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映画感想【シンドラーのリスト】

皆さんこんにちは、手塚悠生です。
とんでもなく多忙でして、結構期間あいてしまってごめんなさい。

今日は先日観た映画【シンドラーのリスト】について感想をまとめました。
まだ映画をご覧になったことがない方で観たいと思っている方は、冒頭のみ読んで一度閉じることをおすすめします。
※あくまで「映画だけを見た感想」であることをご理解ください
 オスカー・シンドラーさんについての歴史を熟知しているわけではありません

【あらすじ等】

この映画は1993年にアメリカで公開された、スティーブン・スピルバーグ監督のアカデミー賞初受賞作品です。

舞台は第二次世界大戦のドイツ
主人公のドイツ人実業家:オスカー・シンドラーが、ポーランドで起業する際に、ユダヤ人の大変優秀な男性に声をかけ、共に会社を拡大させていきます。

日に日に激化する迫害(ホロコースト)の惨劇を目にするうち、彼は密かにユダヤ人救済を考えるようになる。

ここまでが簡単な映画の概要・あらすじです。
もし既に面白そうと感じた方がいましたら、
ぜひここで記事を閉じて本編をその目で観ていただきたいです。

また、この映画は事実を元に制作されたものですので、史実として知りたいという方は主要人物の名前を検索してみてください。
実在した彼らの表情がインターネット上の記録として見られます。


【第一印象】

まずは私が感じた登場人物の第一印象をまとめたいと思います。

〇オスカー・シンドラー
彼は欲に素直な男だと感じました。
頭は切れますし空気読みも上手で、軍の上層部にも着々と味方を増やしていきます。
それこそ冒頭のパーティーでは、話をしたいお偉いさんに直接媚びるのではなく、まずはウェイターを通してお酒をプレゼントしました。
するとお偉いさんは同行していた男性に代わりにオスカーの元へ行くよう指示します。

この後の行動がとても興味深く、そして表現が面白いと感じた部分で、オスカーはその同行の男性と談笑し酒を酌み交わしました。
そして不思議に思ったお偉いさんがオスカーのテーブルに近寄ると、1人残された女性を気遣うような素振りで本来その3人が座っていたテーブルに近づき、そのままテーブルを共にすることに成功していました。

個人的に、面識のない目上の方のテーブルに許可をとることなく自然に座るというのはなかなか出来ないことでは無いかと思っています。
しかも当時はナチスが治めるドイツですから、本国ではないにしろ簡単なことではなかったように感じます。
オスカーの処世術はその後何度も出てきますので、ぜひ注目してみてほしいポイントの1つです。

〇イザック・シュターン
彼はオスカーが声をかけたユダヤ系ポーランド人で、元は現地の繊維工場で働いていたそうです。
作中最初の登場シーンでは、ポーランド内のおそらく役所のような場所で働いているようでした。

イザックもまた周りがよく見える慎重な男であるという印象で、悲しい言い方ですが当時のユダヤ人の振る舞いというものを極めて理性的に理解していたように感じました。
初めてオスカーに呼び出された際、腰は低いものの冷静に放った「私はユダヤ人です」という言葉がとても印象的でした。

ここで紹介した2人の印象は、あくまで初登場周辺を観た際の印象です。
ストーリーが進むうちに、彼らの印象はどんどん変わっていきます。


【ストーリー前半の感想】


序盤はまだ敗色が薄く勢いのあるドイツです。
ユダヤ系を隔離するための「ゲットー」等が作られていく頃でしょうか。
(ゲットーについての詳細は今回割愛いたします)

序盤のオスカーはとにかく稼ぐことに執着していて、ユダヤ系を雇用したのも安いからです。
当時ポーランド人を雇用した際は本人に給与が支払われますが、ユダヤの人々については個人財産の所有が認められていませんでした。
そのため、ユダヤ人を雇用した際は給与は支払われず所定の経費を国家に支払います。
結果、より安価に人員を確保出来るということです。

出費をとにかく避け、安く働かせることに重きを置く一方、イザックは収容所に連れていかれそうな人々に雇用証明書(実質ユダヤ人の存在許可証)を渡し、上級技師として招きました。
この時点で、オスカーは図らずも多くのユダヤ人を救っていたことになります。

この頃のオスカーは、イザックの人助けのような人選に対して不満をぶつけることもありました。
こんな救うようなことをして危ないのは自分だ、と言うシーンもありましたが、結果的に救済の道を選ぶのですから何が起こるか分かりませんよね。

私は、このオスカーの心境変化はイザックとの出会いこそが理由ではないかと思っています。
陽気で社交的なオスカーと、寡黙だが実は人情にあついイザックの対比は、乾杯を求めるオスカーと拒否するイザックのシーンでとても感じます。
オスカーは最初からある一定の敬意を持ってイザックに接しているのが見てとれますが、段々それ以上に彼を大切にしていると感じるシーンが増えます。

イザックが雇用証明書を忘れた際にゲットー内の検問に引っかかり収容所行き電車に詰め込まれた際も、オスカーは慌てて身元引取りに向かいました。その時オスカーは、お前がいなくなると会社がまずい、気をつけろ、という言い方をしていましたが、イザックが乾杯してくれなかった時のオスカーの表情等を見ているこちらからしたら「そんなこと言って〜ほんとは大切に思っているのよね〜😁」という感じでしたw
このシーン、温かい気持ちにもなりますが、同時に少々切なくも感じましたね…

※雇用証明書は当時ユダヤの人々にとっては命をつなぐ大切な身分証でした
雇用証明書がない=利用価値がない つまり殺戮対象となります
めちゃくちゃな話ですが、最終的にこの雇用証明書すらも効果を持たなく   なり、上級技術者以外はすべて…というような状況になっていくんですよね



【ストーリー中盤の感想】


中盤、遂にユダヤ人は完全に収容されました。
既に何万と殺戮されてしまっている頃で、
もちろんオスカーの工場で働く技術者達も同様です。
このあたりになると、もうオスカーは人種や利益以上にただ社員やその家族たちの行く末を想う素晴らしいオーナーの片鱗を見せているように思います。非常に感慨深いです。

また分かりやすく思いやりが出てきたオスカーのエピソードのひとつに思うのが、ユダヤ人であることを隠していた女性がオスカーをたずねてくるシーンです。
父と母を雇用して救ってくれと懇願しに来た女性に、そんなことをすれば私も危なくなるし誰でも匿うことは出来ないと激昂して突っぱねていましたが、考えに考えた末結局呼び寄せて雇ってしまいます。

何度も何度も選別し虐殺が進んでいく中で、オスカーがナチスの地位ある軍人に「強さとは許しである」というようなことを言います。
今でこそ許すも何もそんな話ではないと思いますが、当時はいつ使い捨てられても当然のような環境でユダヤ人達は生きていました。
そう思うと、誕生日の祝いでケーキを持ってきたユダヤ人の少女にお礼のキスを送ったり(少々過激でしたがw)、役に立たないとアウシュヴィッツに送られそうな子供を庇ったりと実際に行動していたオスカーは本当に素晴らしいと思います。
前半は己の欲の為に発揮していた決断力や行動力が、ここに来て救済のために活かされていくんですよね…



【ストーリー終盤の感想】

ここからはとても展開が早いです。
あれよあれよという間にとてつもない虐殺が進みます。
その中ついにドイツの敗色が濃くなり、オスカー自身もナチスで地位を得ていた為危ない立場となります。

このあたりのシーン、本当に序盤のオスカーと同じ人だろうかと思うほどにすべてを賭けてユダヤの人々を一人でも救おうとするんですよね…
自分の命など気にも留めないように、バレたら即処刑されるような綱渡りをいくつも重ねて、結果として彼は数百人ものユダヤ人を「社員」として終盤起きたアウシュヴィッツでの大殺戮から救います。

すべてを書くととてもじゃないですが量がやばいので、
私の中でとても印象的だったエピソードを抜粋します。

【印象的なシーン1:乾杯を受け入れるイザック】

前半の感想の中で「イザックは乾杯しない」と書いたかと思います。
ビジネスを持ち掛けられた直後から最後までイザックは極めて優秀な社長でした。
※オスカーはオーナー、イザックは現場を管理する社長という関係です

ですが、ついに終盤大量殺戮が社員達にまで手が伸びたとき、当然イザックも例外ではなく危ない身となります。
そのときオスカーが「君は特別待遇になるようにする、必ず救う。そして次こそは乾杯しよう」と言うんですね。
この時点でこれまでの二人の関係が如何に変わったか見て取れますし、オスカーがイザックに対し敬意を払い、大切に思い、守りたいと必死であることが伝わりますよね。

ですがここからがよいシーンで、イザックは僅かに涙を流して微笑み、
「いいえ、今飲みましょう」と返します。
これは、自分がもう収容所に送られて二度とオスカーに会えないことを覚悟した瞬間なのではないかと私は思っています。
そしてオスカーと過ごすこの最後の時間に、せめて一度だけでも彼と酒を飲もうというイザックの気持ちなのではないでしょうか。

互いを想い合い、ビジネスパートナー以上の存在になっていたことがここで明確に分かったように感じます。
序盤の二人から感じられる如何にも事務的な会話、そしてこの終盤互いにこの先を想いながらの「乾杯」 対比がとても美しいと感じました。


【印象的なシーン2:後悔のオスカー】

この映画の本当に最後のほうです。
オスカーがイザックに泣き縋りながら後悔し、懺悔するんです。

というのも、オスカーは最後の殺戮前社員を助け出すために持ち得る財産すべてを使って社員とその家族を自身の生まれ故郷に連れて帰るんですが、
残念ながらギリギリまでリストアップしても全員は無理だったんですよね。

彼は作中序盤大変浪費が激しく、非常に華やかな社交界の男でした。
ドイツが降伏し、ユダヤの開放がわかるまで会社を無理やり延命し、彼らの安全が分かって、やっと社員に見送られながらオスカーは逃亡していきます。
もちろんオスカーに対して社員たちは表現できうるすべての感謝を伝えていましたし、そのしるしとしてシルバーリングをプレゼントします。
が、出発するその時、オスカーが涙を流します。

「あの時無駄な金を使っていなければあと何人救えただろう」
「この逃げるための車を売れば、もう二人は救えたんじゃないか?」
私はなんて馬鹿なんだ、と涙を流すオスカーにイザックが寄り添う姿はとても心にくるものがありました。

イザックにとってオスカーは、ユダヤ迫害が始まって唯一人種以外で自身を評価したドイツ人だったのではないかと思います。
そして誰よりも近くでユダヤの人々のために働きかける彼を見ていましたから、とにかくありがとう、貴方はとてつもない命を救った、すばらしいことだ、と伝えていました。


【最後に】

この映画を見る前の私は、歴史の事実としては知っていたものの解像度が結構低かったんですよね。
映画での描写はもちろんですが、作中で知った言葉やシーンを検索してみたりして、より当時の悲惨さを理解することができたように思います。

今回はシンドラーのリストを上げましたが、ナチスドイツを題材にした映画はほかにもたくさんあります。
個人的におすすめしたいのは「戦場のピアニスト」です。
当時ワルシャワのラジオでピアノを弾いていたユダヤ人のウワディスワフ・シュピルマンという実在した音楽家が、ホロコーストを生き延び、そしてまたピアノの前に座るまでのお話です。

芸術家という立場の方ですので、また違った視点で見られるのではないかと思いますのでお勧めしておきます。
こちらも感想書きたいですが、ホロコーストという題材は同じということで、こちらは感想なしで締めようと思います。

今回紹介した二作品、Unext加入済みでしたらどちらも無料視聴できますし、アマゾンプライムなどでもレンタルなどいろいろあるようです。
ぜひ皆さまもご視聴くださいませ。

つたない文章でしたが、最後までご覧いただきありがとうございました。
もしよろしければ、皆さんの感想もコメントで教えていただきたいです。

今回もご来店いただき誠にありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております。

手塚悠生


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