#71 ない、ない、郵便局がない。・・・ニューヨーク1人旅 2018年11月5日(月)5日目・・・2

今日の約束は17:00に1件のみなので、曇り空で今にも雨が降りそうなお天気だが、宿の周辺を歩いてみよう。そうそう、郵便局に行って、お手紙も出さなくちゃ。
チェルシーで買ったカードに、傾聴カウンセリングの師匠宛てにメッセージを書いたのだ。

師匠は、私のNew York行きの夢が叶うことを、私以上に喜んで一生懸命応援してくれていた。傾聴に出逢わせてくれて、楽しく生きることを教えてくれた。そんな師匠に、散々憧れたNew Yorkから、どうしてもお礼が伝えたかったのだ。昨晩書いたカードを、New Yorkから投函したかった。

宿を出て、オーナー・陽子さんに教えられた通り郵便局へ向かった。
だが私は、方向オンチ選手権で世界一に輝ける、筋金入りのスーパー方向オンチだ。
案の定、郵便局は見つけられず、ブルックリンの街を、バス通り沿いにまっすぐまっすぐ、ひたすらまっすぐ進んだ。
どの方向に、どこに向かって、どのくらい歩いているのかも全く分からず、ひたすら歩いた。
飽きることなく、疲れもしなかったのは、日本とは違う建物、街の雰囲気、すれ違う人、走っている車、すべてが珍しく、New Yorkブルックリンの街を歩いていることが実感できたから。ウキウキしながら歩いていた。

残念だったのは、今にも雨が降りそうなどんよりした空模様と、バス通り沿いに並んでいる店舗のほとんどが12時開店だったため、賑やかさに欠けていたこと。それでも、歩いているだけで幸せだった。

1時間近く歩いただろうか、段々と辺りが賑やかになってきた。
街行く人も増え、開店している店舗も多くなってきた。
きっと、宿の最寄り駅である、Atlantics Avenue - Barclays Center stationから次の街に来たのだろう。

マップアプリを開いて郵便局を探したが、動きが鈍く上手く作動しない。
加えて地図が読めない女は、iPhoneの画面も読めなかった。
けれど、これだけ賑やかな街だ。郵便局はきっとあるにちがいない。
警備服のおじさん、ホテルのドアマン、すれ違うお姉さんなど、いろいろな人に聞いた。
「Excuse me.えーっと、あの、 post office Where?」
文法はめちゃくちゃだが、これくらいなら私でも何とか聞けた。
けれど、誰もが当たり前のように、流暢な英語で答えてくれるので、さっぱり理解できなかった。きっとポッカーンとした顔をしていたのだろう。
みな指で行く方向を指してくれた。

「え? こっちに2ブロック行って、右に行くの?」
思いっきり日本語だ。
さっきカタカナ英語とはいえ、Where post officeなどと、いかにも話せますを装って何気に質問したが、もう面倒になった。指を指すホテルのドアマンと〝右に行くの?〟と日本語で聞く私。
相手が英語でこちらが日本語。一見かみ合っていないようだが不思議なもので、相手もこちらも何となく言っていることがわかってしまうのだ。
とりあえず〝Thank you〟とお礼を言い、指をさされた方へ歩き出す。
すると、さらに賑やかな通りに出た。

ふと先を見ると、ダンキンドーナツと31アイスクリームが、隣同士くっついているお店を発見。ダンキンはJFKでも見たし、サーティワンは日本でもよく見かける。どちらも日本では、ほとんど利用してはいないが、それでも見慣れた看板や文字はホッとする。そして、そのお隣にBarnes & Nobleを見つけた。おお、こんな所に。偶然見つけたBarnes & Nobleは、ダンキンや31を見つけたのと同じくらいホッした。
たった数日前Union Squareで入店しただけなのに。

その他、美味しそうなマフィンやサラダを売る店、露店で雑貨を売っていたり、お肉のベンダーもいた。多くの往来で賑わっている。楽しいなぁ。

もう1度マップアプリを開くと、郵便のマークが表示された。そしてそれは自分の現在地と重なっていた。ということは、郵便局は前後左右、どこかのビルの中ということだ。けれど、日本のようにわかりやすい表示も看板も見当たらず、初めての観光客にはわからなかった。

ベンダーのおじちゃんに、
「post office Where?」
と聞いてみた。おじちゃんは手を止めることなく、忙しそうに荷物を整理しながら、無言で私の背後にドーンと建っているビルをサッと指差し、またすぐに忙しそうに作業に戻った。けれど、それは細かい彫刻が施された、歴史がありそうな重厚な建物。
〝はぁ? これのどこが郵便局なの? おじちゃん、いい加減なこと言わないでよ〟と思ったが、調理準備と接客に忙しい中、ろくに英語もしゃべれないくせに聞いてしまった自分が申し訳ないと思いつつ、相変わらずカメさんより動きの遅いマップアプリを見ながら、周辺をグルグルウロウロと探し回った。
人に聞いても聞いても聞いても、すぐ近くだということは理解できたが、
いったいどこなのかわからない。そのうち気分はお天気と同じくドヨヨ~ン。相変わらずマップアプリは、郵便のマークと自分の現在地を重ねている。
どうして見つからないの? 
そしてグルグルウロウログルグルウロウログルグルウロウロを繰り返す。
ない、ない、郵便局がない。
こんなに聞いても探しても見つからない郵便局。
何だか心細くなってきて、泣きたくなってしまった。

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