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桜の妖精 2

駅へ降り立つと、たくさんの人で溢れていた。
ゆっくり深呼吸すると、知らない土地の香りが広がる。
 
駅の近くに、彼女がいた桜の名所があった。
ちょうど見頃を迎えた桜の花が、長く連なっていた。
 
僕は、人の流れに乗って歩き始めた。
桜を写す川の水面と遠くに見える残雪残る山。
自然が創り出す美しさに感動していた。
 
桜並木をしばらく歩いて行くと、前方にいる人陰に目を奪われた。
(彼女だ)
そう思った。
 
僕が見た、いつかのポスターと同じように、白いワンピースのその女性は、細い腕を空に伸ばし、花びらと戯れていた。
少しずつ彼女に近づき、程よい距離で足を止めた。
 
彼女は実在しているのに儚げで、夢なのか?と思うほどに現実味がなかった。
 
僕は、妖精のような彼女を携帯の中に保存した。
 
シャッター音に気がついたのか、彼女がこちらを振り向き
「撮ったでしょ?」
僕の携帯を指さした。
「ごめん、あまりにもキレイで」
申し訳なさそうに答える僕に
「見せて」
彼女は笑顔で僕の所へ寄ってきた。
(怒っていないのかな)
ドキドキしながら携帯の画面を差し出した。
「キレイに撮れてるね」
そう言うとにっこりと微笑んだ。
「あの・・・怒ってない?」
恐る恐る尋ねてみると
「ううん、桜も私もキレイに撮ってくれてありがとう」
そう言ったんだ。
 
僕は画像フォルダの中から、いつかのポスターの写真を彼女に見せた。
「あぁ、そうだ。これ、キミかな?」
彼女は画面をまじまじと見つめ
「・・・そうだね、私だね。そう言えば前にも写真を撮られたことあったかも・・・でも、この写真キレイね」
嬉しそうに微笑んでいた。
 
僕はこの写真を見て、この場所に来てみたかったことを話した。

 

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