#187・・・私だって、悲しくて嫌な気持ちになる。ニューヨーク1人旅  2018年11月18日(日)18日目・・・8

お酒が呑めず、日本でも1人で入ったことのないBar。それでも、お誕生日ミッションとして覚悟を決めて入店したルーフトップバー。

グループ用のテーブルはほぼ満席だったが、少し離れた別エリアにある1~2人用はいくつか空いており、何もオーダーしなくても、勝手に座れてしまうようだ。

テーマパークにある小さな小屋のような建物で、ドリンクやフードを出していた。建物内には若くてチャラいギャルねえさんとチャラにいさんが1人ずついた。勇気を出して聞いてみた?
「ノンアルコールOK?」
するとギャルねえさんは、うなずいてくれた。そして、クランベリージュースをオーダーした。なんと、私の英語が通じたのでびっくりした。
すると、ギャルねえさんはなぜか大笑いしながら、隣でクランベリージュースを作っているチャラにいさんに、告げ口するように耳元で何か言っていた。わざわざ私を見ながら。
その姿を見てすぐ理解した。私が英語が話せないこと、年齢と場所があってないこと、田舎臭く見えたのか、ギャルねえさんは、明らかに私をバカにして笑っていた。ムッとはしたが、どうせ話も通じないし、何を言ってもバカにすると思い、思いっきりの笑顔を作って言ってみた。
「サイトシーイング」
するとギャルねえさんは、今度は大爆笑しながら顔の前で両手をパーンパーンと何度も合わせ、隣のチャラにいさんに告げ口のように何か言っていた。あまりにも露骨でわかりやすい見下した笑い方が、コソコソするよりスッキリして、不思議と腹が立たなかった。しかも、こんなにハッキリと明確にバカにされたのは、もしかしたら、生まれて初めてだったかもしれないと思うほど、記憶になかったので、妙に新鮮だった。
けれど、私だってこんなことをされたら、悲しく嫌な気持ちになる。
一気に孤独感が襲ってきた。

私は人種差別をされたことはない。そんな環境に身を置いたことがないからだ。けれど、世界ではまだまだあちこちで人種差別があることは知っている。
今回ギャルねえさんが、どんな理由で私をバカにしたのかはわからないけれど、言葉が分からない異国で、1人ぼっちになった淋しさを感じた気がした。
そして、されたことはないが、人種という自分では選べずにこの世に生まれたことを、バツとされる悲しさを、どこか遠くで感じたような気がした。

けれど、クランベリージュースを受け取ったら、悲しい気持ちはうすくなった。ギャルねえさんはあからさまだったが、チャラにいさんには少しためらいが感じられ、その表情が救いだった。
2人とも、もう会うことはないだろうし、こんな経験もひっくるめての、今回の旅の醍醐味だ。
さあ、クランベリージュースで誕生日を祝おう。

席を探して移動していると、向かい合う2人用のテーブルが空いていたので、その席に決めた。
テーブルの上にクランベリージュースを置き、そっと椅子に腰かけた。
座ってビックリした。
そこは、まるであらかじめ私のために用意されたかのような特等席だった。目の前に、ドーンとEmpire State Buildingがあった。真正面に。

始めは何故か深く腰掛けられなくて、叶姉妹のように椅子の先にチョンと座った。そして目の前のEmpire State Buildingを眺めた。

今までのEmpireは、航空写真で上から見るか、毎日下から見上げていたが、今、目の前のEmpireは、ライトアップの部分がすぐ近くの真正面にあり、
手を伸ばしたら届きそうな近さだ。しばらくじーーーっと眺めていた。

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