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『ユヴァル・ノア・ハラリ 緊急提言パンデミック』を読んで

寄稿とインタビューとあるように、ユヴァルさんがNEWSや雑誌、インタビューなどで述べた見解をまとめた日本オリジナル版となっている。書籍という感じではないけれど、世界の価値観が激変する中で、サピエンスやホモデウス、21Lessonsを読んできた中で、ユヴァルさんの今の考えをまとめた本として興味深かったので読んでみました。

人類は新型コロナウイルスといかに闘うべきか/今こそグローバルな信頼と団結を(20200315 タイム誌)

人類の歴史の中で、ウイルスと人間の関係は今に始まった事ではないというユヴァリさんらしいコメント。1520年の天然痘ウイルスの悲劇は、現代の比にならない規模だったことを振り返っている。

1520年3月
フランシスコ・デ・エギア、たった一人の天然痘ウイルス保有者がメキシコ上陸。
12月までに中央アメリカ全域が大打撃、人口の三分の一が亡くなった。ウイルスの変異という脅威。全人類を危険にさらす
ウイルスと人間の境界

科学の進歩でCrispr Cas9のような遺伝子操作も簡単にできる時代。それをもってしても、ウイルスの突然変異の脅威は変わらずにあるということ。まさに地球上が一つで、ウイルスと人間の境界のせめぎ合いなのだと考えさせられる。

クリスパーのような研究が進みPCR検査も簡単に受けられるようなり、ワクチンが出来たとしても、そこでウイルスの変異があると一気に境界線がなくなりウイルスに攻め入れられるリスク・・・本当に恐ろしいことだ。
そんな状況なのに、ナショナリズムに傾倒する国家が増えることが人間の弱さなのかも知れない。
アメリカの大統領選もあるけれど、今の政治はメディアの報道のせいもあるとはいえ、程度の悪い古いコメディを見ているようで危機感しか募らない。
グローバリズムでSDGsのような団結を持って、人間が団結して境界線を強くしないとダメなんだろうな。


コロナ後の世界/今行う選択が今後長く続く変化を私たちにもたら(20200320フィナンシャル・タイムズ紙)

ここでは人間を監視して、それがルール・法令のようなものになると、恐ろしく長く続いてしまったという歴史を振り返っている。

新しい監視ツール/重要な分岐点  「皮下」監視
一時的な措置は後まで続く/プディング令
石鹸警察はなぜ不要か

今までの監視と大きく違うことは"皮膚の下"という心で誤魔化しきれない人間の生物としての反応をモニタリングされる恐ろしさがあるということ。
確かにそれが強大な国家権力として法令となると、どんな人間も逆らえない絶対的なものになってしまい自由がなくなってしまう。そんなナショナリズムを持った国家が誕生する危険性があるということだろう。

「石鹸警察」とはすごくわかりやすい例えだと思った。記事の全文もネットにあるのでリンクをつけておきますが、監視する・されるという方向ではなく、科学を信頼し、人間が賢くなることが大切なことなんだとユヴァルさんは言っている。本当にその通りだ。


グローバルな情報共有
医療と経済と移動のグローバルな合意
アメリカという空白

やはり、どう立ち向かうかという答えは、グローバルな科学の情報共有と、リーダーとなる国が出てきて、医療・経済で協力し合うことが必須なんだということ。今まではアメリカがそうだったけれど、今後はどうなるのだろう。他の国が立ち上がるしかないのかも・・・。


死に対する私たちの態度は変わるか?私たちは正しく考えるだろう(20200420 ザ・ガーディアン紙)

死は技術的問題に
神の罰ではなくワクチンを
生の意義を考えるのは私たち一人ひとり

昔は宗教的な虚構を持って人間は生きる希望を見いだしてきたのが、科学の進化によって全て技術的な問題として捉えられるようになったということがパラダイムの変化だろう。今、大ヒットしている書籍の"ライフスパン 老いなき世界"を読み始めたが、同じように科学の進歩により"老い"を病気と捉えて治療できるとするとどうなるのか、が書かれている。

ウイルスの脅威が"生の意義"を考える機会になるのかも知れない。それにより、今までは科学者の世界観だったものが人類共通のものに変わるのかも知れないな・・・。良くも悪くも意識の変化が予定よりも早く起こっている気がする。

緊急インタビュー「パンデミックが変える世界」(NHK Eテレ20200425)

テレビで生ユヴァルさんを見たのでNHKさんもすごいな、と思った。
今回のパンデミックによって、世界中でいろいろな段階の国がある中で、ウイルスの脅威は国単位の問題ではないという警鐘を鳴らしている。

発展途上国とウイルスの変異
独裁か民主主義か
生体情報収集用のブレスレット

ここでも『皮下監視』の恐怖の話が上がっていた。日常的に至る所で体温を測られるのにも慣れてきたこともあるけれど、決して気分のいいものではない。顔認証だけでなくて、顔の表情やサーモで感染者かどうかを判別するようなものも出てきているらしいので、本当に監視国家のようなところも出てくるのかも知れない。


ケンブリッジ・アナリティカ社。2016年事件。
独り歩きをする緊急措置
イスラエル「プディング令」の例。
プディングに関する緊急命令、2011年に廃止された。
透明で双方向の情報
データは透明で、データの流れは双方向であるべき。これこそが人々のエンパワーメント。
どんな情報とどんな科学者を信じるべきか
集団的リーダーシップの必要性

人間のヘルスケアのデータが大量に集まってきている今の時代に、データの透明性の保証は本当に大切なことだと思う。個人情報保護法も今年に改正されたが、そのレベルではなくて、至る所で集まってきているデータを双方向にするようなアルゴリズムも考えないと、一方方向なデータの流れになってしまう。
やはり、グローバリズムでの集団的リーダーシップが必須なのだろう。

毎日2時間瞑想
ヴィパッサナー瞑想
科学に頼ることで恐れを克服している

ユヴァリさんですら、毎日2時間瞑想したり、科学に頼ることで"恐れ"を克服しているというコメントは興味深かった。私も社会情勢の変化や、働き方が変わり毎朝ウォーキングを90分くらいしないと、変な不安な気持ちが晴れない日も多い。
科学についての知識も日々情報収集して、人間としてウイルスに勝てるように努力したい。

©️Mahalopine


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