#2  家を出発はしたけれど……。・・・ニューヨーク1人旅  2018年11月1日(木)1日目・・・2

緊張のドキドキと嬉しさのウキウキを持って、New Yorkへ出発。
自宅マンションの敷地を出て30mほど歩き、駅の方向へ左折した。
手を振ってくれていた長女の姿が見えなくなり、改めて、さぁ、行くぞ!と気合を入れた。

時間を確認しようと鞄からiPhoneを出そうとしたら、ない! ない! iPhoneがない!
ああーーーっ!!! そういえば、充電器から外した記憶がない。
気持ちがはやり、ふわふわしていて忘れ切っていた。洗濯物には気づけたが、iPhoneはフル充電を意識しすぎて、すっかり忘れていた。

何でもかんでも機械に頼りすぎるのはあまり好きではないが、こればっかりは無ければ旅はできない。
iPhoneの中には、往復搭乗飛行機情報、New Yorkでの観光シティパス情報、宿泊先情報、その他、必要情報が盛りだくさん入っている。
LINEもFaceBookも使う。なによりNew Yorkの写真を撮りまくるカメラ機能は必須だ。そのために2週間前に機種変更したばかりだ。

気持ちよく送り出してくれた長女に「iPhone忘れたから持って来てぇ~」と電話をしたいが、その電話が手元にない。近くに公衆電話もない。何よりもiPhoneがなければ長女の携帯電話の番号すらわからないので、仕方なく後戻りをする。

今来たばかりの道をまたヨレヨレと戻り、長女がスーツケースを持って降りてくれた階段を、今度は自分で持って上る。ううっ、重い。両手で必死に引き上げながら、でだしからつまずいてしまった、自分のうっかりにがっかりしつつ、息も絶え絶え4階に辿り着く。
16㎏の重いスーツケースを離した手はプルプル震え、その指で玄関の呼び鈴を押しながら扉を開ける。驚く長女に息荒く、
「けい…たい……忘れ……た……」
涼しい時季でよかった。これが夏なら今頃私は全身汗でびしょ濡れ、メイクも剥げ落ち、気持ち悪い状態で、再出発しなければならないところだ。
 
充電器につながれたiPhoneは畳の上に転がっており、改めておっちょこちょいの自分の情けなさを恨めしく思った。
しかもこのおっちょこちょいは、この先も幾度となく続くことになる。
 
再び、長女が16㎏のスーツケースを1階まで階段で運んでくれた。
私はボストンバックと襷鞄をかけて。運びながら長女が、
「お母さん、大丈夫? 本当にNew York行ける?」
半ば呆れながら、それでも気持ちよく送り出してくれる。
「いってらっしゃぁ~い。楽しんできてねぇ~」
へっぴり腰で、16㎏のスーツケースをゴロゴロと鳴らしながら、
ヨレヨレと進む私を、再びずっと手を振って見送ってくれた。
30mほど歩き駅の方向へ左折する。デジャブではなく現実の場面。
 
10:25。今度こそ本当の出発。時間に有り余る余裕をもっておいて、心底よかった。そしていよいよ最寄り駅の改札を通ったとき、それまでふわふわしていた気持ちが、わくわくに変わった。
いつもはエスカレーターでホームに上がるが、今日はエレベーターで上がる。何しろ16㎏の大きなスーツケースとボストンバック、襷がけ鞄を下げて、ワクワクしているのだから。これからNew Yorkへ行くのだから。
 
普段は全く縁がない成田空港だが、10ヵ月前に、留学する次女の見送りに行ったばかりだった。行き方は心得ている。1つ違うことは、40分で行ける特急スカイライナーではなく、時間がかかる安い普通列車。
でも、時間に余裕があるのでこれで充分なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?