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私の原点

この前書いた「負けへんで」の記事が多くの方に読んでいただけているようで、私はホクホクしている。ありがたい。

私のなかの「負けへんで」の芽は、小学校の理科の授業中に芽生えたと思う。

それは、小学3年生の頃だった。太陽光を使って熱を集める実験を一人ずつ考えてきて、実験計画を出し、その日は一人ずつ実験をすること、という授業だった。だから、みな思い思いの場所に陣取って、作成してきた集光セットみたいなものを設置して、何やらやっていた。

他の人が何をしていたのか覚えていないのは、記憶が曖昧だからではなくて、私は先生に呼び出されて怒られていたから知らないのだ。怒られた原因は、隣に陣取った、普段から仲良くしている友達と話していたから、である。
先生が怒っていたのは、一人実験なのだから、他の人と話すなんてよくない、という趣旨だったと思うが、私はそれがとにかく気に入らなかった。怒られる対象が友達と一緒ではなく私だけという点が気に入らない訳ではなく、実験って(そういうものなんかいな、つまらんわ)と思ったからだった。そこだけすごくリアルに覚えている。

私は今、実験してそれを報告することを生業としているので、当時の理科の先生の言っていたことも理解できない訳ではない。たとえば、お喋りしていたせいで、大事な点を見逃してしまったり、判断を間違えてしまったりするケースは確かにある。

けれども、同じテーマで周りの人がどんな発想を持って実験をしているのか、という観点からすると、別に現場で意見交換をするのは悪いことではない、と私は思う。

そういうわけで、今は実験をつまらないものとは思っていない訳だけれども、当時はただ愚直に先生の言葉を受け止めながら、大層悔しく目から涙を垂らしながら歯を食いしばっていた。先生から「私のこと嫌いか」と聞かれて、無言で頷いたのを覚えている。(だって、納得いってないもん、きらいです。)という感じだった。

また別の日の実験では、(こちらは記憶が曖昧)何故だか磁石を使っていた。家にあった小さいけれども強力な磁石を持っていき、付けたり外したりしていた。円柱状の小さな磁石は、その脱着の間に、斜めにスパーンと割れたのだ。(何コレ)と思った、だって、さっきまでNとSが引き合ってNとNだと離れるを繰り返していたのに、斜めに割れた磁石は元の形状に戻らなくなってしまったのだ。斜めの部分は元の位置に戻そうとすると、なぜか磁力でズレる。

これは何やらおかしい、面白そうだと思った。同じ一つの磁石だったものが、反発するなんて変だ、と報告した。

先生はひとこと「これは、今のあなたには説明できない」というようなことを言っていたような気がする。(いやいや、そんな馬鹿な)と思った。1個の磁石が割れたら2個の磁石になる。それは何故か。
私にとってこの問いは、世の中には教科書に載っていないことが沢山ある、と感じるものだった。


2個目のエピソードが蛇足のようだが、私にとってはこの2つが何故だか「負けへんで」を彷彿とさせる最初の体験だ。

あの時私を諭してくれてありがとう、先生。私は何故か実験する人になったよ。

とい。

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