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#77 パズルとコンサルティング

~コンサルタントとしての私の最大の強みは,無知になりいくつかの質問をすることである P.ドラッカー~

最近,コンサルタント志望の若者が多いと聞きますが,コンサルタントとはいったいどんな職業なのでしょうか。ひとつには,コンサルタントは経営者の意思決定の判断材料を提供する職業,と定義することができるでしょう。

経営者は何をやらないといけないかという個々のタスクは分かっているものの,日々の業務に追われてどこから手を付ければよいか分からなくなる,という状況に陥りがちです。そこでのコンサルタントは,どのようなシナリオに沿ってどのような優先順位で手を付ければいいか,という大きな絵を描くことが求められます。

ところで私見ですが,コンサルティングは「枠と軸」に分類されると考えています。「枠」とは,なんらかのフレームに収めるもの,混沌としたものを整理したり構造化したりして解決の糸口を見つけるもの,あるいは実際に解決を目指すものです。一方「軸」とは,理念やミッションに沿って先行き不透明な未来に向かって,ひとつひとつ適切な意思決定をしていく支援をするもの,ということになるでしょう。

「パズル理論 意思決定にみるジグゾーパズル型と知恵の輪型」(前川佳一著/白桃書房/2013年5月)では,研究開発は,ヒト・モノ・カネという経営資源あるいは時間を投入すれば必ずアウトプットに至る「J型:ジグゾーパズル型」と,なんらかのブレイクスルーを必要とする「L型:知恵の輪型」とに分けて論じられています(なお本書では,研究と開発は明確に分けて定義されています)。

そう考えると,ジグゾーパズル型の意思決定というのは,正解があってその「枠」にはめる,つまり現在のあるべき姿と現状とのギャップを埋める,過去から現在に橋掛けられた問題解決的なアプローチということになるのでしょう。一方知恵の輪型の意思決定というのは,正解は分からないけれども,何らかの「軸」としての指向性があって最適解を目指しているうちにブレイクスルーにいたる,現在から未来に投げかけられた課題達成的なアプローチになるでしょうか。

コンサルタントの中には,結果にコミットできないコンサルタントはダメだ,利益に直結し計測可能な成果を提供できなければ意味がない,ソリューション・コンサルティングでなければならないと主張する人たちがいます。一方,生産性向上や収益性向上に偏重することは全体最適的戦略に必ずしもそぐわない,コンサルタントは俯瞰的に全体最適を志向できるストラテジック・コンサルティングでなければならない,と主張する人たちもいます。

前者は明確なソリューションを提供するコンテンツ型であり,後者は一定期間に約された役務を提供するというプロセス型であるということができます。また契約形態でいえば同じ業務委託契約でも,前者は請負契約に近いものでもあり,後者は準委任契約に近いものでもあります。これらはどちらが優れているかということではなく,そのコンサルタントのポリシーや志向の問題であり,またクライアントの状況や時代の要請によって求められるものが変わってくるのだろうとも思います。

それでは,今の時代はどうなのかというと,筆者は個人的にはパズルでいえば「L型:知恵の輪型」のブレイクスルーが求められてきているのではないかと感じています。新しい生活様式が取り沙汰される中,何が正解なのかが分からないフェーズにおいては,コンサルタントはフレキシブルに,「軸型」のコンサルティングを心掛ける必要があるのだろうと思います,正解がないことへの恐怖を乗り越えて

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正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html