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緑地帯 映画監督へ(中国新聞にて) 1話 森ガキ侑大

 CM業界で11年間働き、2017年に映画「おじいちゃん、死んじゃったって。」で映画監督デビューした。現在は、CMディレクターと映画監督の二足のわらじを履いているが、映画監督への道はまさに手探り状態だった。
 僕は中学時代からずっと陸上競技に打ち込んできた。競技は800㍍、1500㍍だ。中学、高校でキャプテンを務め、団体戦ではどちらも総合優勝できた。個人種目では県大会2位になったが、同じ広島市出身の為末大さんには遠く及ばなかった。
 為末さんくらいの県大会記録を持っていないと、陸上競技を仕事にすることはできないだろう―。漠然とそんな思いがあった。頭の片隅には挫折のような感情の塊があったのも事実だ。大学に進んで箱根駅伝出場も夢見たが、大学受験の参考書をめくりながら、陸上競技をやめる決意を固めていた。
 6年間も打ち込んでいた陸上がなくなり、僕の心には空洞のようなものができていたのは間違いない。気付くと、高校からの帰宅途中、一つのレンタルビデオ店に吸い込まれていた。
 そこから、たくさんの映画を見るようになる。洋画から邦画まで、とにかく心のすきまを埋めるようにひたすら映画を見た。といっても何か特定の作品が心に残ったわけではない。でも思ったのだ。「僕も映画を作りたい」と。そしてただ漠然と、僕は映画業界で働くことを夢見るようになっていったのだった。
(もりがき・ゆきひろ 映画監督=広島市出身)

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