鬼滅の刃を読んでいると、昔のことを思い出す。

わたし、鬼滅の刃が大好き。世田谷マダム34歳(中島雪絵)です。
流行っているし観てみようよーと夫に促されて観はじめたアニメ「鬼滅の刃」に見事ハマりまして、コミックスも19巻まで読みました。にわかファンで申し訳ございません。

るろ剣やドラゴンボール大好きなわたしですから、まあハマるだろうなって思ってたんですけど、その両者とも違う魅力が鬼滅の刃にはありました。

鬼滅の刃、その魅力は主人公の成長していく姿にあります。
いやいやー、どの物語だってそうやろー、と思う皆様!
そうなんですけどね! なんというかね、ちゃんと納得できる成長なんですよ!!

急に強くなるアイテムもらうとか、急に能力目覚めちゃうとか、実は宇宙人だったとか、そういうやつじゃなくて、主人公の努力で! 努力で強くなるのが良いんですよ!
そこまで頑張ったんなら、強くなるよね! そうだよね!
頑張れ頑張れ炭治郎!
と思えるんですよ!
でね、これを読んでいると、爆発的に成長できた舞台を思い出すんですね。
すみませんね、わたしなんかが重ねちゃって!

わたし、一度だけ、大きな劇場でヒロインをやったことがあるんです。しかも姫。赤白姫という心優しい姫の役です。
それまでは出オチを担当する役者だったので、決まったときはうれしかったんですけど、
書き上げられた脚本を見てゾッとしました。
面白いんやけど、後半3ページくらい全部俺のセリフやん......。

出オチ役者ですので、自分の劇団の芝居以外でたくさんセリフをもらったことがなく、そもそも覚えられるか不安でした。
あと、物語を背負うセリフが多い。
出オチ役者ですので、本筋にあまり関係ないセリフしか言ったことがなかったんです。
......気持ちを込めてセリフとか......言えないよ!!

「面白くしなくていい」
「ちゃんとヒロインとしてそこにいて」
演出家のダメ出しは全部ごもっともで、自分でもわかっているのにおちゃらけてしまう。
その一方で守りに入ると
「面白くない!」
と言われる。無茶苦茶や! と思うけど、自分も演出をやるからよくわかる。
ちゃんとヒロインらしくいないといけないけど、普通ではいけない。
綺麗なヒロインなら、わたしがやらなくても良いはず。他にいくらでもいたはず。
この役は、出オチ役者のわたしがやるから素敵なんだ。
そう。実はこの役、出オチヒロインなんです。ヒロインだけど、悪のボスなんです。
ダークヒロインとかじゃなくて、
体の半分がヒロイン、体の半分が悪役(しかも男)という、まあ簡単に言えば、あしゅら男爵みたいな役ですね。
しかもそれぞれが喋るしなんなら会話します。一人ですけど。
さすが当て書き、というような役で
「絶対にものにしたい」
と思える役でした。
しかし、そう簡単にはいかない。
普通にやるだけでも大変なのに、
「姫(ヒロイン)の時は上手のはじっこで、殿(悪役)の時は下手のはじっこでセリフ言って」
という演出がついたんです。
当然セリフとセリフの間に「間」ができるのですが(移動してるからね!)
「間髪入れずに次のセリフ言って!」
とか言われる。いや無理やろ普通。
あまりに無理すぎて稽古場で過呼吸になり、あーやばい、これじゃまずい。と修行することに決めました。
まず、稽古場に2時間前に行き、衣装部に衣装(めっちゃ重たい打掛)を借りて、それを着て走る。走りながらセリフを言う。
次に踊る。打掛はぞろびくので、綺麗な足捌きが必要だったのです。
出オチ役者なので、打掛など着たことないですからね!

上記の修行を何セットか繰り返してやっとテンポよくセリフが出てくるようになったのですが(簡単に書いたけど相当時間がかかりました)、
次に、音楽に完璧に合わせてセリフを言うというのが加わり、
音を聞く余裕もないといけないので、音楽を聴きながら上記の修行をしました。
しかし恐ろしいことに、それでもうまくできない。
演出家もなかなか「良し」と言わない。
そして「良し」が出ないまま本番を迎えてしまいました。
大掛かりなセットで、仕込みも大変。
みんなピリピリしていたけれど、それでも
「やってやるぞ」と、リポDを飲み干し舞台に出て行きます。
客席は盛況。盛り上がってる、ウケてる。
でもシーンが終わるたびに体力を消耗し、リポDを飲む。
疲れすぎると人間、うんこを漏らしそうになります。
でも先輩が「うんこ漏らしても俺が拭いてやる! 頑張れ!」
と送り出してくれたので、なんとか最後まで漏らさずやれました。

でも、ちゃんとできてたのかな......?
不安になりながら楽屋に戻り、連絡用のホワイトボード(照明・音響のミスがあったり、役者がダメだったりした箇所が書かれている)を確認しに行くと

「赤白姫good!」

と、書かれていました。
ダメ出ししか書かれないホワイトボードにそんなことが書いてあったら、そりゃあ泣くでしょう!!

この一件以来、出オチじゃない役にもチャレンジできるようになりました。

人が成長する、力を発揮するには

「やりとげたいという強い気持ち、目的意識」
「絶対的権力者の無茶振り、厳しさ」
「修行できる良い環境」
「支えてくれる仲間」
「リポD」

が必須だったんだな、と思います。
鬼滅の刃に戻りますが、
鬼滅の刃での修行はまさにこれだと思うのです。
やっぱりね、なんだかんだ厳しさ大事だよ。あと意志ね。自分にやりたい意志がないとパワハラとかに感じると思いますからね。そこは紙一重だと思います。

わたしはあまちゃんなので、厳しいのとか怒られるのとか批判されるのがとにかく苦手ですが、
目的を達成するために、必要に応じて厳しくしていただくことは優しさだと思っています。
むしろ、厳しく接してくれる人の方が優しいなと。一人で仕事をしていると、師範役も自分だから、厳しくしてもらえていたこの頃はありがたかったなーと今になって思いますね。

師範が欲しい、切実に。
鱗滝さんに会いたい。

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