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【エッセイ】神社で朝、笛を練習するおじさん⛩

神社で朝、笛を練習しているおじさんがいた。何度か見かけている。
普通にスーツを着て、出勤前なのだろう。上着を脱ぎ、木陰のベンチに座り一生懸命に集中して、縦笛の練習をしている。

曲はなぜか「レッドリバーバレー」
神社で奏でる曲という雰囲気はないけれど、
朝の静かで広い空間に懐かしい音が響き渡る。


結構な頻度で間違えて、何度も音を探りながら練習するおじさん。
散歩をしながら、ふと足をとめると、時間が止まったような気がした。

「小学生の頃に一生懸命練習した笛の授業の感じだな・・」

当時、音楽の授業が大好きで、縦笛(リコーダー)を得意になって練習していたことを思い出した。

「たしか『アルトリコーダー』だったよな。ラーメンのチャルメラからはじまって、学校で習った曲は得意げに親に聴かせて自慢していたっけな・・」

笛を吹く時、息づかいを調整して、指で穴を押さえてメロディーを奏でる。
声を出して歌うように笛が歌う。
楽譜はだいたいでメロディーを覚え、音をなぞるように演奏して、間違ったらやり直してを繰り返す。

朝に笛を練習するおじさんと同じだ。

一生懸命、息づかいと運指でメロディーを奏でると
自ずと集中して心が落ち着くのだろう。
少し切ないメロディーが、朝の静寂に響く。
笛が歌い自己表現が拡張される。

きっとこの後、会社に行って始業すると
上司や同僚や部下と、忙しなく仕事がはじまって
頭の中からメロディーは消え、雑踏の中の1日がはじまる。

束の間の朝の静かな時間。
心を落ち着けて無心になって笛を吹くと
ゆったりとはじまる1日は充実したものになるんだろう。

そんなことを考えながら、朝の神社の静寂の中、笛の音を聴きながら歩いていた。

「結構な頻度で間違えるのが、また愛嬌があってほっこりするな〜笑」

逆に完璧に吹いてしまうよりいいような気がした。
今日も一日張り切っていきましょう。

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©️Mahalopine

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