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#65 現代日本マネジメントの課題

~「共感と共生」を基盤とする未来へ~

筆者は,現代日本企業におけるマネジメントの課題とは,大企業はイノベーション創出,中小企業は生産性向上である,と考えています。

まず大企業について,昭和の高度成長期,右肩上がりの時代には,終身雇用や年功序列という制度の中で,同質的価値観を共有する日本型経営が奏功し組織の機能性を十分に発揮しました。そうして日本はGDP世界2位の経済大国となり,「ジャパン・アズ・No.1」と謳われた1980年代を迎えることができたと言えるでしょう。 

ところがその後日本のバブル経済は崩壊し,失われた20年とも30年とも言われる,長い経済停滞のトンネル時代に入ります。「明日は今日よりきっといい」と根拠なく信じられた時代は終わり,先行き不透明で自らのアイデンティさえ危うい時代を迎えることとなりました。この時期に明らかになったことは,日本の大企業は環境変化に弱い,ということだったと思います。この20年間に欧米企業が特に情報技術のイノベーションを推進したのに対し,日本企業はコスト削減による利益確保に注力したため新たな市場で競争優位性を生み出すことができず,国際競争力を弱めていきました。

今,コロナ禍で世界情勢が激変しており,世界中のシステムや体制が変革を余儀なくされています。その中でもこの20年間足踏みしてきた日本の大企業は,「もう待ったなし」の状態にあるといえます。今ここで,組織構造や組織文化,組織人の価値観や働き方を見直して,真にイノベーションを創発する基盤を整備することが,大企業の課題なのだと考えます。

次に中小企業について,生産性の低さに言及するアトキンソン氏の主張にも一部納得できるところがあります。中小企業はそもそも経営資源が少なくパワー不足であり,またインフラが未整備なため資源間のシナジーを発揮できない,ということだと理解できます。また同じような文脈で,中小企業の事業承継がうまく行かないのは,経営と所有の分離ができていないノウハウが属人化していて移転可能な状態になっていない,そもそもプロ経営者が流動化していない,ということだと,個人的には解釈しています。

日本の中小企業には,モノづくりの独自技術やイノベーションの種があるものの,それを展開するだけの経営思想や経営基盤が整備されていないということが課題なのだと考えます。

このような大企業と中小企業がお互いの不足機能を補完することができればよいのですが,オープン・イノベーションのような取り組みもそれほど大きな成果を上げていないように見えます。その原因は,そこに「資本の論理」が働いているから,ということなのではないでしょうか。筆者としては,中小企業の「ゼロ→イチ」の発想力を大企業の「イチ→ヒャク」の展開力で支配しようとしているからなのではないか,と感じることが多いのです。

この課題を解消するキーワードは「エシカル」である,と筆者は考えています。これからの時代は,「優越と支配」の関係ではなく「共感と共生」の時代へと変わっていくのだと思います。情報化により世界は小さくなっていき,誰しも隣人に無関心ではいられなくなるでしょう。企業活動においても,お互いに信頼し連携する「共感と共生」が求められるようになるものと思います。いかに上手く経営するかという「経営哲学」ではなく,何のために経営するのかという「哲学的経営」が,今後さらに重要になってくるでしょう。

国家は安全保障や治安維持などイレギュラー事項の排除に努め,企業はESG投資でエシカルに共感できる企業活動と連携していく。消費者は情報技術の発展によりサプライチェーンのあらゆる情報にアクセスしエシカルな活動を行っている企業の商品やサービスを購入する。そうして,社会は隣人に関心を払い「共感と共生」を基盤とした文化を醸成させる。そんなSDGsやESG経営といった,エシカルを支点としたレバレッジ経営が現実化する社会を,筆者は希望的に夢想しています。

〔こありん先生チャンネル〕YouTube配信しています@(・●・)@

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正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html