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親の熱い眼差し


最近、中学生や高校生と接する機会が増える中で、彼らの声を直接聞くことがあります。
「大人が真剣に怒ってくれない」「親がいろいろな話をしてくれない」といった不満を抱えている子どもが多いのです。

私は中学生や高校生に向けて、「人生の生き方」をテーマに講演をすることがあります。タイトルは、「最高の出会いが人生の勝利」。
人生には、良い出会いと悪い出会いがあります。良い出会いがあれば人生は豊かになりますが、悪い出会いがあれば、人生は悪い方向に進むこともあります。
その良い出会いと悪い出会いを見極めるためには、自己中心的にならないことが大切です。自己中心的でいるのは、いわば幼児的な感覚。その幼児的な感覚を克服し、人を思いやる気持ちを持つことが大切だと話しています。

親の存在の大切さ


講演では、私自身の体験談を交えながら具体的な話をします。
たとえば、無免許でバイクに乗る危険性、薬物の恐ろしさ、いじめの絶対的な悪など。そして、こう結論付けます。

「最高の出会いは、実は親なんだ」

親を愛せない人間が、他人を愛することはできません。だからこそ、親との関係を見直すことが大切です。
非行や問題行動、親や先生への反抗は、結局、自分自身を損なう行動にほかなりません。
この話を1時間半ほどかけて伝えると、子どもたちは真剣に耳を傾けてくれます。

しかし、いくら「親に逆らうと損をする」と話しても、そもそも子どもの存在を無視する親が多いのも事実です。
ただ厳しく接するだけでは、子どもは親の言葉を受け入れません。それは、必ず失敗する子育てなのです。

子どもから届いた手紙

講演後に、ある高校2年生の女子から手紙をいただきました。その一部をご紹介します。

「私は伊藤先生の講演を聞いて、伊藤先生との出会いこそ、最高の出会いだと思いました。
私は一人っ子で、とても厳しい家庭で育ちました。『お前のため』と言われて、あらゆる場面で干渉され、毎日がつらいです。

たとえば、靴下をソックタッチで留めるのは禁止、髪をゴムやピンで留めるのもダメ。学校帰りに制服のまま遊びに行くのも許されません。友人たちに聞いても、『そんなの普通言われないよ』と言われます。

中学のとき、親への反発から万引きをして謹慎処分を受けました。そのとき、親にはたくさん迷惑をかけたこともわかっています。それでも、親の干渉があまりにも厳しく、耐えられません。

私は伊藤先生の本『僕たちはいらない人間ですか』『きっとよみがえる』を読みました。前者を読んだとき、涙が止まりませんでした。私の気持ちがそのまま書かれているようでした。

私は中学時代に2度、施設に入りましたが、結局元に戻ってしまい、同じことを繰り返しています。
一度、伊藤先生に直接お会いしてお話ししたいです。親に怒られる理由や、干渉される理由を教えてください。

私には夢があります。バンドやダンスでプロを目指したい。でも、そのためにバイトをしたいと言っても、親は許してくれません。
夢を追えないつらさから、自分が生きている意味がわかりません。家にもいたくない。つらいです。

こんな厚かましいお手紙ですみません。素晴らしい講演をありがとうございました。涙が止まりませんでした。」

親が持つ「熱い眼差し」


この手紙を読んで改めて思ったのは、親が子どもに注ぐべきは、「熱い眼差し」だということです。
ただ厳しくするのではなく、ただ放任するのでもない。子どもを真正面から見つめ、愛情を持って寄り添うことが、親に求められる役割です。

私のところには、このような手紙や電話が多く寄せられます。
いろいろな理由があるかもしれませんが、親にはもっと子どもと向き合ってもらいたい。そして、子どもから信頼される親になってほしいと、つくづく感じるのです。

私が講演で伝えたいのは、親と子どもが互いに理解し、信頼し合う関係を築いてほしいということ。そして、親の愛情の大切さです。

最後にこれをお伝えしたい。

「親は子どもに愛を注ぎ、熱い眼差しを向けてください。そして、子どもたちよ、親を愛してください。」

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