#37 New York・Manhattan で初めてのStarbucks入店・・・ニューヨーク1人旅  2018年11月2日(金)2日目・・・8

大して盛り上がらなかった、Chelsea でのプチイベントを終え、教えられた通りTimes Squareまで歩くことにした。本当は明日の朝1番で行くつもりだったのだが、善は急げ。9番街をTimes Squareに向かって歩き出した。

〝ああ、喉が渇いたなぁ〟 
代表者との雑談中は、飲まず食わずだった。しかも、宿の朝食以降、何も口にしていないまま夕方になり、もう喉がカラッカラで、空腹はとっくり通り越していた。

何か飲みたかったが、入れそうな店舗が見つからなかった。なぜなら、外から見ただけでは、何のお店かわからなかったからだ。
日本のように食べ物の看板もないし、外から店内はよく見えない。さらに自販機もない。
仕方なく進んで行くと、しばらくしてStarbucksが見えた。
そういえば、Chelseaをお散歩中にも、Chelseaを出てからも、しょっちゅう見かけた。日本のコンビニのように、ワンブロックに1店舗はありそうだった。Starbucksなら日本でも行き倒しているので大丈夫だろう。
思い切って通りすがりに入店してみた。

少しだけ怖かった。何しろManhattanに来て、まだ24時間ほどしかたっていない。注文できるか、通じるか不安だったし、店内で何か事件事故に巻き込まれたらどうしよう、言葉の通じない旅行者だと見抜かれて、ぼったくられたらどうしよう。ドキドキした。
けれど、精一杯平静を装って、勇気を出して扉を開け入店した。

カウンター席しかない小さな店舗内には、お客は2~3人、キッチンには従業員のお兄さん1人しかいなかった。
注文しようとメニューを見るためにカウンターに目をやると、ない。メニュー表がない。え? どうして? 慌てる。お兄さんは私のオーダーを待っているようだ。でも、何を頼んだらいいの? メニューを見せてくださいって、どう言えばいいの? 

困りながらふと目線を上にやると、壁にドリンクのパネル写真が、何枚か貼られていた。けれども、そのドリンクが、ラテなのかモカなのかコーヒーなのか、そして値段もわからない。アルファベットは並んでいるが読めない。
仕方がないので、カップに薄い茶色の飲み物が入った写真を、無言で指差した。Starbucksのドリンクなら、とんでもなくマズくはないだろう。

ところが、指差した写真は、客側から見る注文カウンターの上に貼られていたため、カウンター内のお兄さんからは見ることができなかった。
するとお兄さんは、私が指差した写真を見るために、わざわざ回り込んでカウンターから出て来てくれた。そして、注文した商品がわかると、頷きながらまたカウンター内に戻り、作り始めた。

何か言われたが当然理解できない。勝手に〝店内で飲むか持ち帰りか〟と言われたと都合よく解釈して、人差し指を外に向け腕を伸ばし、思いっきり日本語で、
「外、外」
と伝えた。本当は持ち帰りますと言いたかったが、とっさに何と言ったらいいのかわからず焦ってしまい、外としか言えなかった。そして、店内に留まることが少しだけ怖かった。
ただ、上手く意思疎通ができていなかったかもしれないが、持ち帰りは伝わったと思う。

支払いは現金。値段の表示もよくわからなかったので、とりあえず10ドル札を1枚差し出してお釣りをもらった。この釣り銭も、合っているのか誤魔化されているのかわからなかったが、そんな小さなことを気にしても、理解できるわけはなく、精神的余裕もなかった。
とにもかくにも、New Yorkにお金を投入できたのだから、よしとすることにした。

後から考えれば、従業員のおにいさんは、無言でパネルを指さしただけの私に、わざわざ回り込んでカウンターから出てきてくれたのだから、英語が喋れなくても身振り手振りでも、お礼を言えばよかったと思ったのだが、そのときはもういっぱいいっぱいで、そこまで考えつかなかった。

店舗を出て、味も値段もわからないまま、とりあえず買ったドリンクを恐る恐る少し飲んでみた。
あたたかいラテだった。ほんのり甘くほろ苦くて美味しい。嬉しくなった。

先ほどのポストカード、今回のStarbucksのドリンクも、何とか購入できた。これで少しお買い物に自信がついて、楽しくなってきた。
少しずつ飲み歩きながら、再びTimes Squareを目指す。

私は、日本でStarbucksに入る時には、必ず店内飲食なので、ドリンクを外に持ち出して、歩きながら飲むのは初めてだった。Manhattanの街なかを、Chelsea からTimes Squareに向かって、Starbucksのドリンクを片手に、軽装で歩いている自分が不思議だった。しゃべらなければ旅行者には見えないだろう。しっかりNew Yorkerに見えるではないか。うっひっひ。

24時間前に初めてNew Yorkに来たばかりで、まだ若干オドオドしているくせに。昨日の夜、宿の近所で迷子になって半泣きしたくせに。

New Yorker気取りの自分に少し酔いしれながら、Times Squareへ向かって再び歩き出した。

平静を装いながら、オドオドとNew Yorkerを気取って歩いていると、ふと、襷掛けバックに結びつけたはずのカーディガンが、ほどけてなくなっていることに気付いた。驚いて後ろを振り向くと、4~50mほど向こうの歩道に、黒い物が落ちていた。〝あ、あれだ〟慌てて走って戻り、無事に黒カーディガンを拾った。ああーやれやれ。

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