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「女一匹」(7bookcover challenge 7日目)

「7boookcovers」
(7ブックカバーチャレンジ) 、
の最終日・7日目にご紹介するのは、
「100万回生きたねこ」などで有名な
佐野洋子さんの 

「女一匹」
(佐野洋子・文、広瀬弦・絵、マガジンハウス)です。  

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わたしは佐野洋子さんの書く絵も好きなのですが、
この本は、淡々と続く佐野さんの文章と
息子さんである広瀬さんの
味わいある絵だからこそ成り立たつ、
なんとも言えない魅力があります。 

この本、一言で言うと、
ワニの花子の「大失恋物語」なのですが
わたしはこんなに見事な失恋を見たことがありません。 
 
冒頭の花子の捨てられっぷりが、
まず尋常ではありません。 
 
なんせ、
「恋人は、朝早く花子の家に来て、
花子を背負うと崖っぷちにやって来て、
ゴロリと花子を崖下に捨てた。」 
のですから。 
 
花子の他に登場するのは、
友達のねずみのチヨ子だけ。 
 
このチヨ子も、いかにも女友達らしい。
 
優しさもちょっと意地悪なところも 
あるのですが、
ずっと花子のそばにいてくれるのです。
 
元彼のことを諦められない花子が 
「彼は本当は私を愛しているのに、
悪い女にそそのかされただけ」
などと現実逃避の妄想に走ろうとすると、
チヨ子は最近の花子の元彼と新恋人の様子を伝え、 
花子を現実に引き戻します。 

それでもおさまらない花子が
新恋人に恨みを募らせている時も、
チヨ子は
「ね、どうして女が憎いの、
悪いのは男じゃん、あんたを捨てたのは男じゃん」
と花子の目を覚まさせようと必死です。 
 
それを聞いた花子の気持ちが、変わり始めます。 
 
「あんな男でも、私愛してる。
だから、彼が幸せならいいと思う」。 
 
こういう時、助けてくれるのは
「日にちぐすり」とそっと寄り添ってくれる
優しい友達なんですよね。 
 
そしてとうとう、花子は
静かに立ち直っていくのです
 
(その瞬間のチヨ子が
少し残念そうなのも、ちょっと笑ってしまうのですが・・・ )
 
そして、ここからの花子がすごいのです。 
 
実は失恋して結構やけ食いをしていた花子、
自分が太りすぎたことに気がつきます。  
 
(体重計に乗ってまあるくなったお腹に手をやりながらも
もう一つの手ではしっかりリンゴを抱えているのが
面白いのですが) 
 
でも、減量に勤しむボクサーのような形相でダイエットに励み
あっという間にほっそり。 
 
チヨ子にも「前より美人っぽいよ」
と言われ、
自分に自信を持ち始めた花子が次にしたことは、
街へ行って
かわいい洋服やリボンを買い込むことでした。 
 
そして花子が自信を持っておしゃれになったある日、 
玄関の前には大きな花束が。 
 
花子、どうしたと思います? 
 
なぜか、「喧嘩上等」な面持ちで
ムシャムシャと花束を食べてしまうのです。 
 
花束が3つになった日も
街で暴れるゴジラのような勢いで、
食べ尽くします。
 
そして、最後のページには花に埋れている花子。 
 
「男なんて、いくらでもいるんだ」
と呟く花子の顔は、何やらファイターのように不敵です。 

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これ以上なんの解釈も必要ないことを承知で書きますが、
失恋して泣いたり怒っていた花子が
友達の助けも借りつつ
客観的に現実を受け入れて
客観的に自分を見つめ
自分をよりよくするための行動を始めた時、
花子の世界が変わります。 
 
自分に自信を持った花子が
見知らぬ誰かから贈られる好意や賞賛の花束は
失恋してやけ食いしても心を満たすことのなかった食べ物とは違い、
花子の心身を見たす、最高の栄養源なのかもしれません。
 
そして、今、花子は誰にも振り回されることのない
「自分が主役の人生」を生きているのです。
 
「女一匹」と言うタイトルからは、
そんな気概も感じました。 
 
わたしも「女一匹」の人生を生きています。  
 
やはり、自分の人生の主役は自分。  

自分で決めて、
自分で行動して、
自分で責任を取って、
ということは、困難なこともありますが、
女一匹、たくましく生きていこうと思います。 
 
今回、自分にとって大切な本をご紹介しながら、
懐かしいことを思い出したり、
自分のこれまでの転機を降り変えることができました。 
 
本日まで7回にわたり読んでくださった皆様、
本当にありがとうございました。

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