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daraz
とごった夜を掻き混ぜる
午後20時、もわっとした夜に包まれる。熱気が風に乗って私を覆う。停滞した空気から逃げ出したくて、外へ足を踏み出したのに、これではもわもわを纏ったまま帰宅することになってしまう。
向かった先のスーパーは閉店間際の様相。何が並んでいたのかすら分からない空の棚と対照的に、いいお値段のスイカ達が買われる時を待っている。
とごった空気の部屋から這い出した私には、サクサク買い物をすることなんて出来なくて、(それでもいいや)と栄養のありそうなものを行きつ戻りつしながらカゴに入れていく。本当は自炊もしたいけれど、なんだかそんな気も湧かず、ここ1ヶ月はご飯を炊くことくらいしかしていない。
「不摂生」
頭の中を単語がよぎる。栄養バランスを気にしてはいるものの、そもそも身体に良さそうなものと自分の身体に足りないものの区分が付かない。そもそも、食べたいものが浮かばない時すらある。
そんな時は初心に返ってバナナと牛乳を買う。調理しなくても私に必要なものをくれるから。
そんなことを考えながら会計を済ませて街へ出る。
一段と熱気の溜まった空気に触れて、何故か昔のことを思い出す。
学生時代も、何かの理由で息苦しくなった時、キャンパスを抜け出して、近くの川べりへ行っていた。川へ降りる階段に座って空を見上げたり、蛍を探してみたりした。ぼんやりと舞う蛍の光と星空を見上げて、辺りより冷やっとした空気を吸い込んだ。
出来ることならもう一度あの川べりでぼんやりと過ごしたい。
こんな回想をするときは、とごった夜を掻き回して、澄んだ空気に置き換えれたらいいのにな。