学時代は大学生が(その保護者が)学費を大学に払っている。だから、大学教授は、大学生のしょーもないアイデアでもふんふんと聞いてくれる。サービス業だから当たり前だ。もちろん、ダメなポイントに対しては指摘し、修正してくれる。一方、大学生は社会人になると、お金を払う立場からお金をもらう立場になる。もらう立場になって、好き勝手なコミュニケーションは一切許されない。相手の期待値に応えるから、その対価としてお金をもらえる。この単純な立場の違いにより、大学生と社会人1年目のコミュニケーションは180度真逆のベクトルになるのである。

イケてた大学生ほどビジネスコミュニケーションで失敗する

大学時代にイケてた大学生の勝負軸は、大抵の場合自分のユニークさ、オリジナリティである。だから、社会人になってもその勝負軸で勝負しようとする。社会人1年目の同期の飲み会では、いかに自分がイケてるか、ユニークか、マウンティング合戦を行いポジションを築こうとする。

しかし、同じことを上司に行っても無駄だ。プロ野球選手の1年目が「僕、昨年の夏、甲子園に出場しました!とりあえず3安打しました!」とアピールしても、先輩たちから「いやぁ、俺は甲子園で優勝投手やってんけどな 笑」とか「そうそう、俺もその後日本代表になって 笑」とか、苦笑いされるのと同様で、優秀な組織の上司は多くの場合、1年生以上に優秀だからだ。外資系コンサルティング会社でも、毎年春になるとイケてた大学生(社会人1年目)が、いかに自分がユニークか一生懸命自己アピールをしてくるので、生暖かく見守る恒例行事が社内のあちこちで発生する 笑。

同期の中でもイケてないことを自覚している社会人1年目は、むしろ早い段階で社会人のビジネスコミュニケーションにシフトできる。なぜならば、自己否定し修正できるからだ。いち早く先輩、上司から学ばなければ同期の中でも取り残されると考え、修正が早い。一方、イケてた大学生ほど自己否定が困難で、「なんで大学時代イケてたのに、社会人になってからあんまりイケてないんだろうなぁ?」と不思議に思いながら、暗中模索でしばらく悩みながら過ごすことになる。

社会人1年目のビジネスコミュニケーション成功の処方箋

とはいえ、大学時代イケてた大学生が優秀であることが多いことも事実で、このベクトルの違いに気づけば、あっという間に修正し優秀な社会人1年目に様変わりすることも多い。

かつて外資系コンサルティング会社でマネジャーをしていた頃、灘高⇒東大法卒の学生ちゃんとしては優秀だが、社会人としては使えない1年目のバカがいた。自分のロジック、自分の視点だけで話をし、その結果誰からも信頼されず、スポイルされていた。仮に「灘くん」と名付ける。

僕「おまえの話、つまらんし、聞くだけ時間の無駄だな」

灘「なんでですか、僕のロジック間違ってませんよね」

僕「お前のロジックなんか、どーでもええねん。相手は何を求めてるんや、何を期待してるんや」

灘「相手より僕のほうが優秀です」

僕「お前が優秀だったら、相手は満足するんか?」

灘「満足なんか知りません。関係ないでしょう」

僕「相手が満足しないで、どーやってお金もらうんや?お前、ラーメン頼んで、優秀なシェフがカレー出したら満足して金払うか?」

灘「……」

僕「相手は、満足するから金を払い、信頼するから依頼するんや。お前の信頼貯金は、今いくらや?」

灘「……」

僕「お前の今の信頼貯金はゼロか、マイナス。だから誰もお前を使おうとしない。優秀かどうかなんてどーでもええ。どうしたら相手から信頼を獲得できるかを考えろ。信頼されたら、どんどん面白い仕事が来るようになる。まず、信頼。その後、おもろい仕事」

灘「……。どうしたら、相手を満足させられますか?僕はどうしたらよいですか?」

僕「自分の考えを一切言うな。相手が言ったことをひたすらオウム返ししろ。相手が『黒だ』と言ったら、『なるほど黒なんですね』と言えばいい。オウム返しすることで、相手の期待値を正確に把握しろ。相手のニーズさえ正確に把握できれば、問題に回答することは、お前超得意やろ」

そうして、灘⇒東大法卒のバカは、愚直にオウム返しを繰り返し、次第に相手のニーズ、期待値を正確に把握できるようになった。元々、特定された期待値に応えることは超得意で、だから灘と東大を出ている。なので、その後は順調にビジネスコミュニケーションスキルを向上させていった。そして、現在はその外資系コンサルティング会社のマネジング・パートナーで、会社を代表するコンサルタントの一人になっている。

大学生から社会人になると、様々なパラダイムシフトが発生する。そのメカニズムが何で、どうすれば対処できるのかを考えることができれば、社会人1年目は誰でも、立派な1年目になることができる。もしあなたがビジネスコミュニケーションで悩んでいる社会人1年目ならば、この投稿を参考にして、自分のコミュニケーションの改善点を考えるきっかけにしてほしい。


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牧田 幸裕
名古屋商科大学ビジネススクール 教授。専門は、競争戦略、マーケティング戦略、消費者心理、消費者行動、ガストロノミー、ビブグルマン。MBA講義、グルメ情報などを、動画を中心としてお届けします。