#21 JFKターミナル内・最後の親切な日本人「押してくださいぁ~い」・・・ニューヨーク1人旅 2018年11月1日(木)1日目•••21

John F. Kennedy International Airport(ジョン・F・ケネディ国際空港)到着ロビーに出ると、数メートル先に、日本人女性職員の2人連れが歩いているのを見つけた。もしかしたら、日本語が通じる最後のエリアかもしれない。そうそう、おトイレの場所を聞かなければ。歩いてきたおねえさんたちに、
「すみません、おトイレはどこですか? スーツケースを持ったまま入れますか?」
と聞いてみた。おねえさんたちは向こうのゲートを指さしながら、
「あのゲートを出て、右に曲がった奥にありますよ」
「ありがとうございます。あのぉ~ゲートを出たら、もう日本語は通じませんか? 今ここが、日本語が通じる最後の場所ですか?」
と聞くと、そうだという。
ならばものはついでと、JFKからジャマイカ駅、そして宿があるAtlantics Avenue - Barclays Center(アトランティック・アベニュー-バークレイズ・センター)駅までの行き方を聞いた。
もちろん事前に宿のオーナーさんからはメールで教えていただいていたが、私の事だ、とんでもない間違いをして、とんでもない所へ行ってしまう可能性は大きい。

2人のおねえさんは、オーナーさんから送られたメールを、プリントアウトした用紙を読んで、行き方やホームが並んでいる絵を書いて、丁寧に説明してくれた。
50歳半ばで、初めての海外、初めての1人旅、初めてのNew York3週間の旅だと話すと、
「ええーーーっっ!!」
と、たいそう驚きながらも、
「楽しんでくださいね」
と言ってくれた。
成田空港Aカウンターのおねえさん同様、数十分も足を止めて、あれこれ教えてくれたことに感謝し、大きな声の日本語で、
「ありがとうございましたっ!!!」
とお礼を言い、トイレに向かった。

実は最後のゲートを抜けるのが少し怖かった。ドキドキしていた。
だって、そこを通り抜けてしまったら、一切の日本語が通じない。
何かに困っても、何をどう困っているか説明することができないし、
たとえ困りごとを察してもらって答えを教えられても理解できない。
異国の地でドーンと孤独のどん底に突き落とされることになる。

けれど、今はそれよりも、おトイレおトイレ。
ゲートを出て、ゴロゴロとスーツケースを押しながら進んでいると、
おねえさんたちが遠くから後をついてくる。
〝トイレの場所は、さっきちゃんと聞いたから大丈夫なのになぁ〟
と思いながら、教えてもらった通りに右に曲がった。

ところが、トイレは見当たらなかった。トイレらしき表示もない。
ゲートを通ってしまったので、もう日本語は通じない。
〝どうしよう……〟立ち止まり固まって困っていると、
ずっと後ろから付いてきてくれた2人が、
「その奥ですよ」
と教えてくれた。言われた通り奥に進むと、襖1枚以上ありそうな、大きくて高さのある、銀色の扉があった。表示も絵文字もなかったが、扉の向こうはトイレなのだろうという察しはついた。
でもどうやって入るのだろう。ドアノブもなければ、スライドするための指を入れるくぼみもない。再び固まって困っていると、後方、遠くの方から、「押してくださぁぁーーーい」
と声がした。

おねえさんたちは、私がトイレに入るまでわざわざついてきて、見ていてくれたのだった。
大きな銀色の扉をグーッと押すと、スーと奥に向かって開いた。
振り返り頭を下げる。見守ってくれた2人のおねえさんたちは、安心した顔で持ち場に戻って行った。

ここまで多くの人の親切にふれた。
成田・JFK空港の職員たち、キャビンアテンダント、機内で抹茶シュークリームをくれたオジサン。
1人でも平気だと思っていたが実際には平気ではなく、心細さや不安があった。でも、その度に尋ねると、みな驚くほど親切に教えてくれて、手伝ってくれた。JFKのおトイレで改めて感謝の気持ちがドワーッと沸いてきた。

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