#138 車いすに優しいNew Yorkの市バスと、おねえさんへのなぜ?なぜ?なぜ?・・・ニューヨーク1人旅 2018年11月13日(火)13日目・・・3
(前回より)
訳が分からないまま、おねえさんの後について、B61のバスから違う停留所でまたB61のバスに乗り換え、頭の中を大混乱させたまま乗っていた。
途中のバス停で車いすの男性が待っていた。どうやらバスに乗るようだ。
どうやって乗るのだろうと思って見ていると、前の乗車口の扉が開き、
ウィ~ンとスロープが出てきた。
すると運転手さんが外に出て、車いすを車内に押し入れ、そのまま運転席に座るとボタンを押して、またウィ~ンとスロープが動き、壁に収まった。
そして何事もなかったようにバスは再び走り出した。
Thank youとお礼を言う乗客に、どうってことないさとでも言っているような運転手、その一部始終を、当たり前のように優しく見守る乗客たち。
New Yorkの日常の一コマを見られて嬉しかった。
New Yorkの街は、車いすに優しい街だということが分かった。なぜなら乗客の誰一人として嫌な顔をしたり、不機嫌になった人がいなかったから。
日本にはない光景を見られたことが嬉しく、私も早く優しいNew Yorkerになりたいと思った。
バスはどんどん進む。そしていつまでたっても、Van Brunt St.(バン・ブラントストリート)の文字は見えてこない。
すると、遠くに見覚えのある、青と黄色のでっかい建物が見えた。IKEAだ。
IKEAが見えてきてしまった。おねえさんはスケッチブックに夢中で気づかないようだ。焦ってきた。なぜなら、IKEAまで行ってしまったら、目的のVan Brunt St.(バン・ブラントストリート)を通り越したことになり、行き過ぎだ。
IKEAに到着してしまう前に、この辺で降りなければ。
どうしよう、どうしよう。そして、もしおねえさんもIKEAに行くのなら、このまま乗り過ごしてしまいそうだ。どうしよう、どうしよう。
焦っているうちに、バスはとうとうIKEAに到着してしまった。もちろんNew York のIKEAも見てみたいが、まずはVan Brunt St.(バン・ブラントストリート)だ。
ふと、根拠も確信もなかったが、何となくIKEAがバスのルートの端っこに位置していて、駅との折り返し地点のような気がした。だから次のバス停で降りて反対方向のバスに乗れば、また駅の方向に行けるのではないかと思い、そのまま乗って、次のバス停で降りることにした。
降りる前に、何とかしておねえさんにお礼を言わなければ。
だが、Thank youだけでは何に対してThank youなのか伝わらないと思い、急いで検索サイトで〝親切にしてくれてありがとう 英語〟と入力すると、【Thank you for your kindness.】と出た。
その英文を、iPhoneのメモ帳にコピーし、下車合図のボタンを押した。そして、降りる直前に立ち上がっておねえさんの席に行き、メモ帳のコピーを見せた。再び無表情にコクンとうなずいたおねえさん。もう2度と会うことはないだろう。私の思いが伝わったかどうかはわからないが、やれることはやった。あースッキリ。
そしてそこがどこだかわからないまま、IKEAの次に止まったバス停で降りた。すると、なんと、おねえさんも一緒に降りてきたではないか。
ええ? どうして? おねえさんはいったいどこに行きたいの?
IKEAじゃないの? もしかして乗り過ごした?
聞きたいことは山盛りあった。
Smith-9 Streets Stationで私の「IKEA OK?」だけで私がIKEAに行きたいと考えてることが本当に分かったの? どうして途中で乗り換えたの?
B61のバスに乗ってたのに、乗り換えたらまたB61だったのは何故?
私と一緒に降りたのは何故? 本当はどこに行きたかったの? 学生?
絵を描いていたみたいだったけど、何をしている人?
バスを降り、おねえさんは私の後ろを付いてくるでもなく、同じ方向に向かって離れて歩いてきていた。
私はとにかくIKEAから離れたくて、Van Brunt St.(バン・ブラントストリート)方面と思われる方向へ歩いた。
しばらくして振り向くと、もうおねえさんの姿はなかった。
英語が話せたら楽しくおしゃべりできたかもしれなかったね。
たくさんの謎も解けたかも。ま、旅の良い思い出です。