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#75 お金に色はあるのか

~財多ければ,身を守るに貧し,害を買ひ,累ひを招く媒なり~ (徒然草 第38段)

日本では昔から「悪銭身に付かず」と言われています。また「清貧の思想」という本がベストセラーになりましたが,「金儲けは汚いこと」というような風潮が無きにしもあらずです。これは「判官びいき」の勧善懲悪と合わせて,日本人の国民性なのでしょう。

お金に色があるかないかについては,筆者は個人的には「お金自体に色はない」と考えています。お金自体に色はありませんが,その出どころや使い途は様々です。その違いであたかもお金に色があるように思えてしまうのではないでしょうか。お金に色が見えるのは相手の問題であると同時に,それを解釈する自分自身の問題でもあります。

お金の使い途でいえば,将来が不安で際限なく貯蓄に励む人もいれば,今を楽しむためにある程度の計画性をもってお金を使う人もいるでしょうし,極端には「宵越しの金は持たない」がモットーの豪胆な人もいるでしょう。

お金の稼ぎ方でいえば,コツコツと働き労働の対価としてお金を得る人もいれば,何らかのアイデアで効率的にお金を稼ぐ人もいるでしょうし,何の苦労もなく先祖代々の遺産で裕福な生活を送る人もいるでしょう。

また受け取る側でいれば,人は人として誰がどんな稼ぎ方をしてどんな生活をしても気にならない人もいるでしょうし,楽して稼ぐのは悪だというレッテルを貼る人(きっと羨望や嫉妬心にさいなまれている)もいるでしょうし,自分ももっと効率よくお金を稼ごうとして(それが他人から見て好ましい手法と映るのか,あくどい手法と映るのかは別として)工夫する人もいるでしょう。

これらはすべて人間の問題であって,お金の問題ではないということです。お金は単に「財やサービスを交換するための信用」を形にしたものであり,無味無臭で色も無ければ形もないもの,ということなのです。

そう考えれば,自分がより多くの財やサービスを得たいと考えれば,お金を稼ごうとあくせくするのではなく,自分の信用を高める努力をすることが先決です。そしてその根本には,自分自身への信頼すなわち自己信頼=Self Reliance があることは自明のことです。

ところで企業活動の目的は,社会や顧客に対して付加価値を提供し続けることであり,そのために利益を上げて会社を存続=ゴーイングコンサーンさせていく必要があります。会社の利潤は,「顧客の創造」の成果を判断するための基準であり,将来的なリスクを回避するための保険であり,より良い労働環境形成の原資であり,社会サービスなど社会資本の充実に寄与するものです。

企業の存在理由がそういうものであるならば,企業は地域や社会への貢献し世の役に立つ活動をする結果として利益を得る,つまりち企業の利益は社会に貢献した報酬であるということが言えるでしょう。松下幸之助翁いわく,「自然の理法にかなう経営をする,すなわち良いものを作り,適正利益で販売し,きちんと集金すること」が「商の基本」ということです。

エシカル消費に消費動向が動いている現代社会においては,社会や顧客から企業活動に対する信用を得ることこそが,利益を生み出す源泉なのです。この時代,企業が天地神明恥じることなく,共生共創の社会実現に寄与する活動を行うことができるか,その真価が試されているのです。

〔こありん先生チャンネル〕YouTube配信しています@(・●・)@

#経営 #コンサルタント #エシカル消費 #お金の色 #自己信頼

正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html