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#85 資金調達は第一関門? Entrepreneurship #5

Twitterまんがの「社長と魔法のランプ」とのコラボ企画の第5弾,今回は経営者なら一度は経験する「お金の苦労」について,思うところを書いておきたいと思います。

カネで苦労してこそ一人前?

私が独立した時にお世話になった経営者の方に言われたことは,「金のことで血のションベンが出るくらいの経験をせんと一人前にはなれない」ということでした。血尿が出るということは腎不全だから死んでしまうのでは,と話半分に聞いていたところ,実際に自分もこれを経験することになりました。それは資金繰りに窮していた暑い夏の日のこと,私は心労から尿道炎になってしまい,それでも激痛をこらえながらこれで自分も一人前になれたかな,ということはこれで資金繰りも上手くいくかも,などと考えていたものでした。

閑話休題。ほとんどの起業家にとって資金調達は,事業開始時に経験するビッグイベントです。退職金や貯金を合わせた自己資金を元手としてそのままのボリュームで事業を始めるか,間接金融や直接金融で財務レバレッジを効かせて商売を始めるか,の選択をすることになります。

資金調達で財務レバレッジを効かせる

日本では,創業時に金融機関からお金を借りるという間接金融がもっとも一般的で,特に日本政策金融公庫などの創業融資が活用されます。日本政策金融公庫の融資枠は形式上は自己資金の10倍までとなってますが,現実的には2倍程度です。また融資額は無担保無保証の場合は最大で1000万円といったところです。したがって,普通に個人が起業してビジネスを始めるとすると初期投資額は2000万円以内というのが目安となるでしょう。

それ以上の初期投資で事業を始めようとすると,金融機関からの間接金融(借入)だけではなく,投資家からの直接金融(投資)を検討するということになります。投資されたお金は返済する必要がないので,ランニングにおける資金繰りは楽になります。しかしながら投資家は株主として発言権を有するようになることから,経営の独自性の担保とのトレードオフになります。欧米型の起業家は,Pitchと呼ばれる投資家向けのプレゼンテーションで投資家の関心を惹くことにに注力するようです。TV番組「マネーの虎」がもっとソフィスティケイトされたもの,と思っていただければよいでしょう。

最大キャッシュアウトに留意する

このように普通の起業家にとって資金調達はストレスフルなので,創業支援の現場では資金調達自体が目的になってしまているようなケースを散見します。本来は開業した後に経営を安定させて収益化することが目標なのに,開業がゴールに,もっといえば資金調達できたことで満足してしまっているのです。このようなケースでは,ランニング中に資金がショートして立ち行かなくなるパターンに陥りがちです。事業は単月で黒字化するまで赤字が累積するわけですから,どの時点で累積赤字が最大化するかという最大キャッシュアウトを見積もったうえで,資金調達額を決定しなければなりません。

最大キャッシュアウト

ところで,このように事業計画や資金計画を立ててPDCAを回していく,というのが有効な起業の方法なのでしょうか。あるいは財務レバレッジを利かさなければ事業は成功しないのでしょうか。実は,背伸びして資金調達をしないでも,自分の身の丈に合った「手持ちの経営資源」だけを活用して起業する方法もあるのです。そのような考え方について,次回からは今もっとも注目すべき Entrepreneurship 理論であるエフェクチュエーションについて解説していきたいと思います。是非,ご期待ください。

社長お助けランプの精 G. G.

中小企業お助けまんが「社長と魔法のランプ」

正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html