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中国のSF『三体』を読んで

話題のSF、『三体』を読んでみました。まだ読んでない人、読むか迷っている人、もう読んだ人。私なりにおすすめポイントをまとめてみたので、ゆる〜く楽しく読んでいただけたら嬉しいです……!
なるべく避けましたが、ネタバレ含むところには【】を付けています。

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去年9月に中国へ行ってからというもの、食べ物だったり漫画だったり言語だったり。ゆるゆると中国ブームが続いていた私は、中国のSF大作と聞いて喜んで手を出しました。

『三体』は膨大な知識ととんでもない想像力をノンストップでぶつけてくる、とっても読み応えのあるお話でした。緩急をつける、とよく言いますが、これは急急急!!って感じで、読むにはそれなりの体力が必要かなと思います。でもそれがよかったです。

あらすじ

本書は、2015年にSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞した作品。オバマさんも読んでいたことで有名です。それが今年7月、日本でも邦訳版が出版されました!

文化大革命で父親を惨殺され、失意の日々を過ごす研究者・葉文潔は、ある日巨大パラボラアンテナを備えた秘密の軍事基地にスカウトされる。そこでは人類の命運を左右しうるプロジェクトが進行していた。その数十年後、ナノテク素材の研究者・汪淼は、ある軍の会議に呼ばれ、科学者が立て続けに自殺している事実を告げられる。その調査に協力することになった汪淼は、三つの太陽を持つ星を舞台にしたVRゲーム『三体』の存在を知る。ゲーム『三体』の目的は?文潔の関わったプロジェクトとは?

といったお話です。

おすすめポイント① 装画がかっこいい

まず、この本との出会いなんですが、ツイッターでとあるコンセプトアーティスト(イラストレーター)の方が読んだよ〜と呟いていたことで知ったんです。その方が装画をきっかけに読んだのかは不明ですが、とにかく装画がかっこいい。
あとがきによると、装画を担当されたのは富安健一郎氏。知らなかったんですが、この方、ドラクエやファイナルファンタジー、バイオハザードなどを手掛ける世界的にも有名な方なんですって…!どうりで表紙に見惚れてしまうわけですよ。

おまけにもう一つ、この本、カバーをめくると宇宙空間のような柄がデザインされているんです!これはたまらない。本に愛着が湧いてきます。

おすすめポイント② 科学的な要素が満載

SFなので、当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが(実はあまり本格的なSFを読んだことがないので、どの程度科学的要素が盛り込まれているのが普通なのか、さじ加減がわからない)、全てきちんと理解するにはかなり高い専門性がいるなぁと思います。
科学的な知識があればあるほど深く楽しめて、興奮が止まらないのではないでしょうか。なんてったってメインは宇宙物理の話。理解できるかは置いておいて、科学の中でわくわく度はピカイチ。
少し知識のある方は多いにときめいてしまってください。もう読んだ方、ときめきましたよね? 専門ど真ん中の方はにやりとしてしまうんだろうな。はぁ、、、ごちそうさまでした。

作中大きな鍵となるVRゲーム『三体』にも、科学的要素が詰め込まれています。本書の題名にもなっている『三体』はそこからきたのね!となるのも楽しいポイントでした。

【ネタバレ】
【特に第三部の〈智子(ソフォン)〉のところ。陽子の次元展開、量子もつれを利用したシステム。ヤバくないですか…… この本の中で一番わくわくしました。】

おすすめポイント③ 大史

まだ読んでない方、大史って何?ですよね。すみません。登場人物です。史強という名前なのですが、史兄貴、というニュアンスで大史と呼ぶんだそうです。初めは柄の悪い刑事として描かれていてあまりいい印象じゃなかったんですが、徐々に株を上げてきて、、、最後にはあなたもきっと頼れる兄貴、大史のことが好きになると思います。
作中には理屈っぽいキャラばかり、しかも科学者たちのメンタル弱め(笑)なので、読者にとっても他の登場人物たちにとっても欠かせない存在です。

【ネタバレ】
【私は大史の究極の法則のところから、だんだん好きになってきて、最後の “虫けらはいままで一度も敗北したことがない” でやられました。大史!ついていきます!】

その他感想【ネタバレ含む】

おすすめポイント②で触れたように、筆者の科学的な知識はもちろんなのですが、中国の文革や、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』がストーリーを進める上での動機付けになっていたりして、筆者の知識と経験の深さを感じさせる。それが、『三体』の世界をぐんと広く深くしているんじゃないかなぁ〜と思いました。

私個人的にいいなと思ったのは、「人類への失望」をうまく利用しているところです。私も環境問題を勉強していて、人類が滅亡するのが一番いいのでは?という感情になったことがあります。今はそうは思っていませんが。
【環境問題や文革などを背景に人類の醜さに失望している人たち、その人たちが人類以外の力を頼ろうとする。】
私はそこに、さらに人の弱さを感じました。あぁ、人間らしいなぁってなりました。

まとめ

読み応え抜群な『三体』ですが、まだ三部作の一作目。二作目の『暗黒森林』は来年邦訳が出るそう。楽しみです。
『三体』読んでみようかなって思ったり、そうなんだよなって共感したり、そういう見方もあるのかって気付きを得たりしてもらえていたら嬉しいです。
ここまで、稚拙な文章で長々とつづらせていただきましたが、中国からこの本が出たということが一番面白いところじゃないかと思っています。十四億人の人口を抱え、歴史も古い中国。これから日本でも、より多くの現代中国の書籍が読まれるようになりそうだな。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
自分のアウトプットのために、投稿はゆるく続けられたらいいなと思っています。また読んでくださったら嬉しいです。


なっぱ

※見出し画像はみんなのフォトギャラリーより、オオタユウキさんのものを使わせていただきました。

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