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#46 サバイバル戦略

~痛みを伴うダウンサイジングは誰のためのものなのか~

筆者は経済学の門外漢ではありますが,この緊急事態宣言下で起こっていることを理解できる範囲で平たく言えば,マクロで見るに経済がシュリンクし逆の乗数効果が発生している,ということでしょう。つまり,自粛により消費が冷え込むことで急速に経済が縮小しているということであり,それに対して経営者は柔軟に対応しなかればなりません。

経営者の仕事は端的に言うならば,「環境変化への対応と経営資源の適正配分」です。ひとつ目に関しては,ビジネスモデルを変えてニーズに対応し新たな需要を取り込むという,ということです。しかしながら二つ目に関しては,会社の規模により事情が変わってくるでしょう。比較的小さな事業規模であれば,古くなったビジネスモデルのスラック(余剰資源)を新規事業に振り分けるということで済みます。

それに対して事業規模が大きい場合は,組織化機能化が進んでいるために,新たな需要の開拓とスラックの新規事業への再配置にタイムラグが生じます。このタイムラグの間に資金ショートが発生し会社が立ち行かなくなるのです。ですから,その間のキャッシュフローが大事なのは当然のこととして,生き残るため大事なのは「ダウンサイジング」の意思なのです。

経営者は事業継続のために,①キャッシュフローの確保を最優先に動いています。つまり,緊急融資制度,補助金や助成金の公的支援,納付等の減免や後納など,何とか日繰りを保とうとします。しかしそれだけではダメで,同時に②ダウンサイジングと③ビジネスモデル変換をしなければなりません。極端な言い方をすれば,先を読めない経営者は①だけ,先を読める経営者は①と③,そして先を読み痛みを受け入れる覚悟のある経営者は①②③の全てを行うのです。どの企業の生き残る確率が高いのかは,火を見るより明らかでしょう。

予想だにしなかった状況に置かれた時,生き残る可能性があるのであれば,思考停止状態,お手上げ,I surrender になることは避けなければなりません。しかしこの時に気を付けなければならないのは,根拠なき楽観主義に陥らないこと直面しなければならない事実に目を背け希望的観測で行動しないこと,つまり正常性バイアスにより破滅の道を進まないこと,です。

ダウンサイジングとは事業規模を縮小することであり,そこには人員整理=リストラなどの痛みを伴うことは必然です。そしてダウンサイジングは,自分だけ生き残るために従業員を犠牲にするというのではなく,みんなが生き残るために痛みを分かち合う,という思想で行うことが大切です。

先の東日本大震災時には,一旦従業員の大部分を会社都合退職としてダウンサイジングし,操業度が回復した10か月後に殆どの従業員を再雇用して生き延びた,という会社がありました。その時の経営者は,10か月後に再雇用できるように事業を立て直すから待っててほしい,と言って従業員に約束したそうです(従業員はその間,失業保険が受け取れるわけです)。

ダウンサイジングの痛みを避けてそのまま雇用を維持した場合,きっと会社は倒産し事業も雇用も喪失するという最悪のシナリオに陥ったのだろうと思います。サバイバル戦略とは,こういうもののことだろうと思います。

〔こありん先生チャンネル〕@(・●・)@YouTube配信しています。

#ビジネス #経営 #エッセイ #ダウンサイジング #サバイバル #緊急事態宣言


正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html