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あまり知られていないIVRの音声対話UXデザインのおもしろさ

こんにちは、IVRyでプロダクトマネージャーを担当している佐瀬です。
入社して約5ヶ月が経ち、入社エントリーで書いていた音声対話UXデザインについて少し理解が進んだので、今日は、私が感じている電話自動応答:IVR(Interactive Voice Response)における音声対話UXデザインのおもしろさについて述べたいと思います。
「電話のUXデザインって何?」と疑問に思われる方が多いかもしれません。IVRにおける音声対話UXデザインは、「音声によるコミュニケーションのデザイン」だと考えています。これまで数年にわたり、様々なサービスで画面を通したUXデザインを手がけてきましたが、その知識をそのまま適用しようとしてもうまくいかないことが多く、音声対話UXの難しさや奥深さに対して、デザインすることの魅力を強く感じています。
この記事では、私が感じているIVRにおける音声対話UXデザインのおもしろさについてお伝えしたいと思います。


あらためて電話自動応答:IVRとは?

電話自動応答:IVR(Interactive Voice Response)は、電話で自動音声応答を行うシステムです。事前に録音された音声や、動的に生成された音声を使用して、ユーザーの操作を案内したり、情報を提供したりします。(電話した際に「〇〇は1を…」に合わせて操作するあれです)
また、従来のオンプレミス型IVRシステムに加え、IVRyのようにクラウド型IVRサービスも普及しています。クラウド型サービスは、初期費用や運用コストを抑えられる点がメリットです。

IVRyが提供するIVRでの音声対話UXの現在地

さらにIVRyでは、AI技術の進化により、従来の録音音声による案内だけでなく、自然言語処理や音声認識技術を活用して、AIによる柔軟で自然な対話が可能になり、画面操作なく音声対話のみで目的を達成できるようになってきています。
これは、電話という手段を利用しているものの、音声対話UXにおいてIVRyではGoogle HomeやAlexaにおける音声対話UX同等以上を実現することを目的にしており、音声対話の細かい体験や設計について思考・議論を重ねてきた成果と言えます。

IVRを活用するメリット

IVRを活用することで、カスタマー(IVRでの電話対応を受ける人)はオペレーターに繋がることなく、必要な情報を取得したり、問題を解決したりすることができます。これは、クライアント側(IVRを設定しカスタマーに提供する人)にとっても、カスタマーにとってもメリットがあります。

  • 24時間365日、自動でカスタマー対応を行うことができるため、顧客満足度を向上させることができます。

  • 電話を受ける方の負担を軽減することで、人件費を削減することができます。

  • カスタマー対応を自動化することで業務効率を向上し、より価値の高い業務に集中することができます。

そして、このような顧客満足度向上や業務効率化などの効果を実現するためには音声対話UXデザインが重要であると考えています。

IVRにおける音声対話UXデザインのおもしろさ

先に述べた通り、IVRのUXデザインは、「音声によるコミュニケーションのデザイン」であると考えています。イギリスの哲学者・言語学者であるポール・グライスは、適切な会話の指針として以下(協調原則)を挙げています。

量(Quantity)
求められているだけの情報をもつ会話をせよ
質(Qualty)
ウソだと感じていること・十分な証拠がないことを言うな
関係(Reration)
お互いの信頼、関係性を築け
様態(Manner)
曖昧な表現・複数の意味や解釈をもつ言い回しを避けて、簡潔に順序立てて会話せよ

人同士のコミュニケーションでもこれらすべてを実現するのは難しいですが、これらを考慮してIVRの音声対話をデザインすることが重要です。
そのプロセスで感じる音声対話UXデザインのおもしろさについて、カスタマー側とクライアント側の観点で挙げたいと思います。

カスタマー側の音声対話UXデザインのおもしろさ

音声対話のみで操作を完了する必要があり、音声対話UXの新たな試みから従来のUXUIデザインとは異なる知見を得ることができます。

  1. 音声で表現する
    IVRは、視覚ではなく音声で情報を伝えるため、UIデザインとは異なる新たな表現方法が求められます。伝える内容に加えて、音声のトーン・スピード・抑揚などの調整によって、カスタマーに心地よい体験を提供することができます。

  2. 利用者の想像と共感する
    IVRでは、カスタマーは画面を見ることができないため、音声情報から状況を想像しながら操作をする必要があります。音声による情報設計を通して、カスタマーの想像に共感し、スムーズで適切な操作に導くことがデザイナーに求められます。

  3. 幅広い利用者に対応する
    IVRは、年齢や性別など、幅広い層が利用する可能性があります。そのため、カスタマーの属性や状況への考慮が重要になります。例えば、年配の方であれば、音声はゆっくりと明瞭な発音で、聞き取りやすい音量で提供する必要があります。

  4. 利用者のストレスを軽減する
    IVRは、音声認識の誤認識や複雑な操作手順による迷子など、利用者のストレスが発生しやすいです。そのため、エラーメッセージなど回避方法を充実させ、利用者のストレスを軽減することが重要になります。

IVRyでの実践例として、カスタマーの属性への配慮や心地よい体験の提供のために、多言語✕声のトーン(男性・女性)の音声選択が可能です。

カスタマーに合わせて音声ガイダンスを読み上げる言語と声のトーンをクライアントが選択できる

クライアント側のUXUIデザインのおもしろさ

画面を通した体験が多いため従来のUXUIデザインの知見を活用できますが、カスタマーとの音声対話UXを意識する必要があるため難易度が高く、これを解くおもしろさがあります。

  1. 直感的な操作性を実現する
    IVRシステムは、クライアントにとって馴染みのないものであるため、初めての人でも画面内の情報が何なのか理解でき、直感的に操作できる画面デザインが求められます。画面構成や情報表示方法を工夫すること、アイコンやボタンなどを分かりやすく配置することで、必要な操作や情報を理解しやすくなります。

  2. カスタマーの多様な目的に対応する
    IVRシステムは、カスタマーの目的や状況によって必要な情報が異なり、これに細やかに対応することで顧客満足度を高めることができます。そのため、カスタマー属性や利用状況に応じて必要な情報や操作方法を提供できるような機能を表現するデザインが求められます。

  3. 設定・運用負荷を軽減する
    業務の限られた時間の中で必要な設定や運用をするため、効率的に操作できる必要があります。そのため、設定画面や管理画面を分かりやすくし、効率的な操作を実現することで、クライアントの負担を軽減することができます。

IVRyでの実践例として、分岐ルールを作成する画面では、音声対応の分岐・階層の表示や分岐ごとの機能選択において、初めての方でも直感的に操作できることを意識しています。

ルール分岐はカード、階層はインデントで表現
分岐ごとの機能選択は、何ができるかがわかりやすいようにイラストと機能名称を表示し一覧化

IVRにおける音声対話UXデザインを成功させるには、利用者(カスタマー・クライアント)視点に立って、利用者のニーズや課題を理解することが重要です。インタビューやユーザーテスト、サービス利用によって得られる様々なデータから、利用者の行動や心理を分析する必要があります。
一方で、AIを活用した音声対話UXデザインを実践することができれば、これらの達成は容易になる可能性があります。そのためには、デザイナーが正しくAI技術を理解し適切に活用できるようになることが重要です。

まとめ

IVRにおける音声対話UXデザインのおもしろさとは、音声によるコミュニケーションデザインによってカスタマー・クライアントに最適な体験を提供することです。カスタマー側では、音声表現や想像への共感からの操作性向上、幅広い利用者への配慮やストレス軽減を実現することが大切です。一方、クライアント側では直感的な操作性や多様な目的への対応、設定や運用負荷の軽減が重要になります。これらの課題を達成するためには、利用者視点でのニーズ理解が不可欠です。また、AI技術の適切な活用はこれらの達成を容易にする可能性があり、そのためにAI技術を正しく理解することが必要です。

デザイナーにとって、音声対話UXデザインは新たな挑戦の場となります。音声の表現方法や利用者との共感、さらにはAIの活用により音声対話UXデザイン要素を磨き上げることで、カスタマーやクライアントに魅力的な体験を提供できます。
音声対話UXデザインは今後ますます重要性が増していく分野です。デザイナーが積極的に取り組むことで可能性を広げ、より多くの人に快適な音声対話の体験を提供できると考えています。

最後に

IVRyではUX/UIデザイナーを募集しています。成長できる環境で活躍したい方、UX/UIデザインの組織を一緒に作っていきたいという方はぜひお声がけください!

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